【シバ犬🐾財務諸表論】棚卸資産の評価に関する会計基準

目次

第1話 棚卸資産の範囲 ~「売るためのモノ」だけじゃない!~

社長白柴くん、棚卸資産って在庫のことだよな?うちの倉庫の商品だけだろ?
経理実はそれだけじゃありません。製品、仕掛品、原材料にくわえて、事務用の消耗品も棚卸資産なんです。
投資家つまり、「売るモノ」だけじゃなくて、短期間で消費されるモノも含まれるってわけだな。
社長え、事務用のボールペンまで棚卸資産?そんな細かいのまで?
経理はい。売却予定がなくても、短期間で使うものは棚卸資産に含むと基準で定められています。             
投資家会社が動くための“材料庫”みたいなイメージだな。売るモノ+使うモノの集合だ。
社長棚卸資産って、思ったより守備範囲広いんだなぁ。

条文穴埋問題

(範囲)

3.本会計基準は、すべての企業における棚卸資産の評価方法、評価基準及び開示について適用する。棚卸資産は、 商品 製品 半製品 原材料 仕掛品 等の資産であり、企業がその 営業目的 を達成するために所有し、かつ、 売却 を予定する資産のほか、 売却 を予定しない資産であっても、 販売活動及び一般管理活動 において 短期間 消費 される 事務用消耗品等 も含まれる。 (略)

第2話 棚卸資産の評価方法 ~「いくらで仕入れて、どう出す?」~

社長その棚卸資産って、どうやって値段つけるんだ?
経理まず大前提は取得原価主義です。仕入れ値に運搬費などの付随費用を足して原価にします。
投資家で、その原価をどう配分するかで4つの方法がある。個別法、先入先出法、平均原価法、売価還元法だな。
社長個別法ってのは?
経理一つ一つの在庫の原価を記録する方法です。美術品や車など個別性の強い資産に向いています。
投資家個別法は、モノの実際の流れと原価の流れが完全に紐づいているから、事実に合致した正確な費用配分ができるのがメリットだな。
経理ただし、大量仕入品に使うと、払出単価を選べてしまい利益操作ができてしまうのが危ないですね!
社長利益操作(ゴクッ)。じゃあ、先入先出法は?
経理古い在庫から払出すとみなす方法です。期末在庫には新しい仕入れ分が残ります。
投資家古いものから販売するから、物価上昇時は、売上高と売上原価とが同一価格水準で対応しないんだよな。その結果、利益には保有損益が混ざってしまうな。
社長そうか、持ってるうちに価格が上がってしまい、その利益が混ざってしまうのか。じゃあ、平均原価法は?
経理在庫の平均単価で評価する方法で、総平均法と移動平均法があります。
投資家実務でよく使われる安定した方法だな。
社長売価還元法って、小売のやつだろ?
経理そのとおりです。売価に原価率をかけて概算原価を求める、小売業特有の方法です。
投資家スーパーみたいに品目が多いところでは必須なんだよな。

条文穴埋問題

(棚卸資産の評価方法)

6-2.棚卸資産については、原則として 購入代価 又は 製造原価 に引取費用等の付随費用 を加算して 取得原価 とし、次の評価方法の中から選択した方法を適用して売上原価等の払出原価 期末棚卸資産の価額 を算定するものとする。

(1) 個別法
  取得原価 の異なる棚卸資産を区別して記録し、その個々の 実際原価 によって期末棚卸資産の価額を算定する方法
 個別法は、 個別性 が強い棚卸資産の評価に適した方法である。

(2) 先入先出法
  最も古く取得 されたものから順次払出しが行われ、期末棚卸資産は 最も新しく取得 されたものからなると みなして 期末棚卸資産の価額を算定する方法

(3) 平均原価法
 取得した棚卸資産の 平均原価 を算出し、この 平均原価 によって期末棚卸資産の価額を算定する方法
 なお、平均原価は、 総平均法 又は 移動平均法 によって算出する。

(4) 売価還元法
  値入率 等の類似性に基づく棚卸資産のグループごとの期末の 売価合計額 に、 原価率 を乗じて求めた金額を期末棚卸資産の価額とする方法
 売価還元法は、 取扱品種 の極めて多い 小売業等 の業種における棚卸資産の評価に適用される。

理論記述問題

Q.個別法の長所は?

