税理士試験の登竜門である「簿記論」と「財務諸表論」(通称:簿財)。これから受験を検討している方や、学習中の方にとって、合格率や受験者数の推移は非常に気になるポイントです。
近年、税理士試験は受験資格の緩和などの大きな制度変更があり、受験者数や合格率の傾向に大きな変化が見られます。
本記事では、過去のデータをもとに簿記論・財務諸表論の合格率・受験者数・合格者数の推移を一覧で整理し、近年の傾向や今後の対策について詳しく解説します。
簿記論・財務諸表論のデータ推移一覧(過去10年超)
まずは、平成26年度(2014年度)から最新年度までの試験データを確認してみましょう。
| 試験年度 | 回数 | 簿記論 | 財務諸表論 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | ||
| 平成26年度(2014年度) | 第64回 | 17,742 | 2,336 | 13.2% | 13,372 | 2,406 | 18.4% |
| 平成27年度(2015年度) | 第65回 | 15,783 | 2,965 | 18.8% | 12,202 | 1,906 | 15.6% |
| 平成28年度(2016年度) | 第66回 | 13,936 | 1,753 | 12.6% | 11,478 | 1,755 | 15.3% |
| 平成29年度(2017年度) | 第67回 | 12,775 | 1,819 | 14.2% | 10,424 | 3,081 | 29.6% |
| 平成30年度(2018年度) | 第68回 | 11,941 | 1,770 | 14.8% | 8,817 | 1,179 | 13.4% |
| 令和元年度(2019年度) | 第69回 | 11,784 | 2,052 | 17.4% | 9,268 | 1,753 | 18.9% |
| 令和2年度(2020年度) | 第70回 | 10,757 | 2,429 | 22.6% | 8,568 | 1,630 | 19.0% |
| 令和3年度(2021年度) | 第71回 | 11,166 | 1,841 | 16.5% | 9,198 | 2,196 | 23.9% |
| 令和4年度(2022年度) | 第72回 | 12,888 | 2,965 | 23.0% | 10,118 | 1,502 | 14.8% |
| 令和5年度(2023年度) | 第73回 | 16,093 | 2,794 | 17.4% | 13,260 | 3,726 | 28.1% |
| 令和6年度(2024年度) | 第74回 | 17,711 | 3,076 | 17.4% | 13,665 | 1,099 | 8.0% |
| 令和7年度(2025年度) | 第75回 | 18,466 | 2,058 | 11.1% | 15,629 | 4,980 | 31.9% |
| 令和8年度(2026年度) | 第76回 | ||||||
受験者数・合格率の推移から見る3つの大きな傾向
上記のデータ推移を読み解くと、近年の税理士試験における大きな3つの特徴が浮かび上がってきます。
1. 令和5年度(2023年)の「受験資格緩和」による受験者数の急増
長らく減少傾向にあった税理士試験の受験者数ですが、令和5年度からの制度改正(会計科目の受験資格撤廃)を機に、V字回復を見せています。
- 変更前: 大学での単位取得や一定の資格保有が必要だった
- 変更後: 年齢・学歴・職歴を問わず誰でも受験可能に
この緩和により、高校生や大学生、他業種からの社会人挑戦が増加し、簿記論の受験者数は令和2年度の約1.0万人規模から、令和7年度には1.8万人超まで大幅に増加しました。財務諸表論も同様に1.5万人を超える規模に膨らんでいます。
2. 簿記論:合格率は11%〜23%前後で推移する相対評価の厳しさ
簿記論の平均的な合格率は15%〜18%程度で推移しています。
令和2年・4年のように20%を超える年がある一方で、令和7年には11.1%まで低下するなど、年度による波が存在します。受験者数が増えたことで分母が大きくなり、上位10〜15%に残るためのライバル競争がより熾烈になっていることが伺えます。
3. 財務諸表論:合格率の「ブレ(振れ幅)」が非常に激しい
財務諸表論で特筆すべきは、年度による合格率の激しい上下です。
- 令和6年度(第74回):8.0%(過去最低水準の超難化)
- 令和7年度(第75回):31.9%(過去最高水準の平易化)
このように、前年が極端に難しかった反動で翌年が高合格率になるケースや、出題傾向の変化によって採点基準が調整されるケースが見られます。単年の合格率に一喜一憂せず、一貫した対策を続ける重要性を示しています。
簿記論と財務諸表論の難易度・試験内容の違い
「どちらから受ければいいのか?」「同時受験は可能か?」と悩む方も多いため、両科目の特性の違いを整理します。
簿記論の特徴(計算特化型)
- 試験形式: 100%計算問題(第一問・第二問:個別・構造化問題/第三問:総合問題)
- 求められる能力: 圧倒的な処理スピード、正確性、捨てる問題(捨て問)を見極める判断力
- 対策: 計算演習の量をこなし、時間配分の感覚を身体に染み込ませることが最優先
財務諸表論の特徴(計算+理論の融合型)
- 試験形式: 理論50点 + 計算50点
- 求められる能力: 会計基準の理解・暗記力、文章で表現する記述力、計算の基礎力
- 対策: 会計理論(企業会計原則や各種会計基準)の暗記・理解が合否を分ける。計算の難易度は簿記論より控えめ
税理士試験「簿財」に効率よく合格するための対策アドバイス
① 「簿財同時受験」が最も効率的である理由
簿記論と財務諸表論は、学習内容の約6〜7割が重複しています。
財務諸表論の計算対策は簿記論の学習で大部分がカバーできるため、別々に1年ずつかけるよりも、1年間で2科目同時に学習・受験するスタイルが最も費用対効果・時間対効果が高いとされています。
② 財務諸表論の「理論」は早めに着手する
計算問題に時間を取られがちですが、財務諸表論で確実に合格圏に入るためには理論での得点安定化が不可欠です。直前期に詰め込もうとせず、学習初期からコツコツと暗記と理解を進めましょう。
③ 合格率が低い年度でも得点できる「基礎力」を磨く
令和6年の財務諸表論(合格率8.0%)のように、誰も予想できない難化年が存在します。
このような年に合格を決めるのは「誰も解けない難問を解いた人」ではなく、「誰もが解ける基本問題を絶対に落とさなかった人」です。日頃から答練や過去問で基礎論点の精度を高めておくことが最大の防衛策になります。
まとめ:受験者増加時代を勝ち抜くために
税理士試験の簿記論・財務諸表論は、受験資格緩和の影響で受験者数が大幅に増え、活気が戻ってきた一方で、競争の質も変化しています。
- 簿記論: 15%前後の厳しい競争を勝ち抜くための「計算スピードと捨てる力」
- 財務諸表論: 乱高下する合格率に惑わされず「理論・計算の基礎を完ぺきにする力」
データが示す通り、年度ごとの変動は大きく存在しますが、正しく学習を積み重ねれば必ず上位合格圏内に入ることができます。本記事の推移データを参考に、ぜひ計画的な学習に役立ててください。

