第1話 企業結合とは? ~「ひとつの会社」になるってどういうこと?~
| 社長 | 白柴くん、うちもそろそろA社と合併して規模を拡大するぞ!💪 これで“企業結合”ってやつだな! |
| 経理 | そうですね社長。ただ、「企業結合」って言っても、単に仲良くなるって意味ではなくて、2つの会社が1つの報告単位になることを指すんです。 |
| 社長 | つまり、決算書も1つになるってことか? |
| 経理 | そのとおりです。企業結合では、「支配」や「取得」などの考え方が重要になります。 |
| 社長 | 支配? なんか怖い言葉だな💦 |
| 経理 | 「支配」とは、相手企業の経営方針を決められる力のことです。そして、その支配を手に入れることを「取得」と言います。 |
| 投資家 | つまり、どっちの会社が“主導権を握るか”がポイントってことだな。 |
| 経理 | はい。支配を獲得した会社を「取得企業」、支配された側を「被取得企業」と呼びます。 |
| 社長 | よし、じゃあうちは“取得企業”になるように戦略を立てよう!🐾 |
条文穴埋問題
用語の定義
5. 「企業結合」とは、ある 企業 又はある企業を構成する 事業 と他の 企業 又は他の企業を構成する 事業 とが 1つの報告単位 に 統合 されることをいう。(略)
7. 「支配」とは、ある企業又は企業を構成する事業の活動から 便益を享受 するために、その企業又は事業の財務及び経営方針を 左右 する能力を有していることをいう。
第2話 「取得」と「持分の結合」 ~主導権があるかどうかが分かれ目!~
| 社長 | 白柴くん、企業結合って、全部「取得」ってわけじゃないのか? |
| 経理 | いい質問です社長。企業結合には2つのタイプがあります。ひとつは「取得」、もうひとつは「持分の結合」です。 |
| 社長 | どっちも“くっつく”のに違いがあるの?🤔 |
| 経理 | 「取得」は、どちらか一方の会社が他方を支配下に置くタイプ。つまり主従関係ができるんです。典型例は吸収合併ですね。 |
| 投資家 | 一方の会社の株主は持分を“売った”ようなもんだな。持分が“非継続”になる。 |
| 経理 | そのとおりです。取得では、取得企業の持分は継続し、被取得企業の持分は断たれる。だから、被取得企業の資産・負債は時価評価になります。 |
| 社長 | なるほど、買収みたいな感じだな。じゃあ「持分の結合」は? |
| 経理 | 「持分の結合」は、どっちの株主も支配していない状態です。典型的には合弁会社の設立のように、両方の株主が共同で支配するケースですね。 |
| 投資家 | つまり、どっちの投資も“そのまま継続”してる状態か。だから資産・負債は帳簿価額で引き継ぐんだ。 |
| 社長 | よし、うちは主導権を握るタイプの「取得」だな!🔥 |
条文穴埋問題
「取得」と「持分の結合」
9. 「取得」とは、ある企業が他の企業又は企業を構成する事業に対する 支配 を獲得することをいう。
68.(略)「持分の結合」とは、いずれの企業(又は事業)の株主(又は持分保有者)も他の企業(又は事業)を 支配 したとは認められず、結合後企業の リスクや便益 を引き続き相互に 共有 することを達成するため、それぞれの事業のすべて又は事実上のすべてを統合して 1つの報告単位 となることをいい、(略)
理論記述問題
Q.企業結合の会計処理の基本的な考え方について簡潔に説明せよ。
A.企業結合には「取得」と「持分の結合」という異なる経済的実態を有するものが存在し、それぞれの実態に対応する適切な会計処理方法を適用する必要があるとの考え方がある。
第3話 パーチェス法 ~“買った時”の値段で記録する~
| 社長 | 白柴くん、いよいよ合併の仕訳をするぞ!相手の会社の資産をそのままうちの帳簿に写せばいいのか? |
| 経理 | いえ、社長。「取得」に該当する場合は「パーチェス法」で処理します。これは相手の会社を「時価」で買ったと考える方法です。 |
| 投資家 | つまり、相手が昔買った時の値段(帳簿価額)ではなく、今の価値である「時価」を基準に資産や負債を引き継ぐわけだな。 |
| 経理 | その通りです。これを「取得原価の配分」と言います。企業結合日から1年以内に、相手の資産・負債のうち「識別可能」なものを時価で評価して取り込みます。 |
| 社長 | 弁護士さんや公認会計士さんに払った手数料はどうするんだ?これも「時価」に含めるのか? |
| 経理 | いいえ、外部アドバイザーなどへの「取得関連費用」は、発生した事業年度の「費用」として処理するのがルールです。 |
| 投資家 | ちなみに、ブランド名や特許みたいに、目に見えなくても「分離して譲渡可能」な無形資産があれば、それも識別可能な資産として取り込む必要があるんだよな。 |
| 経理 | はい。そうやって一つずつ時価で評価していくのが、パーチェス法の基本です! |
| 社長 | OK!わかったぞ!タイムリーな値段で買い物するってことだな! |
まとめ
| 経済的実態 | 支配関係 | 持分の扱い | 資産・負債の評価 | 会計処理方法 |
|---|---|---|---|---|
| 取得 | あり(主従関係) | 取得企業:継続/被取得企業:非継続 | 被取得企業:時価 | パーチェス法 |
| 持分の結合 | なし(対等関係) | すべて継続 | 帳簿価額 | 持分プーリング法(廃止) |
条文穴埋問題
取得の会計処理
17. 共同支配企業の形成 (第11項参照)及び 共通支配下の取引 (前項参照)以外の企業結合は 取得 となる。また、この場合における会計処理は、次項から第36項による(以下、次項から第33項による会計処理を 「 パーチェス法 」 という。)。
取得企業の決定方法