A.棚卸資産の実際の流れと原価の流れが一致しているため、事実に合致した費用配分ができる。

Q.個別法の問題点は?

A.大量仕入品に採用すると、恣意的な払出しによる利益操作が可能となる。

Q.先入先出法の問題点は?

A.価格上昇時に、売上高と売上原価とが同一価格水準で対応しないため、期間利益に保有損益が混在する。

第3話 後入先出法とは ~今はもう使えません!~

社長そういえばさっきの先入先出法は、逆に後に入れたやつを先に出せばいいんじゃないか?
経理後入先出法」ですね。昔は認められていましたが、現在は会計基準から削除されています。
投資家とはいえ、保有損益は排除できるから、そこは悪くなかったんだよな。新しい仕入れ価格で売上原価を出すから、価格変動時の利益が実態に近い。
社長じゃあなんで廃止されたんだ?
経理期末在庫の価額が古い仕入れ値になってしまい、貸借対照表が実態を反映しないからです。
投資家資産負債アプローチの観点でアウト。古い原価で棚卸資産を評価すると、“今の価値”が見えないんだ。
経理さらに、実際の物の流れ(先に仕入れた物から先に出る)とも一致しにくいという問題もあります。
社長なるほどな。過去の値段で未来を語っちゃダメってことか。

理論記述問題

Q.後入先出法が、適正な期間損益計算に資すると考えられたのはなぜか?

A.後入先出法によると、棚卸資産の価格上昇時には、売上高と売上原価とが同一価格水準で対応するため、保有損益を期間損益から排除することができるから。

Q.後入先出法が、会計基準から削除されたのはなぜ?

A.後入先出法を採用すると、その貸借対照表価額が最近の再調達原価の水準と大幅に乖離してしまう可能性があり、また、一般的な棚卸資産の実際の流れを忠実に表現しているとはいえないことから。

第4話 簿価の切下げ ~「もうその値段では売れません!」~

社長なぁ、最近うちの在庫、値崩れがひどいんだが、帳簿価額はこのままでいいのか?
経理期末時点で正味売却価額が取得原価を下回っているなら、「簿価切下げ」の処理が必要です。
投資家正味売却価額っていうのは、ざっくり言えば、実際に回収できる正味の金額のことだな。
社長じゃあ、帳簿上の在庫の値段が、実際に売って手に入る額より高い場合に下げるってことか。
経理そのとおりです。棚卸資産は“販売”でしか回収できませんから、回収可能額(正味売却価額)を基準に収益性の低下を判断します。
投資家固定資産と違って、棚卸資産は売ってなんぼ。“もうその値段では売れない”なら、帳簿も現実に合わせろってことだ。
社長もし、この処理をサボったらどうなるんだ?
経理売れば赤字になるのに、今の利益は多く見えるという状態になります。これが「将来の損失の繰延べ」です。
投資家回収不能な部分を隠したまま棚卸資産として計上し続けるのは、未来の損失を帳簿から見えなくしてるのと同じことだな。
社長なるほど、回収可能額を超えた帳簿価額は、資産としての価値がない部分を抱え込んでいるってわけか。
経理ええ。取得原価より正味売却価額が下回ったら、その分は回収不能な原価として当期で損失処理します。

条文穴埋問題

用語の定義

4. 「時価」とは、 公正な評価額 をいい、 市場価格に基づく価額 をいう。市場価格が観察できない場合には 合理的に算定された価額 を公正な評価額とする。

5. 「正味売却価額」とは、 売価 (購買市場と 売却市場 とが区別される場合における 売却市場 時価 )から 見積追加製造原価 及び 見積販売直接経費 を控除したものをいう。なお、「購買市場」とは当該資産を 購入 する場合に企業が参加する市場をいい、「 売却市場 」とは当該資産を 売却 する場合に企業が参加する市場をいう。

6. 「再調達原価」とは、購買市場と 売却市場 とが区別される場合における 購買市場 時価 に、購入に 付随する費用 を加算したものをいう。

(通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準)

7.通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産は、 取得原価 をもって貸借対照表価額とし、期末における 正味売却価額 取得原価 よりも下落している場合には、当該 正味売却価額 をもって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は 当期の費用 として処理する。

理論記述問題

Q.収益性が低下した場合における簿価の切下げの目的は?

