第1話 税効果会計とは ~税金の“ズレ”を見える化せよ!~
| 社長 | 白柴くん、うちの利益、結構出てるのに税金の計算すると全然違うんだよな💦 なんでこんなにズレるんだ? |
| 経理 | それは、会計と税務のルールが違うからです。会計は企業の経営成績を正しく示すためのルール、税務は公平に税金を集めるためのルールなんです。 |
| 社長 | 目的が違うってことか。 |
| 経理 | はい。会計では発生主義で収益・費用を計算しますが、税務は実現主義に近い考え方なので、認識のタイミングがズレやすいんです。 |
| 社長 | なるほど。じゃあ、そのズレは放っておいていいのか? |
| 経理 | 放っておくと、税引前利益と税金費用が同じ期間に対応しなくなります。本当は今年の利益に対応する税金なのに、別の期の税金として出てしまうんです。 |
| 投資家 | それだと、利益が出過ぎたり少な過ぎたりして見えるな。会社の実力が分かりにくい。 |
| 経理 | その問題を解決するのが「税効果会計」です。会計と税務のズレによる税金を、適切な期間に配分します。 |
| 投資家 | つまり、“税金の時差調整”。利益と税金を同じ時間軸にそろえるわけだ。 |
| 社長 | おお、なるほど!税金のズレを見える化して、利益とちゃんと対応させるんだな。 |
| 経理 | しかも、将来の税金への影響は貸借対照表にも表れます。 |
| 社長 | 地味だけど、財務諸表の信頼性を支える縁の下の力持ちって感じだな🐾 |
条文穴埋問題
第一 税効果会計の目的
税効果会計は、企業会計上の 資産又は負債の額 と課税所得計算上の 資産又は負債の額 に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「 法人税等 」という。)を適切に 期間配分 することにより、 法人税等 を控除する前の 当期純利益 と 法人税等 を合理的に 対応 させることを目的とする手続である。(注1)
理論記述問題
Q.法人税等を控除する前の企業会計上の利益と課税所得とに差異があるときに、税効果会計を適用しない場合は、どのような問題点があるか?
A.税効果会計を適用しない場合には、課税所得を基礎とした法人税等の額が費用として計上され、法人税等の額が法人税等を控除する前の当期純利益と期間的に対応せず、また、将来の法人税等の支払額に対する影響が表示されないことになる。
第2話 期間差異と一時差異 ~ズレの正体をつかめ!~
| 社長 | でも白柴くん、その“ズレ”って、具体的にはどんなときに起きるんだ? |
| 経理 | 大きく分けると2つあります。「期間差異」と「一時差異」です。 |
| 社長 | 名前が似ててややこしいな💦 どう違うんだ? |
| 経理 | 期間差異は、収益や費用をどの期間に計上するかの違いです。たとえば、減価償却費の計算方法が会計と税務で違う場合などですね。 |
| 社長 | 同じ資産でも、計上のスピードが違うってことか。 |
| 投資家 | 一時差異はもう少し広い概念だ。資産や負債の金額そのものが、会計と税務で食い違う差異をいう。 |
| 社長 | 金額そのものが違う? |
| 経理 | はい。貸倒引当金や減価償却の累計額などが典型例です。会計上の帳簿価額と、税務上の価額が一致しません。 |
| 投資家 | 期間差異も、突き詰めればその結果として資産や負債の額がズレる。だから一時差異に含まれるんだ。 |
| 経理 | そのため、現在の税効果会計は「一時差異」を基礎に、将来の税金の増減を計算します。 |
| 社長 | なるほどな。ズレの正体は、資産や負債にたまった一時差異ってわけか。 |
| 社長 | だから、税効果会計はP/LだけじゃなくてB/Sも大事なんだな! |
条文穴埋問題
一 一時差異等の認識
1.法人税等については、 一時差異 に係る税金の額を適切な会計期間に配分し、計上しなければならない。
2. 一時差異 とは、貸借対照表及び連結貸借対照表に計上されている 資産及び負債の金額 と 課税所得 計算上の 資産及び負債の金額 との差額をいう。
一時差異は、例えば、次のような場合に生ずる。
(1)財務諸表上の一時差異
① 収益又は費用の
帰属年度
が相違する場合
② 資産の評価替えにより生じた
評価差額
が直接
資本の部
に計上され、かつ、
課税所得
の計算に含まれていない場合
(2)(略)
3.一時差異には、当該一時差異が解消するときにその期の課税所得を減額する効果を持つもの(以下「 将来減算一時差異 」という。)と、当該一時差異が解消するときにその期の課税所得を増額する効果を持つもの(以下「 将来加算一時差異 」という。)とがある。
4.将来の課税所得と相殺可能な 繰越欠損金等 については、一時差異と同様に取り扱うものとする(以下一時差異及び繰越欠損金等を総称して「 一時差異等 」という。)。
理論記述問題
Q.期間差異とはどのような差異か?
