【シバ犬🐾財務諸表論】負債会計

目次

第1話 負債会計総論 ~“借金だけじゃない”負債の世界~

社長白柴くん、負債って「借金」のことだよな?銀行とかからの。🐾
経理うーん、それも正解ですが、会計上の「負債」はもっと広いんですよ。確定した債務だけじゃなく、将来の支払いがほぼ決まってる“見積り負担”も含まれます。
投資家なるほど、例えば「賞与引当金」とか「修繕引当金」もそういう“見積り負担”ってやつか。
社長へぇ〜、借金以外も負債なのか。じゃあ、負債ってどう分類されるんだ?
経理2つの観点があります。① 財務流動性の観点 → 1年以内に払う「流動負債」と、それ以降の「固定負債」② 法的債務性の観点 → 確定債務・条件付債務・非債務、です。
投資家確定債務って、支払手形や買掛金みたいな“確実に払うもの”だな。
経理はい。そして、条件付債務は“将来の条件次第”で支払う可能性があるもの。たとえば引当金が代表です。
社長じゃあ、「修繕引当金」は?
経理それは“非債務”とされます。修繕するかどうかがまだ企業の判断次第だからです。
投資家つまり、負債って“今すぐ払う借金”から“将来の見積負担”まで幅広いんだな。
社長負債って、思ったよりも深い世界なんだな…🐾

第2話 引当金とは ~“見積り負担”の計上ルール~

社長白柴くん、この“引当金”っていつ作るんだ?まだ支払ってないのに費用にしていいのか?
経理いい質問です社長!引当金は「将来の特定の費用や損失のうち、当期の負担に属するもの」を見越して計上します。
投資家要は、「将来払うけど、今の収益を得るためにもう発生しているコスト」は、今期に入れるってことだな。
社長なるほど、“費用収益対応”ってやつか🐾
経理そうです。だから引当金の目的は「適正な期間損益計算」です。今期の収益には今期の費用を対応させるんです。
投資家じゃあ、なんでも引当金にしていいのか?
経理いいえ!ちゃんと4つの要件を満たす必要があります。①将来の特定の費用や損失であること②当期以前の事象に起因していること③発生の可能性が高いこと④合理的に見積もれること
社長けっこう厳しいんだな🐾 でも、ちゃんと基準があるのは安心だな。
投資家結局、“まだ払ってないけどほぼ確実な支出”を計上するのが引当金ってわけだ。

第3話 引当金の計上根拠 ~“なぜ今!?まだ払ってないのに!”~

社長白柴くん、引当金って“実際に払ってない”のに、なんで費用にできるんだ?🐾
経理理由は大きく2つあります。1つ目は費用収益対応の原則。当期の収益獲得に貢献する将来の費用は、今期に認識するんです。
投資家たとえば、今期の売上を上げるために“賞与の働き”があるなら、その賞与見積額は今期の費用ってことだな。
経理その通りです。2つ目は原因発生主義。将来の支出でも、“原因”が当期以前にあるなら、今の期間の費用にすべきなんです。
社長なるほど、費用を“起きた時点”じゃなく“原因が起きた時点”で考えるのか🐾
経理そうです。これは「広義の発生主義」とも呼ばれます。
投資家ちなみに損失に備えるタイプの引当金は、保守主義が根拠なんだよな。
社長つまり、“起こる前に少し用意しておく”のが引当金ってことだな。オヤツ貯金みたいなもんか🐾

引当金の分類

引当金の名称区分B/S区分P/L区分
貸倒引当金評価性引当金
(資産の部)
設定対象の債権と同じ区分営業債権:販売費及び一般管理費
営業外債権:営業外費用
破産更生債権等:原則として特別損失
売上割戻引当金負債性引当金
(負債の部)
流動負債・固定負債収益控除性引当金
返品調整引当金流動負債・固定負債
製品保証引当金流動負債・固定負債費用性引当金
(販売費及び一般管理費)
工事補償引当金流動負債・固定負債
修繕引当金流動負債
特別修繕引当金固定負債
賞与引当金流動負債
退職給付引当金固定負債
役員賞与引当金★流動負債
役員退職慰労引当金★固定負債
債務保証損失引当金流動負債損失性引当金
(特別損失)
損害補償損失引当金流動負債

 注1)売上割戻引当金および返品調整引当金は、収益認識会計基準の適用により廃止されています。
 注2)退職給与引当金は、現在は「退職給付引当金」として処理されています。

 注3)★は企業会計原則注解18の例示として掲げられていなないものです。

 注4)債務保証損失引当金及び損害補償損失引当金は、問題によっては固定項目や営業外費用として指示されることもあります。

条文穴埋問題

〔注18〕 引当金について

  将来の特定の費用又は損失 であつて、その 発生が当期以前の事象に起因 し、 発生の可能性が高く 、かつ、その 金額を合理的に見積ることができる 場合には、当期の負担 に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の 負債の部 又は 資産の部 に記載するものとする。

 製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。

  発生の可能性 の低い 偶発事象 に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできない。

理論記述問題

Q.引当金が計上されるのはなぜか?

