第1話 資産除去債務とは ~「建てる」と「壊す」はセット!~
| 社長 | 白柴くん!新しい工場を建てるぞ!でっかい煙突つきのやつだ!🔥 |
| 経理 | いいですね社長。でも、その煙突を将来撤去する費用も考えておかないといけませんよ。 |
| 社長 | えっ? まだ建ててもいないのに、壊す話?😅 |
| 経理 | はい。「資産除去債務」といって、有形固定資産を取得・建設・使用することで将来法令や契約で撤去を求められる義務が生じる場合、その費用をあらかじめ見積もっておく必要があります。 |
| 投資家 | つまり、建てるときに“壊すまでのコスト”も見積もるんだな。現実的だ。 |
| 経理 | そうです。たとえばガソリンスタンドの地下タンクや、化学工場の設備なんかが典型です。撤去には環境法規制があるんですよ。 |
| 社長 | なるほど…「建てる」と「壊す」はワンセットの取引ってわけか!💡 |
| 経理 | そのとおりです。除去の具体的な形態には、売却・廃棄・リサイクルの3つがあります。転用や遊休化は含まれません。 |
| 社長 | じゃあ、使わなくなって放置してるだけじゃダメなんだな😅 |
| 投資家 | 放置は除去じゃない。義務が生じてるなら、ちゃんと会計処理しないとな。 |
条文穴埋問題
用語の定義
3. 本会計基準における用語の定義は、次のとおりとする。
(1) 「資産除去債務」とは、有形固定資産の
取得
、
建設、開発又は
通常の使用
によって生じ、当該
有形固定資産の除去
に関して法令又は契約で要求される
法律上の義務
及びそれに
準ずるもの
をいう。この場合の
法律上の義務
及びそれに
準ずるもの
には、
有形固定資産
を除去する義務のほか、当該
有害物質
等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務も含まれる。
(2) 有形固定資産の「除去」とは、有形固定資産を
用益提供
から
除外
することをいう(一時的に除外する場合を除く。)。除去の具体的な態様としては、 売却 、廃棄、リサイクルその他の方法による処分等が含まれるが、
転用
や
用途変更
は含まれない。
また、当該有形固定資産が
遊休状態
になる場合は除去に該当しない。
第2話 負債計上の理由 ~将来の義務は今の責任!~
| 社長 | でもさ、撤去するのは10年後とかでしょ? なんで今から負債にするんだ? |
| 経理 | 会計上は、「将来の支出が避けられない義務」になった時点で負債を認識します。撤去義務が法令や契約で確定しているなら、それはもう支払い義務が生じていると考えるんです。 |
| 社長 | なるほど。まだ払ってなくても、「支払うことが決まってる」時点で責任があるってことか。 |
| 投資家 | そういうことだ。義務が確定してるのに、負債にしない方がおかしい。財務諸表は将来のリスクも映すもんだ。 |
| 経理 | そして、将来支払う撤去費用は割引現在価値で計算します。つまり「今の価値」に直して負債を計上するんです。 |
| 社長 | へぇ~。未来の支払いを“今の金額”に直すのか。なんか投資っぽいな💰 |
| 経理 | そして時間が経つと、その負債は少しずつ増えていきます。これは「時の経過による調整額」として費用処理され、利息費用に似た扱いになります。 |
| 投資家 | つまり、時間が経つ=費用が増える。見えないコストが積み上がるわけだ。 |
| 社長 | なるほどな。将来の撤去まで見据えて今から責任を記録しておく。会計ってやっぱり奥が深いな🐾 |
条文穴埋問題
資産除去債務の負債計上
4. 資産除去債務は、有形固定資産の 取得 、 建設、開発又は 通常の使用 によって 発生 した時に 負債 として計上する。
資産除去債務の算定
6. 資産除去債務はそれが 発生 したときに、有形固定資産の除去に要する 割引前の将来キャッシュ・フロー を見積り、 割引後の金額( 割引価値)で算定する。
(1) 割引前の将来キャッシュ・フローは、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づく 自己の支出見積り による。その見積金額は、 可能性の最も高い 単一の金額又は生起し得る複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの発生確率で 加重平均 した金額とする。将来キャッシュ・フローには、有形固定資産の除去に係る作業のために直接要する支出のほか、処分に至るまでの支出(例えば、保管や管理のための支出)も含める。
(2) 割引率は、 貨幣の時間価値 を反映した 無リスク の税引前の利率とする。
理論記述練習
Q.資産除去債務は、その除去に関する支払いが将来履行されるものであるにもかかわらず、負債として計上するのはなぜか?
