第1話 研究開発費 ~“未来への挑戦”はその場で費用化!~
| 社長 | いや〜、うちの開発部、未来のAI柴犬を作るって張り切ってるぞ!これはもう資産だよな🐕✨ |
| 経理 | ストップです社長!それ、資産計上じゃないです!研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなきゃいけないんです! |
| 社長 | えっ!? そうなの? 資産計上も認められるって繰延資産的な考え方はないの?? |
| 経理 | 昔はあったんですが、今はないです。研究開発費は重要な投資情報ですから、同じような研究でも企業ごとに費用処理や資産計上を任意にしてしまうと、企業間の比較可能性が損なわれる問題があったんです。 |
| 社長 | でも、研究開発はメーカーでは必須だよ。将来の収益にきっと貢献するんだし、大当たりすればキャッシュもザクザク期待できるぞ!こうした期待は資産に計上すべきだろ!? |
| 経理 | もし開発が失敗したときに、そうした収益やキャッシュの獲得に貢献しないものまで資産に計上してしまうと、結果として損失の繰延べとなるおそれがあるんです。とくに、失敗を隠すように資産計上を続けると、減損処理との整合性の問題も出てくるんですね。 |
| 社長 | なるほど…確かに、うちだけ資産にしてたら「利益を操作してる!」なんて誤解されそうだな。じゃあ、「一定の要件を満たしたら資産にできる」ってのはどう? |
| 経理 | そうした案もありました。ただ、実務上客観的に判断できる要件を設定するのは難しいんです。抽象的だと企業間でバラつきが出ますし、厳しすぎると実態に合わなくなります。 |
| 社長 | なるほど…じゃあ、全部費用処理にしておけば、他社と比べやすくなるってことか。 |
| 経理 | はい。やはり、研究開発費は、発生時には将来の収益を獲得できるか否か不明なので、そうしたものを資産として計上してしまうと、財務情報の信頼性が損なわれる可能性がありますからね。 |
| 投資家 | でも一方で、成功すれば将来の収益やキャッシュの獲得に貢献するんだから、すべて費用処理ってのも少し乱暴ではあるよな。 |
| 社長 | そうそう!せっかく未来のAI柴犬が大ヒットしたら、費用で終わるのはちょっと切ないなぁ…。 |
| 投資家 | まあ、夢は資産に、会計は現実に――ってやつだな🐾 |
条文穴埋問題
一 定義
1 研究及び開発
研究とは、 新しい知識の発見 を目的とした計画的な調査及び探究 をいう。開発とは、新しい製品・サービス・生産方法(以下、「製品等」という。)についての計画若しくは設計又は既存の製品等を 著しく改良 するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の 知識を具体化 することをいう。
三 研究開発費に係る会計処理
研究開発費は、 すべて発生時 に 費用 として処理しなければならない。なお、 ソフトウェア制作費 のうち、 研究開発 に該当する部分も研究開発費として 費用処理 する。
理論記述問題
Q.研究開発に係る費用につき、企業会計原則における会計処理の問題点とは?
A.重要な投資情報である研究開発費について、費用処理又は資産計上を任意とする会計処理は、企業間の比較可能性を担保することができない。
Q.研究開発費をすべて発生時に費用処理とするのはなぜか?(収益計上の観点)
A.研究開発費は、発生時には将来の収益を獲得できるか否か不明であり、また、研究開発計画が進行し、将来の収益の獲得期待が高まったとしても、依然としてその獲得が確実であるとはいえないから。
Q.研究開発費をすべて発生時に費用処理とするのはなぜか?(資産計上の観点)
A.資産計上の要件を定める場合、実務上客観的に判断可能な要件を規定することは困難であり、抽象的な要件のもとで資産計上を行うことは、企業間の比較可能性が損なわれるおそれがあるから。
研究・開発の典型例(「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」第2項より)
- 従来にはない製品、サービスに関する発想を導き出すための調査・探究
- 新しい知識の調査・探究の結果を受け、製品化、業務化等を行うための活動
- 従来の製品に比較して著しい違いを作り出す製造方法の具体化
- 従来と異なる原材料の使用方法又は部品の製造方法の具体化
- 既存の製品、部品に係る従来と異なる使用方法の具体化
- 工具、治具、金型等について、従来と異なる使用方法の具体化
- 新製品の試作品の設計・製作及び実験
- 商業生産化するために行うパイロットプラントの設計、建設等の計画
- 取得した特許を基にして販売可能な製品を製造するための技術的活動
黒柴投資家「新技術又は新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等のために支出した費用」は、研究開発費ではなく、繰延資産(開発費)として計上可能な支出項目だから間違えないようにな。
第2話 ソフトウェア制作費 ~研究開発の“その先”にある資産~
| 社長 | なるほど、研究開発費は全部費用処理か…。でもさ、うちのAI柴犬が完成したあと、その販売用プログラムを改良したり、パッケージ化したりする費用はどうなるんだ?それも研究開発費なのか? |
| 経理 | いい質問です社長!実は、「研究開発費等に関する会計基準」の“等”の部分が、「ソフトウェア制作費」を指しているんです。つまり、同じ基準の中でソフトウェアの取扱いも定められているんですよ。 |
| 投資家 | うむ。最近は研究開発といえばソフトウェア開発が中心だから、同じ基準でまとめて扱ってるわけだな。 |
| 経理 | はい。ポイントは、研究開発目的以外のソフトウェア制作費は、その制作目的に応じて処理が異なってくるんです。 |
| 社長 | どう分けるんだ? |