18. 取得とされた企業結合においては、いずれかの結合当事企業を取得企業として決定する。被取得企業の 支配を獲得 することとなる取得企業を決定するために、企業会計基準第22号「 連結財務諸表に関する会計基準 」 の考え方を用いる。(略)
基本原則
23. 被取得企業又は取得した事業の取得原価は、原則として、取得の対価(支払対価)となる財の企業結合日における 時価 で算定する。支払対価が現金以外の資産の引渡し、負債の引受け又は株式の交付の場合には、支払対価となる財の 時価 と被取得企業又は取得した事業の 時価 のうち、より高い 信頼性 をもって測定可能な 時価 で算定する。
取得関連費用の会計処理
26. 取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、 発生した事業年度の費用 として処理する。
取得原価の配分方法
28. 取得原価は、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点において 識別可能 なもの(識別可能資産及び負債)の企業結合日時点の 時価 を基礎として、当該資産及び負債に対して企業結合日以後 1 年以内に 配分 する。
29. 受け入れた資産に法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には、当該無形資産は 識別可能なものとして取り扱う。
30. (略)
31. 取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を 上回る 場合には、その 超過額 は のれん として次項に従い会計処理し、 下回る 場合には、その 不足額 は 負ののれん として第33項に従い会計処理する。
理論記述問題
Q.パーチェス法とはどのような方法か?
A.パーチェス法とは、被結合企業から受け入れる資産及び負債の取得原価を、対価として交付する現金及び株式等の時価(公正価値)とする方法をいう。
Q.「取得」の場合、パーチェス法が採用されているのはなぜか?
A.企業結合の多くは、実質的にはいずれかの結合当事企業による新規の投資と同じであり、交付する現金及び株式等の投資額を取得価額として他の結合当事企業から受け入れる資産及び負債を評価することが、現行の一般的な会計処理と整合するからである。
第4話 のれんと負ののれん ~目に見えない価値とバーゲンセール~
| 社長 | 白柴くん、計算してみたら、相手の時価純資産(資産-負債)より、うちが払った金額の方が多いみたいだ。損したのか? |
| 経理 | いえいえ、その超過額が「のれん」です!相手企業のブランド力やノウハウといった「超過収益力」を認めて、多めに支払った証拠ですよ。 |
| 投資家 | 日本の基準では、のれんは「資産」に計上して、20年以内の期間で「規則的に償却」していくルールだな。 |
| 経理 | はい。逆に、時価の純額よりも安く買えた場合は「不足額」が生じますが、これを「負ののれん」と呼びます。 |
| 社長 | 安く買えたならラッキーじゃないか!すぐ利益にしていいのか? |
| 経理 | 慌てないでください社長。まずは計算ミスがないか、すべての資産をちゃんと「識別」したか「見直し」を行います。 |
| 投資家 | バーゲン・パーチェス(安値買い)が本物かどうか、慎重に確認するわけだ。 |
| 経理 | その見直しをしても、なお下回る場合には、その事業年度の「利益」として計上します。 |
| 社長 | なるほど、のれんは“見えない価値”の証。うちもブランド力を上げて、のれんに負けない会社にするぞ!✨ |
条文穴埋問題
のれんの会計処理
32. のれんは、 資産 に計上し、 20年以内のその効果の及ぶ期間 にわたって、定額法その他の合理的な方法により 規則的に償却 する。ただし、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事業年度の費用として処理することができる。
負ののれんの会計処理
33. 負ののれんが生じると見込まれる場合には、次の処理を行う。ただし、負ののれんが生じると見込まれたときにおける取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回る額に重要性が乏しい場合には、次の処理を行わずに、当該下回る額を当期の利益として処理することができる。
(1) 取得企業は、すべての 識別可能 資産及び負債(第30項の負債を含む。)が把握されているか、また、それらに対する 取得原価の配分 が適切に行われているかどうかを 見直す 。
(2) (1)の見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の 利益 として処理する。
理論記述問題
Q.のれんを規則的に償却するという考え方の根拠は何か?(3つ)
A.
➀ 企業結合の成果たる収益と、その対価の一部を構成する投資消去差額の償却という費用の対応が可能になるため。
② のれんは投資原価の一部であることに鑑みれば、のれんを規則的に償却する方法は、投資原価を超えて回収された超過額を企業にとっての利益とみる考え方とも首尾一貫しているため。
③ 企業結合により生じたのれんは時間の経過とともに自己創設のれんに入れ替わる可能性があるため、企業結合により計上したのれんの非償却による自己創設のれんの実質的な資産計上を防ぐことができるから。
Q.負ののれんを利益計上するのはなぜか?
A.負ののれんの発生原因を認識不能な項目やバーゲン・パーチェスであると位置付け、現実には異常かつ発生の可能性が低いことから、異常利益としての処理が妥当であると考えられるから。