A. 資産除去債務は法律上の義務及びそれに準ずるものであり、有形固定資産の除去サービスに係る支払いが不可避的に生じるため、それは支払い義務を負っているのと同等であるから。
第3話 資産負債の両建処理 ~「建てる」と「壊す」を同時に計上!?~🐾
| 社長 | 白柴くん、この前の「資産除去債務」はわかったけど、実際にどう仕訳するの? 負債だけ計上するの?🤔 |
| 経理 | いい質問です社長。負債だけじゃなくて、対応する除去費用を資産にも計上するんです。これを「資産負債の両建処理」といいます。 |
| 社長 | 両建てってことは、「負債」と「資産」を同時に計上するってことか!なるほど、セットで扱うんだな🐾 |
| 経理 | そのとおりです。たとえば、地下タンクを撤去する義務がある場合、撤去にかかる費用を見積もって「(借)有形固定資産 /(貸)資産除去債務」と記録します。 |
| 社長 | ほうほう。じゃあ、費用はいつ出てくるの?すぐに損益計算書に載るの?💦 |
| 経理 | いえ、すぐには出ません。資産に含めた除去費用部分は、減価償却を通して各期に少しずつ費用化されます。 |
| 投資家 | つまり、“撤去費用も建物の一部”として、使った分だけ費用になる。合理的だな。 |
| 社長 | なるほど、撤去費用を前倒しで負債にしておいて、資産としても少しずつ消していくってことか。まるで「未来の解体費を分割払い」みたいだな🐾 |
| 経理 | いい例えです!そして重要なのは、負債計上が先・資産計上がその後という順序です。先に義務を認識して、その対応資産を加えるんです。 |
| 投資家 | 以前は「引当金処理」ってやり方だったけどな。あれは費用を先に計上して、負債を後から積み上げる方法だった。 |
| 社長 | へぇ~、じゃあ何で今は両建処理に変わったんだ? |
| 経理 | 理由は2つあります。1つ目は、負債を全額きちんと貸借対照表に反映できること。引当金処理だと除去費用が少しずつしか出てこないので、負債が過少になるんです。 |
| 経理 | 2つ目は、費用配分の観点です。両建処理なら除去費用を減価償却を通して、資産の使用に応じて配分できます。引当金処理の「期間配分」も包み込んだ考え方なんです。 |
| 投資家 | 要するに、両建処理は“負債の正確さ”と“費用の適正配分”を両立させたやり方ってわけだ。 |
| 社長 | ふむふむ。建てるときに「壊す費用」も一緒に載せる…まさに、建設と撤去はワンセットってことだな🐾 |
| 経理 | そのとおりです!「建てる」と「壊す」を一緒に考えるのが資産除去債務のポイントなんです。 |
条文穴埋問題
資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分
7. 資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を 負債 として計上した時に、当該 負債の計上額 と同額を、関連する有形固定資産の 帳簿価額 に加える。
資産計上された資産除去債務に対応する除去費用は、 減価償却 を通じて、当該有形固定資産の 残存耐用年数 にわたり、各期に 費用配分 する。
理論記述練習
Q.資産除去債務に係る引当金処理とはどのようなものか?
A.資産除去債務に係る引当金処理とは、有形固定資産の除去サービスの費消を、当該有形固定資産の使用に応じて各期間に費用配分し、それに対応する金額を負債として認識する処理をいう。
Q.資産除去債務に係る資産負債の両建処理とはどのようなものか?