A.企業会計上の収益又は費用の額と課税所得計算上の益金又は損金の額との差額のうち、損益の期間帰属の相違に基づくものをいう。
Q.一時差異とはどのような差異か?
A.企業会計上の資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額をいう。
第3話 資産負債法の登場 ~未来を見据えた税金計算~
| 社長 | 白柴くん、昔は「繰延法」ってやり方もあったって聞いたぞ? |
| 経理 | はい。正式な会計基準が整う前は、実務で繰延法が使われることもありました。 |
| 社長 | どんな考え方だったんだ? |
| 経理 | 繰延法は「期間差異」を対象にして、差異が発生した期の税金への影響を調整する方法です。発生時点の税率、つまり現行税率を使います。 |
| 社長 | なるほど。その年の損益をきれいにする感じか。 |
| 経理 | そうです。ただし、将来その差異が解消するときに、税率が変わっている可能性までは反映できません。 |
| 投資家 | そこで登場するのが資産負債法だ。 |
| 社長 | 今のルールはこっちなんだな? |
| 経理 | はい。資産負債法では「一時差異」を対象にして、差異が解消する将来の税金への影響を計算します。 |
| 社長 | ということは、使う税率も違う? |
| 経理 | そのとおりです。差異が解消すると見込まれる時点の税率(予測税率)で、繰延税金資産や繰延税金負債を計算します。 |
| 投資家 | だから税率が変更されたら、すでに計上している繰延税金資産・負債も新しい税率で見直す。 |
| 社長 | 過去の計算を放置しないわけか。 |
| 経理 | はい。将来の税負担や税軽減効果を、常に最新の前提で貸借対照表に反映します。 |
| 投資家 | 税効果会計をP/Lの調整だけでなく、B/Sの評価の問題として捉えている点が重要だ。 |
| 社長 | なるほどな。資産負債法は、今の利益だけじゃなくて、未来の税金まで見据える仕組みなんだな。 |
| 社長 | まさに“未来志向”の税金計算だ!📈 |
理論記述問題
Q.繰延法とはどのような方法をいうか?
A.繰延法とは、期間差異が生じた年度に当該差異による税金の納付額又は軽減額を当該差異が解消する年度まで、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上する方法である。
Q.資産負債法とはどのような方法をいうか?
A. 資産負債法とは、一時差異が生じており、当該差異が解消する時にその期の課税所得を減額又は増額する効果を有する場合に、当該差異が生じた年度にそれに係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する方法である。
Q.税効果会計の方法として、資産負債法が採用されているのはなぜか?
