【シバ犬🐾財務諸表論】収益認識に関する会計基準

目次

第1話 収益認識会計基準とは ~売上は「実現」から「履行義務」へ~

社長白柴くん!今期は売上をどんどん伸ばすぞ!売ったらすぐ売上計上だ!
経理ちょっと待ってください社長💦 最近は「売ったら売上」という単純な考え方ではなく、収益認識会計基準に従って判断する必要があります。
社長えっ? 売れたら売上だろ?
経理従来は実現主義といって、「商品を販売して収益が実現したとき」に売上を認識していました。
社長うむ。販売したんだから当然売上だな。
経理実は取引の形が複雑になってきて、「いつ売上なのか」が企業ごとに違うケースが出てきたんです。
投資家そうだな。サブスク、長期契約、複合サービス…。実現主義だけでは解釈のブレが出る。
社長なるほど…会社ごとに好き勝手に売上を計上されたら困るな😢
経理そのとおりです。そこで、誰が計算しても同じ結果になるようにルール化したのが収益認識会計基準です。
社長ほうほう。
経理この基準では、売上は顧客への財又はサービスの移転を基準に認識します。
社長移転?
経理簡単に言うと、約束したサービスや商品をきちんと提供したときに売上を認識するという考え方です。
投資家つまりポイントは「履行義務」。会社が顧客に約束した義務だ。
社長義務? なんか急に真面目な話になってきたぞ💦
経理収益認識では「会社は顧客に何を約束したか」がとても重要なんです。

条文穴埋問題

用語の定義

5. 「契約」とは、 法的な強制力 のある 権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における 取決め をいう。

6. 「顧客」とは、 対価 と交換に企業の 通常の営業活動 により生じたアウトプットである 財又はサービス を得るために当該 企業と契約した当事者 をいう。

7. 「履行義務」とは、 顧客との契約 において、次の(1)又は(2)のいずれかを 顧客に移転する約束 をいう。

(1)  別個 財又はサービス (あるいは 別個 財又はサービス の束)

(2)  一連 別個の財又はサービス ((略))

8. 「取引価格」とは、 財又はサービス 顧客への移転 と交換に企業が 権利 を得ると 見込む対価の額 (ただし、 第三者のために回収する額 を除く。)をいう。

9. 「独立販売価格」とは、 財又はサービス を独立して企業が顧客に販売する場合の 価格 をいう。

10. 「契約資産」とは、企業が顧客に移転した 財又はサービス と交換に受け取る対価に対する 企業の権利 (ただし、顧客との契約から生じた 債権 を除く。)をいう。

11. 「契約負債」とは、 財又はサービス を顧客に移転する企業の義務に対して、企業が顧客から 対価 を受け取ったもの又は対価を受け取る 期限 が到来しているものをいう。

白柴経理

収益認識会計基準では、財やサービスの資産の移転により収益を認識するため、収益の認識は「資産負債アプローチ」に基づくものといわれています。

第2話 収益認識の5ステップ ~売上は手順どおりに計算!~

社長白柴くん、売上を計算するルールってそんなに複雑なのか?
経理実はとてもシンプルです。5つのステップで順番に判断するだけです。
社長5つもあるのか💦
経理はい。まずは顧客との契約を識別します。
社長契約?
経理売上は顧客との契約が成立している場合にだけ認識できます。
投資家契約には条件がある。権利・支払条件・回収可能性などが明確であることだ。
社長なるほど、ちゃんとした取引じゃないと売上じゃないってことか。
経理次に履行義務を識別します。
社長また履行義務か。
経理例えば「商品+保守サービス」の契約なら、2つの履行義務になる可能性があります。             
社長えっ、売上を分けるの?
経理そのとおりです。契約の中のサービスごとに売上を認識します。
投資家そして次は取引価格の算定だ。
社長それは売上金額のこと?
経理はい。ただし単純な価格ではなく、値引・リベートなどの変動対価も考慮します。
社長うーん、ちょっとややこしいな😢
経理そして4番目が取引価格の配分です。
社長何に配るんだ?
経理複数の履行義務がある場合、独立販売価格の比率で配分します。
社長つまりサービスごとに売上を割り振るのか!
投資家そのとおり。売上は契約単位ではなく履行義務単位で考える。