A.資産除去債務に係る資産負債の両建処理とは、有形固定資産の取得等に付随して不可避的に生じる除去サービスの債務を負債として計上するとともに、対応する除去費用をその取得原価に含める処理をいう。
Q.資産除去債務を負債計上する方法として、資産負債の両建処理が採用されたのはなぜか?(理由2つ)
A.引当金処理の場合には、有形固定資産の除去に必要な金額が貸借対照表に計上されないことから、資産除去債務の負債計上が不十分であるのに対し、資産負債の両建処理の場合には、資産除去債務の全額を負債として計上することになるため。
資産負債の両建処理は、有形固定資産に対応する除去費用が、減価償却を通じて、当該有形固定資産の使用に応じて各期に費用配分されるため、資産負債の両建処理は引当金処理を包摂するため。
第4話 除去費用の資産計上と費用配分 ~撤去費も“投資のうち”!?~
| 社長 | 白柴くん、前回の「壊す費用も資産」って話、まだピンとこないんだよなぁ💦 撤去費用を資産にするって、結局どう費用になるんだ? |
| 経理 | はい、そこがポイントです。資産除去債務に対応する除去費用は、建物などの取得原価に含めて資産計上します。そして、その建物の耐用年数にわたって減価償却していくんです。 |
| 社長 | なるほど!つまり、「撤去費用」は最初に全部費用にしちゃうんじゃなくて、ちょっとずつ費用化していくってことか。 |
| 経理 | そのとおりです。たとえば建物を30年間使うなら、その30年間で「建設+撤去のコスト」を均等に配分していくイメージです。 |
| 投資家 | 会計的には、撤去も含めて“建物を使うための総コスト”だからな。だから、撤去費用は資産の利用期間に応じて配分されるわけだ。 |
| 社長 | ふむふむ。じゃあ、最後に撤去したときには、もうその費用はすっかり減価償却済みってこと? |
| 経理 | そうです。撤去時点では、対応する資産除去債務を取り崩して、実際の支出額と調整します。だから、撤去費用のために改めて大きな損失が出るわけではありません。 |
| 社長 | なるほど~。建てるときに「壊す準備」までしておくって、なんか粋だな🐾 |
| 投資家 | 粋というより、合理的ってやつだな。投資と費用をきちんと期間対応させる、それが会計の筋ってもんさ。 |
| 社長 | うーん、やっぱり会計って奥が深いな~💦 でもこれで、壊すのも投資のうちって覚えとくよ! |
理論記述練習
Q.除去費用を資産に計上するのはなぜか?(理由2つ)
A.資産除去債務に対応する除去費用を有形固定資産の取得原価に含めることは、当該資産への投資について回収すべき額を引き上げることを意味する。
資産除去取引を資産取得取引と一体のものとして捉え、資産除去費用を付随費用と同様に取得原価に加えた上で費用配分を行うことで、投資家に対して有用な情報を提供することができる。
Q.除去費用の資産計上について、別の資産として計上する方法が採用されなかったのはなぜか?
A.資産除去債務に対応する除去費用は、法律上の権利ではなく財産的価値もないこと、また、独立して収益獲得に貢献するものではないことから、別の資産として計上する方法は適切ではない。
第5話 見積り変更とプロスペクティブ処理 ~“未来に向かって直す”ってこういうこと~
| 社長 | 白柴くん、こないだの資産除去債務なんだけどさ…撤去費用の見積りが上がっちゃったんだ💦 これってまた最初から全部やり直し? |
| 経理 | いえいえ、過去の財務諸表まで直す必要はありません。こういうときは「プロスペクティブ・アプローチ」を使います。 |
| 社長 | プロス…プロスペ?なんか舌かみそうだな😅 それってどんなやり方? |
| 経理 | これは簡単にいえば、“将来に向かって修正”する方法です。見積りが変わったら、その時点で資産除去債務と有形固定資産の両方を修正して、残りの期間で改めて費用配分します。 |
| 社長 | なるほど!じゃあ、今までの決算はそのままで、これからの減価償却に反映させるってことか🐾 |
| 投資家 | そのとおり。もし過去にさかのぼって直したら、財務諸表がぐちゃぐちゃになる。投資家としては、変更があった時点から未来に向けて情報が更新される方がわかりやすい。 |
| 経理 | ちなみに、こういう見積り変更の処理には3種類あるんです。レトロスペクティブ・アプローチ(過去にさかのぼる)、キャッチアップ・アプローチ(一気に費用計上)、そして今話しているプロスペクティブ・アプローチです。 |
| 社長 | 3種類もあるのか!でも日本の会計基準では、未来に向かう“プロスペクティブ”を採用してるんだな? |
| 経理 | はい。国際的にも一般的な方法ですし、耐用年数の変更と同じように扱う方が実務的なんです。 |
| 社長 | よかった〜!過去の帳簿を全部やり直すなんて聞いたら、うちのアルバイトの豆柴たちが泣いちゃうところだったよ😢 |
| 投資家 | まあ、見積りが上がったなら、資産も負債も両方増える。投資額が増えた分は、これからきっちり償却していくんだな。 |
| 経理 | そのとおりです。だから社長、これからの減価償却費は少し増えますけど、それも未来へのコストです。 |
| 社長 | うーん、未来に向かって修正か…。まるで「人生の軌道修正」みたいだな🐾✨ |
Q.資産除去債務の見積りの変更について、プロスペクティブ・アプローチが採用されているのはなぜか?
A.会計上の見積りの変更については、国際的な会計基準において、将来に向かって修正する方法が採用されていることに加え、我が国の現行の会計慣行においても耐用年数の変更については影響額を変更後の残存耐用年数で処理する方法が一般的であることなどから、プロスペクティブ・アプローチが採用されている。