A.資産負債法では、法人税等について税率の変更があった場合には、過年度に計上された繰延税金資産及び繰延税金負債を新たな税率に基づき再計算するため、繰延税金資産又は繰延税金負債が、将来の法人税等の支払額を減額又は増加する効果をより適切に表すから。
第4話 繰延税金資産と繰延税金負債 ~税金のタイミングをそろえる~
| 社長 | それで、よく出てくる「繰延税金資産」って、結局なんなんだ? |
| 経理 | 一言で言えば、税金を「どの期の損益に対応させるか」を調整するための会計上の資産です。 |
| 投資家 | 損益だけでなく、B/S(貸借対照表)にある会計と税務のズレ(一時差異)に対応するものだな。 |
| 社長 | 前に言っていた、資産と負債のズレのことだな。 |
| 経理 | はい。例えば会計で費用でも税務で認められない場合、今は税金が多くなりますが、将来認められれば税金が減ります。これが将来減算一時差異です。 |
| 投資家 | この「将来、税金を減らしてくれる効果」を、繰延税金資産として計上するんだ。 |
| 社長 | 逆に、将来税金が増えるズレが繰延税金負債か。 |
| 経理 | そのとおりです。どちらも将来の税金の増減を見積もってB/Sに載せています。 |
| 投資家 | 税金費用を「その期だけ」で見ず、将来まで含めて配分するのが税効果会計の本質だ。 |
| 社長 | 節税じゃないんだね。払う総額は変わらず、タイミングを調整しているだけか。 |
| 経理 | ですから、将来利益が出て税金を減らせる見込みがあるときしか計上できません。 |
| 投資家 | それが「回収可能性の判定」だ。税効果会計で最も重要な点だな。 |
| 社長 | 会社の将来の見通しまで数字に反映されているわけか。なかなかシビアだ。🐾 |
Q.繰延税金資産に資産性はあるか? また、繰延税金負債に負債性はあるか?
A.繰延税金資産は、将来の法人税等の支払額を減額する効果を有し、一般的には法人税等の前払額に相当するため、資産としての性格を有するものと考えられる。また、繰延税金負債は、将来の法人税等の支払額を増額する効果を有し、法人税等の未払額に相当するため、負債としての性格を有するものと考えられる。
Q.繰延税金資産は、どのような範囲で計上すべきか?
A.繰延税金資産は、将来減算一時差異が解消されるときに課税所得を減少させ、税金負担額を軽減することができると認められる範囲内で計上するものとし、その範囲を超える額については控除しなければならない。
第5話 回収可能性とは何か ~資産といえるかの最終チェック~
| 社長 | ところで、回収可能性って、具体的に何を見て判断しているんだ? |
| 経理 | 「将来、本当に税金を減らせるだけの『課税所得(税務上の利益)』を用意できるか」をチェックしています。 |
| 投資家 | つまり、将来の税金を安くするための「枠(利益)」をどう確保するかが重要なんだな。大きく分けて3つのルートがある。 |
| 社長 | 3つのルート? 詳しく教えてくれ。 |
| 経理 | 1つ目は「本業ルート(収益力)」です。本業でしっかり稼ぐ力があれば、将来発生する税金と相殺して、支払額を減らせます。 |
| 投資家 | 2つ目は「作戦ルート(タックス・プランニング)」だ。含み益のある資産を売る計画などがあれば、意図的に利益を作って税金を相殺できる。 |
| 経理 | 3つ目は「相殺ルート(将来加算一時差異)」です。将来、税金が増える予定の項目があるなら、それとぶつけて確実に相殺できます。 |
| 社長 | なるほど。稼ぐか、作戦を練るか、相殺するか。この裏付けがないと「資産」とは認められないんだな。 |
| 投資家 | その通り。裏付けがないものは、ただの「絵に描いた餅」だから計上できないし、見込みが外れれば取り崩される厳しい世界だ。 |
| 社長 | そもそも、なんで「負債(繰延税金負債)」の方は、こういうチェックがないんだ? |
| 経理 | 負債は「将来の税金の未払額」なので、支払いは避けられません。一方、資産は「税金の前払額」のような性質だからです。 |
| 投資家 | 前払金と同じで、「将来使える見込み」があるから資産なんだ。だから「本当に使い切れるか?」という判定が必要になる。 |
| 社長 | 資産として載せる数字ほど、経営の「稼ぐ根拠」が厳しく問われるということか……。💦🐾 |
Q.繰延税金資産の回収可能性とはどのようなものか?