条文穴埋問題

基本となる原則

16. 本会計基準の基本となる原則は、約束した 財又はサービス 顧客への移転 を当該 財又はサービス 交換に企業が 権利 を得ると見込む 対価の額 で描写するように、収益を認識することである。

17. 前項の基本となる原則に従って収益を認識するために、次の(1)から(5)のステップを適用する。

(1)  顧客 との 契約 識別する。

 本会計基準の定めは、顧客と合意し、かつ、所定の要件を満たす契約に適用する。

(2)  契約 における 履行義務 識別 する。
 契約において顧客への移転を約束した財又はサービスが、所定の要件を満たす場合には別個のものであるとして、当該約束を履行義務として区分して識別する。

(3)  取引価格 算定 する。
 変動対価又は現金以外の対価の存在を考慮し、金利相当分の影響及び顧客に支払われる対価について調整を行い、取引価格を算定する。

(4)  契約 における 履行義務 取引価格 配分 する。
 契約において約束した別個の財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分する。独立販売価格を直接観察できない場合には、独立販売価格を見積る。

(5)  履行義務 充足した時 に又は 充足するにつれて 収益を認識する。
 約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を 充足した時 に又は 充足するにつれて 、充足した履行義務に配分された額で収益を認識する。履行義務は、所定の要件を満たす場合には 一定の期間 にわたり充足され、所定の要件を満たさない場合には 一時点 で充足される。

契約の識別(ステップ1)

19. 本会計基準を適用するにあたっては、次の(1)から(5)の要件のすべてを満たす 顧客 との 契約 を識別する。

(1) 当事者が、 書面 口頭 取引慣行 等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること

(2) 移転される財又はサービスに関する各当事者の 権利 を識別できること

(3) 移転される財又はサービスの 支払条件 を識別できること

(4) 契約に 経済的実質 があること(すなわち、契約の結果として、企業の 将来キャッシュ・フローのリスク、時期又は金額が変動すると見込まれること)

(5) 顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる 対価を回収する可能性が高い こと

履行義務の識別(ステップ2)

32. 契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、次の(1)又は(2)のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて 履行義務 として識別する(第7項参照)。

(1)  別個 財又はサービス (あるいは 別個 財又はサービス の束)

(2)  一連 別個の財又はサービス ((略))

取引価格の算定(ステップ3)

47.  取引価格とは、 財又はサービス 顧客への移転 と交換に企業が 権利 を得ると 見込む対価の額 (ただし、 第三者のために回収する額 を除く。)をいう(本会計基準第8項参照)。

48. 顧客により約束された対価の性質、時期及び金額は、取引価格の見積りに影響を与える。取引価格を算定する際には、次の(1)から(4)のすべての影響を考慮する。

(1) 変動対価

(2) 契約における 重要な金融要素

(3) 現金以外の対価

(4) 顧客に支払われる対価

変動対価

50. 顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分を「 変動対価 」という。契約において、顧客と約束した対価に 変動対価 が含まれる場合、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が 権利 を得ることとなる対価の額を見積る。

51. 変動対価の額の見積りにあたっては、発生し得ると考えられる対価の額における最も可能性の高い 単一 の金額( 最頻値 )による方法又は発生し得ると考えられる対価の額を確率で 加重平均 した金額( 期待値 )による方法のいずれかのうち、企業が権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方法を用いる。

52. (略)

53. 顧客から受け取った又は受け取る対価の一部あるいは全部を顧客に返金すると見込む場合、受け取った又は受け取る対価の額のうち、企業が権利を得ると見込まない額について、 返金負債 を認識する。(略)

54. 本会計基準第51項に従って見積られた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が 事後的 に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい 減額 が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に 含める

黒柴投資家

54項をかみぐたいて言うと、「見積りはしていいが、後で大きく下がらないといえる“安全な部分だけ”を収益に含めなさい。」ということだ。

履行義務への取引価格の配分(ステップ4)

65. それぞれの 履行義務 (あるいは別個の財又はサービス)に対する 取引価格 の配分は、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を描写するように行う。

