【シバ犬🐾財務諸表論】自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準

目次

第1話 自己株式の取得 ~発行した後、買い戻す~

社長 そういえば、うちも市場でちょっと自社株を買ってみようと思ってるんだけど、あれって資産扱いでいいのか?
経理実はそれ、昔は「資産説」って考え方もあったんです。自己株式を取得しただけでは、まだ株式は失効してないし、他の有価証券と同じように換金性のある会社財産だから資産でしょ!っていう理屈ですね。
投資家でも今は違う。現行制度では「資本控除説」が採用されてる。
社長黒柴さん、今回は出てくるの早いね!てか、資本控除説って なんか減らされてる感あるね。
経理はい。自己株式を取得するのは、株主にお金を返すので資本取引。だから「資本の払戻し」なんです。貸借対照表では純資産の部から控除します。
投資家条文にもちゃんと書いてあるぞ。自己株式は取得原価で、株主資本の末尾から一括して控除。つまり、資本金などを個別に減らすんじゃなく、全体からまとめて差し引く。
社長へぇ~、でもなんで直接減らさないの?
経理それはですね、自己株式って取得しただけでは、発行済株式総数が減少するわけではなく、この後、処分もあり得る、いわば暫定的な状態だからです。“保留中の株”みたいな感じなんです。なので、取得原価で一括して株主資本全体から控除するんですね。
社長なるほど、“仮の在庫”みたいな株なんだな。

条文穴埋問題

(自己株式の取得及び保有)

7.取得した自己株式は、 取得原価 をもって純資産の部の株主資本から控除する。

8.期末に保有する自己株式は、純資産の部の 株主資本の末尾 自己株式として一括して控除する形式 で表示する。

Q.自己株式の会計上の性格における「資産説」とはどのようなものか?

A.資産説とは、自己株式を取得したのみでは株式は失効しておらず他の有価証券と同様に換金性のある会社財産とみられるため、自己株式を資産として扱う考え方である。

Q.自己株式の会計上の性格における「資本控除説」とはどのようなものか?

A.資本控除説とは、自己株式の取得は株主との間の資本取引であり、会社所有者に対する会社財産の払戻しの性格を有するため、資本の控除として扱う考え方である。

第2話 自己株式の処分 ~まるで新株発行!?~

社長で、その自己株式、また売るときはどう処理するの?
経理自己株を売ることを“自己株式の処分”と言います!これ、経済的実態は新株の発行と同じなんですよ。
投資家そう。そして、処分して得たお金と帳簿価額の差は“自己株式処分差額”と呼ぶ。それがプラスなら“処分差益”、マイナスなら“処分差損”。
社長ふむふむ。じゃあ、その差額はどこに入れるんだ?
経理処分差益は「その他資本剰余金」に計上すします!処分差損の場合は、その他資本剰余金から減額です!
投資家なんで利益じゃないかというと、さっき、白柴くんがいったように、これは“株主との資本取引”だから。つまり“払込資本”と同じ性格だから、損益取引とはしないということだ。
社長なるほど、株主と“出し入れ”してるだけで、儲けじゃないんだな🐾

条文穴埋問題

(用語の定義)

4.「自己株式処分差額」とは、自己株式の 処分の対価 から自己株式の 帳簿価額 を控除した額をいう。

5.「自己株式処分差益」とは、自己株式処分差額が の値の場合における当該差額をいう。

6.「自己株式処分差損」とは、自己株式処分差額が の値の場合における当該差額をいう。

(自己株式の処分)

9.自己株式処分差益は、 その他資本剰余金 に計上する。

10.自己株式処分差損は、 その他資本剰余金 から減額する。

理論記述問題

Q.自己株式処分差益がその他資本剰余金の増加項目とされるのはなぜか?

A.自己株式の処分が新株の発行と同様の経済的実態を有する点を考慮すると、その処分差額も株主からの払込資本と同様の経済的実態を有すると考えられ、また、会社法において、資本準備金は分配可能額からの控除項目とされているのに対し、自己株式処分差益についてはその他資本剰余金と同様に控除項目とされていないことから。

Q.自己株式処分差損がその他資本剰余金の減少項目とされるのはなぜか?

A.自己株式処分差損については、自己株式の取得と処分を一連の取引とみた場合、純資産の部の株主資本からの分配の性格を有すると考えられ、この分配については、払込資本の払戻しと同様の性格を持つものとされるから。また、資本準備金からの減額が会社法上の制約を受けるため、その他資本剰余金からの減額が適切であると考えられる。

第3話 自己株式の消却 ~“持ってても意味がない株”!?~

社長ところで白柴くん、自己株式は売らない場合は、ずっと持っておくの?
経理実は、持ってても“議決権も配当もない”ので、意味がないんです。だから普通は消却します。
投資家消却っていうのは、文字どおり“株を消す”こと。帳簿上からも完全に削除するんだ。もちろん、発行済株式数も減ることになる。
社長へぇ~、消却処理はどうするんだ?
経理消却した自己株式の帳簿価額は、その他資本剰余金から控除します。つまり“払込資本”を減らすイメージですね。
投資家要するに、自己株式を消すってことは、“株主からの資本”を減らす処理なんだ。
社長なるほど。だから会社の“資本の大きさ”も減るんだな。
経理そうです。だから、自己株式を消却するときも損益は発生しません。あくまで“株主との資本取引”なんです。
社長やれやれ、自己株式って、買う・売る・消す、ぜんぶ資本取引なんだな。

