【シバ犬🐾財務諸表論】収益認識に関する会計基準
目次
第1話 収益認識の出発点 ~“実現主義”から“支配の移転”へ~
| 社長 | 白柴くん、最近「収益認識に関する会計基準」ってよく聞くけど、何がそんなに変わったんだ? |
| 経理 | はい社長。これまでは「実現主義」という考え方が主流でした。つまり、商品やサービスを販売して、現金や売掛金などの対価を得た時に収益を認識していたんです。 |
| 投資家 | それなら分かりやすいが、会社によって“いつ実現した”とみなすか違ってたんだよな。 |
| 経理 | そうなんです。だから新しい基準では、企業によってバラバラだった認識のタイミングを統一するため、「5つのステップ」に沿って収益を認識することになりました。 |
| 社長 | なるほど、“実現”から“ステップ”へ。で、何が一番違うんだ? |
| 経理 | 最大の違いは「支配の移転」です。従来は“販売した時”に注目していましたが、今は“顧客がその商品やサービスを支配できるようになった時”を重視します。 |
| 投資家 | たとえば? |
| 経理 | うちのカフェの例で言えば、コーヒーを提供した瞬間にお客さんが支配できるので、実は従来と同じなんです。でも―― |
| 社長 | でも? |
| 経理 | ポイントカードのように、将来のサービスがついてくる場合は違うんです。コーヒー代500円のうち、450円はコーヒー本体、50円は「将来の無料ドリンクの権利」と考えます。 |
| 投資家 | ってことは、その50円はまだ収益じゃないってことか。 |
| 経理 | そうです。50円は「契約負債」として負債の部に計上します。そして、お客さんが実際に無料ドリンクを使った時に、その分を収益に振り替えるんです。 |
| 社長 | へぇ~。前受金みたいなもんだな。 |
| 経理 | そうです。契約負債は「まだサービスを提供していないけど、お金はもらっている状態」を包括的に表した概念なんです。 |
第2話 5つのステップ ~ “約束したサービス”をどう数える?~
| 社長 | 白柴くん、昨日の“5つのステップ”ってやつ、詳しく教えてくれ。 |
| 経理 | はい!次の順番で収益を認識するんです。①契約を識別 ②履行義務を識別 ③取引価格を算定 ④価格を履行義務に配分 ⑤履行義務を果たしたときに収益を認識、です。 |
| 社長 | ん~、名前だけだとまだピンとこないな。 |
| 経理 | 例えば、プリペイドカード5,000円分を販売したケースでいきます。お客さんは5,000円払えば、その金額分のドリンクや食事を受けられる契約です。 |
| 社長 | なるほど。それが「契約の識別」か。 |
| 経理 | そうです。そして「履行義務」は、お客さんがカードを使うたびに商品を提供する義務。「取引価格」は5,000円。「価格の配分」は、何を注文するかで変わります。 |
| 投資家 | で、最後の“履行義務の充足”は? |
| 経理 | 実際にドリンクや食事を提供した時点です。だから、カードを売った時には「契約負債」として5,000円を負債計上し、提供のたびに収益へ振り替えます。 |
| 社長 | ポイントカードと同じ考え方だな。“約束したサービスを提供したときに収益を認識”ってことか。 |
| 経理 | そのとおりです!新基準の本質はそこにあります。 |
第3話 セット販売の落とし穴 ~“履行義務”はひとつじゃない!~
| 社長 | 白柴くん、今度うちで「コーヒー豆10袋+専用ミル」のセットを1万円で売るんだが、これも収益認識の考え方が関係あるのか? |
| 経理 | 大いにあります!この場合、「コーヒー豆」と「専用ミル」はそれぞれ独立した履行義務になります。 |
| 社長 | 一緒に売ってるのに、別々に扱うのか? |
| 経理 | はい。豆はミルがなくても使えますし、ミルも他の豆に使えます。だから顧客はそれぞれ別々に便益を得られる=別履行義務です。 |
| 社長 | じゃあ1万円のうち、どうやって豆とミルに配分するの? |
| 経理 | 「独立販売価格」で比率配分します。例えば、豆が6,000円、ミルが5,000円なら合計11,000円。割引1,000円をこの比率で分けます。豆:55%→5,450円、ミル:45%→4,550円です。 |
| 投資家 | ふむ。「取引価格の配分」ってやつだな。 |
| 経理 | そうです。そして収益の認識タイミングも大事です。豆とミルを同時に渡すなら同時認識、ミルが後日配送ならミル分だけ後で認識します。 |
| 社長 | 実態に合わせて収益を分けるってことか。前は全部まとめて収益にしてたよな? |
| 経理 | そうなんです。新基準ではより正確に「いつ・何を」提供したかを反映させます。国際基準との整合性も高まり、財務諸表の比較がしやすくなったんです。 |
| 投資家 | なるほど、見た目の利益より“実態重視”ってわけか。 |
| 経理 | はい。短期的には減収に見えることもありますが、実際のビジネスの流れをより忠実に表す基準なんです。 |
| 社長 | 会計って、ほんと奥が深いなぁ。 |
参考条文
企業会計基準第29号 収益認識に関する会計基準