66. 財又はサービスの 独立販売価格 の比率に基づき、契約において識別したそれぞれの 履行義務 取引価格 を配分する。(略)

第3話 いつ売上になるのか ~「支配の移転」がカギ!~

社長ところで白柴くん、一番大事なのは結局「いつ売上になるか」だよな?
経理そのとおりです社長。収益は履行義務を充足したときに認識します。
社長履行義務を果たしたときってことか。
経理はい。そして履行義務が充足したかどうかは、顧客に資産の支配が移転したかで判断します。
社長支配?
投資家顧客がその商品を自由に使えて利益を得られる状態になったときだ。
社長例えば商品を引き渡したとき?
経理そうです。典型的には商品販売は一時点で収益認識します。
社長じゃあサービス業は?
経理サービスは一定期間にわたり履行義務を充足するケースが多いです。
社長つまり作業が進むにつれて売上になるのか!
投資家建設工事などが典型例だな。
経理また、日本では特例として出荷基準が認められることもあります。
社長出荷した時点で売上?
経理国内取引で、出荷から検収までが通常期間なら認められます。
社長なるほど!売上って思ったより奥が深いんだな🐾
投資家売上は企業の利益を左右する最重要項目だ。だからこそ厳密なルールが必要なんだ。             
社長よし!これからは「売れた!」じゃなくて「履行義務を果たした!」って言うぞ!
経理ちょっと社長、それは言いにくいと思います💦

条文穴埋問題

履行義務の充足による収益の認識(ステップ5)

35. 企業は約束した 財又はサービス (本会計基準において、顧客との契約の対象となる財又はサービスについて、以下「 資産」と記載することもある。)を顧客に 移転 することにより 履行義務 充足した時 に又は 充足するにつれて 、収益を認識する。 資産が 移転 するのは、顧客が当該資産に対する 支配を獲得した時 又は 獲得するにつれて である。

一定の期間にわたり充足される履行義務

38. 次の(1)から(3)の要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配を顧客に 一定の期間 にわたり移転することにより、 一定の期間 にわたり履行義務を充足し収益を認識する。

(1) 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が 便益を享受 すること

(2) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の 価値 が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の 価値 が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること

(3) 次の要件のいずれも満たすこと
  ① 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に 転用 することができない資産が生じること
  ② 企業が顧客との契約における義務の履行を 完了 した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること

一時点で充足される履行義務

39. 前項(1)から(3)の要件のいずれも満たさず、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものではない場合には、 一時点 で充足される履行義務として、資産に対する支配を顧客に 移転 することにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識する。

40. 資産に対する支配を顧客に移転した時点を決定するにあたっては、第37項の定めを考慮する。また、支配の移転を検討する際には、例えば、次の(1)から(5)の指標を考慮する。

(1) 企業が顧客に提供した資産に関する対価を収受する 現在 の権利を有していること

(2) 顧客が資産に対する 法的所有権 を有していること

(3) 企業が資産の物理的占有を 移転 したこと

(4) 顧客が資産の所有に伴う重大な リスク を負い、経済価値を享受していること

(5) 顧客が資産を 検収 したこと

履行義務の充足に係る進捗度

41. 一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識する。

42. 一定の期間にわたり充足される履行義務については、 単一 の方法で履行義務の充足に係る進捗度を見積り、類似の履行義務及び状況に首尾一貫した方法を適用する。

43. 履行義務の充足に係る進捗度は、 各決算日 に見直し、当該進捗度の見積りを変更する場合は、 会計上の見積りの変更 として処理する。

44. 履行義務の充足に係る進捗度を 合理的に見積ること ができる場合にのみ、一定の期間にわたり充足される履行義務について収益を認識する。

45. 履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないが、当該履行義務を充足する際に発生する 費用を回収すること が見込まれる場合には、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる時まで、一定の期間にわたり充足される履行義務について 原価回収基準 により処理する。

用語の定義

15. 「原価回収基準」とは、履行義務を充足する際に発生する 費用 のうち、 回収 することが見込まれる 費用 の金額で収益を認識する方法をいう。

参考条文

企業会計基準第29号 収益認識に関する会計基準(HTML版PDF版

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