条文穴埋問題

(自己株式の消却)

11.自己株式を消却した場合には、消却手続が完了したときに、消却の対象となった自己株式の帳簿価額を その他資本剰余金 から減額する。

第4話 自己株式に関する付随費用 ~国際基準と処理が違う!?~

社長白柴くん、自己株式を買ったり売ったりするときの手数料はどう処理するんだ?
経理それが“自己株式に関する付随費用”です。基準の第14項で、損益計算書の営業外費用に入れると決まってます。
投資家営業外費用ってことは、本業とは関係のない“財務費用”扱いだな。
社長なんで損益に入れるんだ?資本から引いちゃダメなのか?
経理いい質問ですね。自己株式を「買う・売る・消す」は会社の意思決定で行うものなので、会社の業績に反映させるべきなんですよ。
投資家つまり、「やるかどうか」で費用が変わる。だから損益処理にしてるんだ。
社長なるほどなー。国際的にみてもそれが通常なのか?
経理国際会計基準(IFRS)では、特に処分や消却の付随費用を“自己株式本体の取引と一体”と考えて、資本から控除します。
投資家一方、日本では、新株発行費用を資本から引かない処理との整合性をとって、営業外費用にしているんだ。
社長なるほど、国によって“費用をどこに出すか”の考え方が違うんだな。
経理そうです。日本は「経営判断のコストは業績に出す」方針なんです。

条文穴埋問題

(自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用)

14.自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用は、 損益計算書 営業外費用 に計上する。

第5話 資本剰余金と利益剰余金 ~混ぜるな危険!~

社長白柴くん、うちの「資本剰余金」と「利益剰余金」って、似たような名前だけど、まとめて「剰余金」ってしちゃダメなの?
経理ダメです社長!それ、混同禁止です!
投資家おっと出たな、「混同禁止」条項。ちゃんと『企業会計原則 一般原則三』と『自己株式等会計基準第19項』で明記されてるんだよな。
社長へぇ~、そんな厳しく言われるほど大事なことか?
経理大事ですよ。だって、資本剰余金は株主が払ったお金(払込資本)、利益剰余金は払込資本を利用して会社が稼いだお金(成果)ですから!
投資家もしこれを混ぜたら、“出資金と儲け”の区別があいまいになる。つまり“株主の元手”と“経営の成果”がごっちゃになるんだ。だから混ぜるな危険、なんだ。 
社長なるほど、“お年玉”と“バイト代”を一緒にするようなもんだな💦
経理その通りです!ただし、例外もあります。2つだけ――
🐾① 利益剰余金がマイナスのときは、その他資本剰余金で補てんできる。
🐾② その他資本剰余金がマイナスのときは、利益剰余金で補てんできる。
投資家つまり、どっちかが“赤字”になったら、もう一方で助ける“救済ルール”だな。

条文穴埋問題

(資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止)

19. 資本剰余金 の各項目は、 利益剰余金 の各項目と混同してはならない。したがって、 資本剰余金 利益剰余金 への振替は原則として認められない。

理論記述問題

Q.資本剰余金と利益剰余金を混同してはならないとするのはなぜか?

A.払込資本と払込資本を利用して得られた成果を区分することが困難になるから。

Q.混同禁止の例外にあたる事項とは何か?(2つ)

A.その他資本剰余金が負の残高のときに、利益剰余金で補てんする。

  ② 利益剰余金が負の残高のときに、その他資本剰余金で補てんする。

第6話 その他資本剰余金がマイナスの場合 ~“混ぜるな危険”の例外、再登場!~

社長そういえば、自己株式を処分したり、消却したら“その他資本剰余金”が減るって言ってたよな。もしマイナスになったらどうなるんだ?
経理いいところに気づきましたね社長!その場合、条文(第12項)ではこう定められています👇
“その他資本剰余金の残高がの値となったときは、会計期間末において、その他資本剰余金をとし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)で補填する。”
投資家つまり、途中はいいけど最終的にマイナスのまま表示するのはダメ。だって資本剰余金は“株主からの払込”を意味するのに、マイナスってのはおかしいだろ?
社長なるほど、出資金がマイナスって、たしかに変だな🐶想定されてないってことね。
経理だから、“表示せずに補てん”が原則です。このときだけは、混同禁止の“例外”なんです。
投資家ちなみに、その他資本剰余金がマイナスになるのは主に2パターン。① 自己株式処分差損が出たとき、② 自己株式を消却したとき、だ。
社長やれやれ、自己株式は扱いがデリケートだな💦

条文穴埋問題

(その他資本剰余金の残高が負の値になった場合の取扱い)

12.第10項及び第11項の会計処理の結果、その他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、 会計期間末 において、その他資本剰余金を とし、当該負の値を その他利益剰余金 繰越利益剰余金 )から減額する。

理論記述問題

Q.その他資本剰余金が負の残高となった場合、その他利益剰余金(繰越利益剰余金)で補填することとされているのはなぜか?

A.資本剰余金は株主からの払込資本のうち資本金に含まれないものを表すため、本来負の残高の資本剰余金という概念は想定されない。したがって、資本剰余金の残高が負の値になる場合は、利益剰余金で補てんするほかないから。

参考条文

企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準(HTML版PDF版

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