目次
貸倒引当金の設定方法 - 差額補充法?洗替法?どっちだワン!
| 社長 | 白柴くん、決算でまた貸倒引当金をいじるのか? 難しいんだよな~💦 |
| 経理 | 社長、ここは大事ですよ。決算では、まず「差額補充法」を使うのが原則です。 |
| 社長 | 差額補充法? 補充ってことは…足りなかったら足すってことか? |
| 経理 | そのとおりです。例えば設定額100にしたいのに、今の残高が80なら、20だけ繰り入れます。逆に残高が130あれば、30だけ戻入します。 |
| 投資家 | 差額補充法でも戻入はあり得るってことだな。勘違いしがちなんだよな。 |
| 社長 | ふむふむ。じゃあ、もう1つよく聞く「洗替法」ってのは? なんか洗濯みたいな名前だな🐾 |
| 経理 | 洗替法は、前期の残高を全部いったんゼロにして、必要額を丸ごと再設定する方法です。ある意味“洗い流す”イメージですね。 |
| 投資家 | でも表示上は差額補充法が原則。洗替法は採用しても、損益計算書の表示は差額補充法風になる。その点、気をつけろよ。 |
| 社長 | 会計は奥が深いなぁ😢。でもなんとなく分かってきたぞ! |
一般債権 - 柴犬たちの3年平均チャレンジ!
| 社長 | 白柴くん、貸倒引当金の設定に際しては債権を区分すると思うが、その中の一般債権の計算方法からまずは教えてくれ。 |
| 経理 | はい社長。一般債権と言えば、「貸倒実績率」を使って計算します。基本的に直近の3年間を使いますので、実際に計算してみましょう。 |
| 社長 | えっ3年も? 去年のじゃだめなの? |
| 投資家 | ダメだな。去年だけだと、たまたま貸倒が多かった年とか、逆にゼロの年に引きずられる。だから 3年間の実績でならして、安定した率を使うんだ。 |
| 経理 | そうなんです。では、うちの直近の3年間のデータを見てみましょう。 ・第1期: 売掛金 5,000 / 貸倒損失 40 ・第2期: 売掛金 4,000 / 貸倒損失 60 ・第3期: 売掛金 3,000 / 貸倒損失 57 |
| 社長 | どれ、それぞれ割ってみるか。 ・第1期: 40 ÷ 5,000 = 0.8% ・第2期: 60 ÷ 4,000 = 1.5% ・第3期: 57 ÷ 3,000 = 1.9% おぉ!0.8%、1.5%、1.9%か。結構デコボコしてるんだな! |
| 投資家 | そして、ここからが本番の「3年平均」だ。この3つを足して3で割る。(0.8% + 1.5% + 1.9%) ÷ 3= 4.2% ÷ 3= 1.4% |
| 社長 | バラバラだった数字が、平均することで「1.4%」っていう一つの基準になるんだな。じゃあ、これを今期の一般債権に掛けるのか? |
| 経理 | そのとおりです。たとえば、今期の一般債権の残高が 10,000 あるとしたら、10,000 × 1.4% = 140。これが、今期に設定する貸倒引当金です。 |
| 投資家 | ここが「一般債権」らしさだな。個々の取引先の顔色は見ずに、全体を大きなカタマリとして捉えて、過去3年の平均値(1.4%)でドライに処理するんだ。 |
| 社長 | じゃあ、もし「この会社、倒産しそうだぞ…」ってなったら? |
| 経理 | その時点で、一般債権から外れて「貸倒懸念債権」などに区分が変わります。そうなると、平均率ではなく、個別に回収できる現金を見積もることになりますね。 |
| 社長 | なるほど〜!一般債権は「3年平均 × 全体残高」で機械的に決める、クールなルールなんだな! |
| 投資家 | そういうことだ。「バラバラでもたして、3で割る!」というのを忘れなければ大丈夫だ。 |
貸倒懸念債権
財務内容評価法 -まだ倒産してないけどピンチ!