A.当期の収益獲得に貢献したものであれば、たとえ将来発生する費用であっても、適正な期間損益計算を図るためであり、発生主義の原則をその計上根拠とする。

Q.修繕引当金に負債性がないとするのはなぜか?

A.修繕は、操業停止や対象設備の廃棄をした場合には不要となることから、負債に該当しないとしている。

第4話 偶発債務とは ~“まだ起きてない借金”の話~

社長白柴くん、取引先の借入を保証してるんだけど、これも負債になるのか?🐾
経理今の段階ではまだ“現実の債務”じゃないので、貸借対照表には載せません。これが「偶発債務」です。
投資家つまり、“将来もしかしたら払うかもしれない”だけの話なんだな。
社長でも、もし取引先が倒産したら払うんだろ?ちょっと怖いな💦
経理だから偶発債務は注記が必要なんです。財政状態に大きな影響を与える可能性があるからです。
投資家逆に、発生の可能性が“高い”ときはどうする?
経理その場合は引当金を計上します。つまり、・発生の可能性が低い → 注記(偶発債務)・発生の可能性が高い → 負債計上(引当金)です。
社長おおっ、すっきりした!🐾 まだ起きてない借金=偶発債務、起きそうな借金=引当金、だな。
投資家まさにその通り。未来のリスクをどう扱うかが“会計の慎重さ”ってやつだな。

よくある質問

偶発債務は現実の債務ではないため「注記が必要」とされていますが、手形を裏書きした場合には「保証債務費用××/保証債務××」という仕訳を行うと説明されることがあります。この場合、注記と仕訳のどちらを行えばよいのでしょうか。両者は矛盾していないのでしょうか。

「偶発債務の注記」と「保証債務の仕訳」は矛盾しません。前者は情報開示の義務、後者は負債認識の義務であり、いずれも根拠とする会計基準が異なります。よって、どちらも必要で正しい処理です。

①偶発債務(注記

  • 根拠:企業会計原則・貸借対照表原則・一C
  • 条文受取手形の割引高又は裏書譲渡高、保証債務等の偶発債務、債務の担保に供している資産、発行済株式1株当たり当期純利益及び同1株当たり純資産額等企業の財務内容を判断するために重要な事項は、貸借対照表に注記しなければならない。
  • 趣旨:現実に債務として確定していない(将来発生するかもしれない)義務である「偶発債務」については、注記を必要とする。
  • :受取手形の裏書譲渡高、割引手形、保証債務(借金の保証人)など。

➡ 投資家・債権者がリスクを認識できるようにするための情報開示が目的です。

②保証債務(仕訳計上)

  • 根拠金融商品に関する会計基準 第13項
  • 条文金融資産又は金融負債の消滅に伴って新たな金融資産又は金融負債が発生した場合には、当該金融資産又は金融負債は時価により計上する。
  • 趣旨:裏書・割引によって受取手形という金融資産が消滅する場合、その際に生じる「遡求義務(保証義務)」は新たな金融負債(保証債務)として、時価で計上する。

➡ 裏書や割引時点で保証債務を認識します。これは金融商品会計導入後の新しい考え方です。

白柴経理

たとえば、額面1,000,000円の手形を裏書譲渡し、決算期末においてまだ決済されていない場合に、その遡求義務の時価が1%と評価されたとします。この場合、「(借)保証債務費用 10,000円 /(貸)保証債務 10,000円」として仕訳を行い、貸借対照表の流動負債に10,000円を表示し、また、「受取手形の裏書譲渡高 1,000,000円」を注記します。

引当金と類似科目の比較

◆ 偶発債務と負債性引当金

偶発債務と負債性引当金は、いずれも将来の支出(または特定の事象の発生)の可能性があるという点で共通するが、将来確定債務となる可能性低い(あるいは不確実である)のが偶発債務であり、将来確定債務となる可能性高いのが負債性引当金であるという点で相違する。  

◆ 積立金と引当金

積立金と引当金は、いずれも将来の特定の目的に備えて社内に資金を留保する役割を持つという点で共通するが、積立金は利益処分(剰余金の処分)として計上され「純資産の部」に表示されるのに対し、引当金は当期の費用の見越しとして計上され「負債の部(または資産の控除)」に表示されるという点で相違する。

◆ 貸倒引当金と減価償却累計額

貸倒引当金と減価償却累計額は、いずれも資産から控除される評価勘定であるという点で共通するが、貸倒引当金は経済価値の減少(事実)未確定(将来の見積り)であるのに対し、減価償却累計額は経済価値の減少(事実)確定(過去の価値の費消)であるという点で相違する。

◆ 負債性引当金と未払費用

負債性引当金と未払費用は、いずれも実際の支出(金銭の支払)は将来に生じるが、適正な期間損益計算の観点から当期に見越計上される費用であるという点で共通するが、負債性引当金は金額や発生時期に不確実性がある見積負債であるのに対し、未払費用は金額および発生時期が確定している債務であるという点で相違する。

参考条文

企業会計審議会 企業会計原則・同注解(HTML版

企業会計基準委員会 引当金に関する論点の整理(PDF版

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