| 経理 | では具体的に説明しますね。まず、受注制作ソフトウェアです。顧客から注文を受けて作るものなので、請負工事と同じ会計処理をします。 |
| 社長 | ふむふむ、顧客ごとの契約扱いなんだな。 |
| 経理 | 次に、市場販売目的のソフトウェアです。研究開発費の部分を除いて、製品マスターの制作費は資産として計上します。ただし、日々の機能維持にかかる費用は費用として処理します。 |
| 社長 | これは、改良や複写の費用だけ資産になる感じか。 |
| 経理 | そして最後に、自社利用目的のソフトウェアです。外部サービス提供用や社内で使う場合で、将来の収益獲得や費用削減が確実に見込める場合は、制作費を資産として計上します。 |
| 社長 | なるほど…自社で使う場合でも、ちゃんと利益やコスト削減につながるなら資産になるんだな。じゃあ、うちのAI柴犬は、市場販売目的だな。 |
| 経理 | はい。市場販売目的のソフトウェアは、完成後の費用の中にも資産にできる部分があるということですね。研究開発の段階では成果が不確実なので費用処理ですが…。 |
| 社長 | 完成した後も、全部研究開発費かと思ったよ!💰 ところで、その資産化したAI柴犬プログラム、貸借対照表のどの資産区分に載せるんだ? |
| 経理 | 市場販売目的も自社利用目的も、ソフトウェアを資産として計上する場合は、「無形固定資産」に区分します。 |
| 社長 | 自社利用目的は無形固定資産なのはなんとなくわかるけど、市場販売目的は売るんだから棚卸資産じゃないのか? |
| 経理 | 社長、するどいですね!まず、ソフトウェアの販売の元となる製品マスター自体は販売の対象物ではないので棚卸資産ではありません。 |
| 投資家 | そのとおり。製品マスターは、機械装置などと同じく、これを利用(複写)して製品を作成するもの、つまり固定資産の性格を有しているんだ。 |
| 社長 | ふむ。じゃあ、機械と同じ有形固定資産がよくないか? |
| 経理 | ソフトウェアには著作権という法的権利があります。また、適正な原価計算により取得原価を明確化できるので、形はないけれども価値を生む資産として、「無形固定資産」に計上するんです。 |
| 社長 | なるほどな。AI柴犬の本体はコードでも、その中身にはちゃんと価値が詰まってるってわけか。黒柴さん、これは“見えない資産”だね! |
| 投資家 | まさにそのとおり。研究開発が未来をつくり、ソフトウェアがその成果を無形固定資産として形にする――会計基準の狙いがよくわかるな。 |
条文穴埋問題
一 定義
2 ソフトウェア
ソフトウェアとは、コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現した プログラム 等をいう。四 研究開発費に該当しないソフトウェア制作費に係る会計処理
1 受注制作のソフトウェアに係る会計処理
受注制作のソフトウェアの制作費は、 請負工事の会計処理 に準じて処理する。2 市場販売目的のソフトウェアに係る会計処理
市場販売目的のソフトウェアである製品マスターの制作費は、 研究開発費 に該当する部分を除き、 資産 として計上しなければならない。ただし、製品マスターの 機能維持 に要した費用は、 資産 として計上してはならない。3 自社利用のソフトウェアに係る会計処理
ソフトウェアを用いて外部へ業務処理等のサービスを提供する契約等が締結されている場合のように、その提供により将来の 収益獲得 が確実であると認められる場合には、適正な原価を集計した上、当該ソフトウェアの制作費を資産として計上しなければならない。 社内利用のソフトウェアについては、完成品を購入した場合のように、その利用により将来の 収益獲得 又は 費用削減 が確実であると認められる場合には、当該ソフトウェアの取得に要した費用を 資産 として計上しなければならない。(略)4 ソフトウェアの計上区分
市場販売目的のソフトウェア及び自社利用のソフトウェアを資産として計上する場合には、 無形固定資産 の区分に計上しなければならない。5 ソフトウェアの減価償却方法
無形固定資産として計上したソフトウェアの取得原価は、当該ソフトウェアの性格に応じて、
見込販売数量に基づく償却方法その他合理的な方法
により償却しなければならない。
ただし、毎期の償却額は、
残存有効期間
に基づく
均等配分額
を下回ってはならない。
(注4) 制作途中のソフトウェアの計上科目について
制作途中のソフトウェアの制作費については、 無形固定資産 の 仮勘定 として計上することとする。
理論記述問題
Q.ソフトウェア制作費の会計処理が、制作目的別に定められているのはなぜか?
A.ソフトウェア制作費は、その制作目的により、将来の収益との対応関係が異なるから。
Q.市場販売目的のソフトウェア制作費が、無形固定資産に計上されるのはなぜか?(理由4つ)
A.➀ 制作する製品マスターは、それ自体が販売の対象物ではないこと
② 機械装置等と同様にこれを利用(複写)して製品を作成するものであること
③ 製品マスターは法的権利(著作権)を有していること
④ 適正な原価計算により取得原価を明確化できること
注記
ソフトウェアの償却方法に関して、「重要な会計方針に関する注記」が必要です。また、研究開発費については、その総額を「損益計算書に関する注記」として開示します。
重要な会計方針等に係る事項に関する注記
固定資産の減価償却の方法
自社利用のソフトウェア
社内の利用可能期間( 5 年)に基づく定額法
損益計算書に関する注記
一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の総額 ×× 千円
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P/L注記といえば、「関係会社との取引高」が基本ですが、研究開発費に関してもP/L注記が必要です。