| 社長 | おい白柴くん! 取引先のワンワン商事が、借金の返済遅れてるらしいぞ💦 まさか倒産か!? |
| 経理 | 社長、落ち着いてください。ワンワン商事はまだ経営破綻には至っていません。ただ、返済に重大な問題が生じているので、「貸倒懸念債権」に区分されます。 |
| 社長 | けねん? まだ倒産してないなら、セーフなんじゃないの? |
| 投資家 | 甘いな。倒産してなくても「回収できないかも」ってリスクが高まってるんだ。だから相手の懐事情(個別事情)に合わせて貸倒引当金を積む必要がある。 |
| 社長 | ええっ! 具体的にどう計算するんだ? |
| 経理 | 一般的な売掛金などは、「財務内容評価法」を使います。まず債権額から、担保などで回収できる分を引きます。残りの額に、相手ごとの設定率(例えば50%など)を掛けて計算するんです。 |
| 社長 | なるほど。例えば1,000円のツケがあって、担保が400円あったら? |
| 経理 | 残りの600円に対して、設定率が50%なら300円を貸倒引当金にします。 |
| 投資家 | 破産更生債権なら残りは全額アウト(100%)だが、懸念債権は**「回収可能性」を個別に判断して率を決める**のがポイントだ。 |
| 社長 | まだ半分は返ってくる可能性があるってことか! 諦めたらそこで試合終了だよな🐾 |
キャッシュ・フロー見積法 ~損した分を見積もる!~
| 社長 | 実はな、苦しんでるゴールデン商事への貸付金1,000万円、オレの男気で金利を4%から2%にまけてやったんだ! これで復活間違いなしだろ✨ |
| 経理 | 社長の優しさは素敵ですが、それは「条件変更」ですね。この場合、原則として「キャッシュ・フロー見積法」で引当金の繰入計算をしますよ。 |
| 社長 | ん? なんだその必殺技みたいな名前は。 |
| 投資家 | 将来入ってくるお金(キャッシュ)を、「当初の金利(変更前の4%)」で割り引いて現在の価値を出す方法だ。 |
| 社長 | なんでわざわざ「変更前の金利」を使うんだ? 今は2%だぞ? |
| 経理 | ここが重要です。会計上は「当初約束した4%の利益が得られなくなった=その分価値が下がった」と考えます。だから、変更後の入金予定額を、変更前の金利で割り引いて計算するんです。 |
| 社長 | むむっ、計算するとどうなる?💦 |
| 経理 | 「本来の価値」と「計算した現在価値」の差額が、貸倒引当金になります。つまり、金利をまけてあげた分、うちの会社にとっては実質的な損失(貸倒れリスク)とみなすわけです。 |
| 投資家 | そのとおり。お前が「まけてやった分」は、会計上は「債権の価値が減った」と評価されるんだ。優しさにもコストがかかるってことだな。 |
| 社長 | ガーン! 良いことしたのに損失計上なんて😢 でも、それが正しい会計処理なら仕方ないか……。 |
【図解:キャッシュ・フロー見積法の手順】
- 将来の入金額(キャッシュ・フロー)を把握(変更後の金利2%の利息+元本)
- 割引計算(重要:変更前の金利4%を使って現在価値に割り引く)
- 貸倒引当金の計上(債権の額面 - 2.で出した割引現在価値 = 差額を計上)
2年目以降の処理 ~時は金なり、価値が増える!~
| 社長 | おい白柴くん、例の金利をまけてやった貸付金、1年経ったぞ。またあの面倒な「割引計算」をするのか?💦 |
| 経理 | はい、そうです。でも社長、朗報ですよ。2年目以降は、計算上の「割引現在価値」が増えていきます。 |
| 社長 | え? お金を追加で貸したわけじゃないのに、なんで価値が増えるんだ? |
| 投資家 | 満期(返済日)に近づいたからだ。遠い将来にもらえる1,000円より、すぐ明日もらえる1,000円の方が価値が高いだろ? 時間が経過すればするほど、割引の期間が短くなって、価値は元本に近づいていくんだ。 |
| 社長 | なるほど! ゴールが近づいてきたから、価値が回復してきたってことか! |
| 経理 | そのとおりです。価値が増えるということは、債権額との差額(=貸倒引当金)は去年よりも減ります。 |
| 社長 | おおっ! 引当金が減るってことは、利益が出るってことか? |
| 経理 | はい。キャッシュ・フロー見積法では、時の経過によって価値が戻った分を、「受取利息」として計上するのが一般的です。具体的には、割引現在価値に当初利率をかけて、受取利息を計算します。 |
| 投資家 | 実際にもらう現金(2%の利息)に加えて、引当金を取り崩した分も「利息」のようなものとして扱うわけだな。 |
| 社長 | 現金は増えてないのに、帳簿上は利息が増えるのか……なんか得した気分だぜ!✨ |
| 経理 | ただし、これはあくまで「当初の予定通りの利回り(4%)」を会計上で表現するための処理ですから、無駄遣いは厳禁ですよ! |
【図解:2年目以降のイメージ】
- 1年目:ゴールまで遠い ➡ 割引が大きい ➡ 現在価値が低い(引当金大)
- 2年目:ゴールに近づく ➡ 割引が小さい ➡ 現在価値が増える(引当金小)
- この「引当金の減少分」を 受取利息 にプラスする!