A.収益性が低下した場合の簿価の切下げは、取得原価基準の下で回収可能性を反映させるように、過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる。

Q.収益性が低下したかどうかの判断は、帳簿価額と正味売却価額との比較によって行うのはなぜか?

A.棚卸資産は、通常、販売によってのみ資金の回収が図られる。そのため、評価時点における資金回収可能額を示す正味売却価額が、その帳簿価額を下回る場合には、収益性が低下していると判断できるから。

第5話 低価法とは ~「原価基準の枠の中」だった!?~

社長しかし白柴くん、簿価を市場価格まで下げるって、時価評価じゃないのか?
経理いいえ、これは取得原価基準の枠内で行う「原価配分の手続」で、時価評価とは異なります。
投資家取得原価のうち、経済的便益を失った部分(回収不能分)を当期の費用に振り替える、という考え方だな。
社長つまり、将来に渡すべき有用な原価だけを資産として残すってことか。
経理かつては、取得原価を維持することが取得原価基準の本質とされ、低価法は例外とされていました。
投資家昔は「原価は絶対に守るもの」という原価維持主義的な発想だったんだな。
経理しかし、今日では、取得原価基準の本質は「回収可能な原価」だけを繰り越すことにあると考えられています。     
社長だから今は、簿価切下げは取得原価基準の正当な一環という扱いになったんだな。
投資家要するに、今は回収可能性の視点を取り込んで、取得原価の額を調整しているってことだ。

第6話 簿価切下げの開示 ~「売上原価の仲間入り!」~

社長そういえば、さっき簿価切下げの差額は費用っていったけど、その費用はどこに載せるんだ? 特別損失?
経理通常売上原価」に含めます。販売活動の中で避けられない損失だからです。
投資家商品評価損は“売上を得るために必要だったコストの調整”という扱いだな。
社長じゃあ営業の一部なんだな。なるほど。
経理ただし、災害や事業廃止など“臨時の事情”によって急激に価値が下がった場合は、「特別損失」に計上します。
投資家臨時の場合は「通常の営業では説明できない」から、区別して表示するわけだ。
社長そういや、評価する棚卸資産には商品だけじゃなく原材料もあったよな? 原材料も同じように“正味売却価額で比較”するのか?
経理いい質問です。原材料の評価は少し事情が違います。原材料そのものを“売って回収する”ケースは少なく、普通は製品を作るために使いますよね。
投資家つまり、原材料の価値って“材料としての役割”がポイントになるってことだな。
経理 その通りです。だから原材料については、正味売却価額より“再調達原価”のほうが把握しやすい場合があります。原材料価格が市場動向で決まりやすく、正味売却価額と連動しているときなどは、継続適用を前提に再調達原価で評価することが認められています。
社長なるほど、商品とは役割が違うから評価の考え方も少し変わるんだな。
経理そうですね。棚卸資産の性質に応じて「どの価額がもっとも合理的か」を判断するのがポイントです。

理論記述問題

Q.収益性の低下による簿価切下げを売上原価とするのはなぜか?

A.販売活動を行う上で不可避的に発生したものであるから。

第7話 トレーディング目的の棚卸資産 ~「もう投資商品の仲間入り!」~

社長金の延べ棒を転売して儲けるビジネス、あれも棚卸資産か?
投資家トレーディング目的で持ってるなら、棚卸資産だけど扱いが違う。
経理そうなんです。これは“時価評価”します。差額はその期の損益に反映。
社長え、さっき「時価評価じゃない」って言ってたのに!?
経理これは特別。市場価格の変動そのものが収益源だから、“金融商品扱い”なんです。                   
投資家売買目的有価証券と同じ発想だな。時価で貸借対照表に出して、評価差額を損益に反映。            
社長なるほど、“在庫だけど投資”なんだな。ややこしいけど面白い!

条文穴埋問題

(トレーディング目的で保有する棚卸資産の評価基準)

15.トレーディング目的で保有する棚卸資産については、 時価 をもって貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額(評価差額)は、 当期の損益 として処理する。

参考条文

企業会計基準第9号 棚卸資産の評価に関する会計基準(HTML版PDF版

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