A.繰延税金資産が、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかという性質
Q.繰延税金資産の回収可能性が認められるための要件は?(3つ)
A.収益力に基づく課税所得の十分性、タックスプランニングの存在、将来加算一時差異の十分性
第6話 表示と注記 ~ズレの内訳を公開せよ!~
| 社長 | 白柴くん、いよいよ決算発表だな。税効果会計の処理も終わったみたいだけど、財務諸表にはどう表示されるんだ? |
| 経理 | はい。まず、貸借対照表には、「繰延税金資産」または「繰延税金負債」のいずれかが表示されます。これは、両者を相殺して表示することとされているためどちらか一方しか残らないんですね。 |
| 社長 | なるほど。それで、B/Sの区分はどこに載るんだ? |
| 経理 | どちらも固定区分に表示されます。繰延税金資産は「投資その他の資産」、繰延税金負債は「固定負債」の区分ですね。ただし、表示するのはいずれか一方のみです。 |
| 社長 | ふむ。どちらか一方な。じゃあ、P/Lはどう載るんだ? |
| 経理 | 損益計算書には「法人税等調整額」が表示されます。今期は借方残高になっていますが、貸方残高の場合は、「△」表示を忘れてはいけません。 |
| 投資家 | B/Sでは将来の税金のズレが資産や負債として見えて、P/Lでは当期の税金調整額として表れているわけだ。 |
| 社長 | よし、表示は分かったぞ! でも、その具体的な内訳までは、B/SやP/Lだけじゃわからないよな? |
| 経理 | そのとおりです。そこで必要になるのが「注記」です。個別注記表には、繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の内訳を記載します。 |
| 社長 | 中身はどうなっているんだ? |
| 経理 | 今回の当期末のデータで見ると、「将来減算一時差異」として、未払事業税が500、賞与引当金が1,000、退職給付引当金が4,000発生しています。 |
| 社長 | それに税率をかけるんだったな。法定実効税率は30%だっけ? |
| 投資家 | そうだ。たとえば退職給付引当金の4,000に30%をかけて、1,200が繰延税金資産として計上されるわけだ。 |
| 社長 | おっ、合計すると結構な資産額になるじゃないか! |
| 経理 | 実はもう一つ、固定資産の減損損失による一時差異が800あります。ただ、これは慎重に検討した結果、将来回収できる見込みが立たないと判断しました。 |
| 投資家 | 出たな、回収可能性の判定。回収できないなら、資産として計上しちゃいけない。 |
| 経理 | その通りです。ですので、この800に30%をかけた240は、繰延税金資産小計欄の下に「評価性引当額」としてマイナス表示します。 |
| 社長 | せっかくの資産が減っちゃうのか。でも、実態を正しく伝えるのがルールだもんな。 |
| 経理 | 最後に、「その他有価証券の評価替え」で発生した将来加算一時差異200に30%をかけた繰延税金負債60を差し引いて、純額を算出します。 |
| 投資家 | 注記を見れば、その会社がどんな理由で税金を調整しているのか一目瞭然というわけだ。 |
| 社長 | なるほど。よし、この内訳をしっかりまとめて、信頼される決算書を完成させよう! |
税効果会計に関する注記
繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳
(単位:千円)
繰延税金資産
将来減算一時差異
未払事業税 150
賞与引当金 300
退職給付引当金 1,200
固定資産の減損損失 240
繰延税金資産小計 1,890
評価性引当額 △240
繰延税金資産合計 1,650
繰延税金負債
将来加算一時差異
その他有価証券評価差額金 △60
資産除去債務に対応する除去費用 △95
繰延税金負債合計 △155
白柴経理一時差異の金額ではなく、実効税率をかけた税額を記載します。

