【シバ犬🐾財務諸表論】包括利益の表示に関する会計基準

目次

第1話 包括利益とは ~純利益と何が違うの?~

社長白柴くん!財務諸表に「包括利益」ってあるけど、当期純利益と何が違うんだ? 売上は伸びてるし、純利益が黒ならOKだろ?
経理社長、純利益ももちろん大事ですが、純利益は“株主資本だけ”の変動を見る指標です。
社長株主資本だけ? じゃあ企業全体の価値はどう見るんだ?
経理そこで登場するのが包括利益です。包括利益は、企業全体(非支配株主持分も含む)の「純資産の変動」を広く捉える指標なんです。
投資家たとえば長期保有目的の株を持っていて、今期はまだ売ってないが時価が+10万円上がったとする。これは純利益には入らないが、純資産はその他有価証券評価差額金が10万円増えてるよな?
社長たしかに。でも、それはまだ売ってないんだから、利益って感じはしないな。
経理そこで「その他の包括利益」です。純利益に入らないけど、この部分で企業価値には影響する部分を拾います。
社長なるほど、純利益と包括利益の差がその他の包括利益なのか。まだ実現してない時価の変動分ってわけだな!
経理はい。包括利益は「株主との直接的な取引(増資や配当)」を除いた純資産の増減を全部示す指標です。
投資家経営者が利益を操作しても、包括利益なら企業価値全体の変動が見えるわけだな。
社長よーし、まずは包括利益が“企業の価値の変動”を見る指標だってことは掴めたぞ!
連携対象利益計算書貸借対照表 (B/S)
狭い範囲当期純利益株主資本の変動
広い範囲包括利益純資産全体の変動

条文穴埋問題

用語の定義

4. 「包括利益」とは、ある企業の 特定期間 の財務諸表において認識された 純資産の変動額 のうち、当該企業の 純資産に対する 持分所有者との直接的な取引によらない部分 をいう。当該企業の 純資産に対する 持分所有者には、当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれ、連結財務諸表においては、当該企業の子会社非支配株主も含まれる。

5. 「その他の包括利益」とは、 包括利益 のうち 当期純利益に含まれない部分 をいう。連結財務諸表におけるその他の包括利益には、 親会社株主に係る部分と 非支配株主に係る部分が含まれる。

包括利益の計算の表示

6.  当期純利益 その他の包括利益 の内訳項目を加減して包括利益を表示する。

包括利益を表示する計算書

11. 包括利益を表示する計算書は、次のいずれかの形式による。(略)

 (1) 当期純利益を表示する 損益計算書 と、第6項に従って包括利益を表示する 包括利益計算書 からなる形式( 2計算書 方式)

 (2) 当期純利益の表示と第6項に従った包括利益の表示を1つの計算書( 損益及び包括利益計算書 )で行う形式( 1計算書 方式)

理論記述問題

Q.包括利益を表示する目的は?

A.包括利益を表示する目的は、期中に認識された取引及び経済的事象(資本取引を除く。)により生じた純資産の変動を報告することである。

Q.包括利益の表示の導入の目的は?

A.包括利益の表示の導入は、包括利益を企業活動に関する最も重要な指標として位置づけることを意味するものではなく当期純利益に関する情報と併せて利用することにより、企業活動の成果についての情報の全体的な有用性を高めることを目的とするものである。

Q.包括利益を表示することで期待される効果は?(2つ)

A.➀ 投資家等の財務諸表利用者が企業全体の事業活動について検討するのに役立つ。

  貸借対照表との連携純資産と包括利益とのクリーン・サープラス関係)を明示することを通じて、財務諸表の理解可能性と比較可能性を高める。

Q.「クリーン・サープラス関係」とは、どのような関係をいうか?

A.クリーン・サープラス関係とは、ある期間における資本の増減(資本取引による増減を除く。)が当該期間の利益と等しくなる関係をいう。

第2話 客観性の秘密 ~経営者の意思を排除する~

社長白柴くん、ウチが持ってる「その他有価証券」、時価が前期から今期にかけて20万円も上がってるぞ!
経理そうですね。ただし売却しなければ、当期純利益には入りません。B/Sの「その他有価証券評価差額金」に+20万円として載るだけです。
社長じゃあ今期、売上がちょい厳しいから、少し売って利益調整するか!
経理ああ社長、それです!それこそが純利益が恣意的と言われる理由なんです。売るタイミング次第で純利益を動かせてしまいます。
投資家でも包括利益なら違う。含み益20万円は、売ろうが売るまいが“今期の包括利益”に入る。つまり、経営者が意図的に操作できないんだな。
経理そのとおりです!包括利益は時価の変動をその期の価値変動として直ちに計上するため、純利益より客観性が高いとされています。
社長なるほど!俺の“気まぐれ売却作戦”は、包括利益では通用しないってわけだな。企業価値の変動を“素のまま”示すのが包括利益なのか!
経理まさにその通りです。資産負債アプローチでも、企業価値(純資産)の変動を重視しますからね。

第3話 組替調整のワケ ~二重計上は許されない!~

社長白柴くん、これ気になるんだ。前期に、株の含み益20万円が包括利益に含まれているんだ。
経理はい、入りました。「その他の包括利益」に+20万円です。
社長今期、その株を売って売却益20万円が当期純利益に入った。すると、包括利益としては20万円が2回入ったように見えないか?
投資家初心者はここで引っかかるんだが、社長の疑問は正しい。実際は20万円しか儲かってないのに、このままだと計算上は+40万円の包括利益になっちまう。
社長えっ、実際の純資産は20万円増えただけなのに、計算上40万円増えたことになるのか?
経理そうなんです!そこで出てくるのが「組替調整(リサイクリング)」です。
投資家仕組みはこうだ。前期:OCI +20万円(含み益)今期:純利益 +20万円(売却益)
経理このままだと包括利益は合計40万円。なので今期、OCIで▲20万円(組替調整額)を入れて帳尻を合わせます
社長つまり、前期に1回カウントした分は、今期は純利益に入っても、包括利益としては差し引くってことだな!
経理そのとおりです。これにより、実際の純資産の変動(+20万円)と包括利益の合計(+20万円)が一致します。
社長なるほど、二重計上を防いで“企業価値の増減”を正しく示すわけだな!
経理そうです。これが会計上とても重要な「クリーン・サープラス関係」です。
社長よし、包括利益の本質も組替調整の意味もつかめたぞ!

条文穴埋問題

その他の包括利益の内訳の開示

7. その他の包括利益の内訳項目は、その内容に基づいて、 その他有価証券評価差額金 繰延ヘッジ損益 為替換算調整勘定 退職給付に係る調整額 等に区分して表示する。(略)

9.  当期純利益 を構成する項目のうち、 当期 又は過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分は、 組替調整額 として、その他の包括利益の内訳項目ごとに 注記 する。(略)

参考条文 

企業会計基準第25号 包括利益の表示に関する会計基準(HTML版PDF版

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