白柴経理キャッシュ・フロー見積法は、満期保有目的債券と同じ仕組みのテーブル表(利息計算表)で解けますので、混乱しやすい人はテーブル表を使いましょう。
★貸倒懸念債権のキャッシュ・フロー見積法のテーブル表
| 支払年月日 | 期首現在価値 | 当初利息 | 引下利息 | 貸倒引当金戻入 | 期末現在価値 |
破産更生債権等 - もう逃げ場なし!?100%アウトの世界!
| 社長 | 白柴くん、大変だ…取引先のブラックドッグ商事が破産手続開始らしいぞ😨 |
| 経理 | それはもう貸倒懸念債権ではなく、「破産更生債権等」に区分されます。 |
| 社長 | 名前からして、もう助からなそうだな…💦 |
| 投資家 | その通り。法的に倒産が確定した相手の債権だからな。 |
| 社長 | この場合の貸倒引当金って、どう計算するんだ? |
| 経理 | ここはシンプルです。回収できる見込み額だけを残して、残りは全額引当します。 |
| 社長 | えっ、ほぼ100%ってことか!? |
| 投資家 | そうだ。一般債権の「平均」も、懸念債権の「〇%見積り」も使わない。 |
| 経理 | 例えば、売掛金が 1,000円、担保で回収できそうなのが 200円 ある場合―― |
| 経理 | 1,000 − 200 = 800円。この 800円すべてが貸倒引当金です。 |
| 社長 | うわぁ…ほとんど諦めるってことか…… |
| 投資家 | そういうことだ。破産更生債権等は、「回収できないことが、ほぼ確定した世界」だからな。もし担保がゼロなら、1,000円全額引当だ。 |
| 社長 | うわぁ……完全にノックアウトじゃないか……💦 |
| 経理 | はい。破産更生債権等は「担保以外は回収不能前提」で処理するのが原則です。 |
| 社長 | くぅ……貸倒引当金の計算の最終ステージは一番シビアだったぜ……🐶 |
貸倒損失と償却債権取立益 - 消えた債権と、よみがえる現金!
| 社長 | 白柴くん、ついにあのブラックドッグの売掛金が回収不能になったぞ……。仕訳はどうなるんだ? |
| 経理 | ポイントは2つです。「前期以前の債権」か「当期発生の債権」か、ですね。 |
| 社長 | だいぶ前からの取引分もあるな。じゃあ、まず、ずっと残ってた売掛金が貸倒れた場合は? |
| 経理 | その場合は、すでに積んである貸倒引当金で処理します。 |
| 経理 | (仕訳)貸倒引当金 ×× / 売掛金 ×× の要領です。 |
| 社長 | なるほど、前もって用意してた引当金を使うんだな。 |
| 投資家 | ただし、もし貸倒引当金の残高が足りなければ、足りない分は貸倒損失だ。 |
| 経理 | 次に、「当期に発生した売掛金」が当期中に貸倒れた場合です。 |
| 社長 | それも引当金で処理するのか? |
| 経理 | いいえ。この場合は引当金の設定がされていないので、 残高の有無に関係なく全額が貸倒損失 です。 |
| 経理 | (仕訳)貸倒損失 ×× / 売掛金 ×× になります。 |
| 社長 | なるほど、当期発生分は繰り入れる間もないからストレートに損失か。 |
| 経理 | では次に、前期以前に貸倒処理した債権を万が一回収できた場合です。 |
| 社長 | そんな奇跡は起きなそうだが…。しかも、もう帳簿から消えてるはずだぞ。 |
| 経理 | そのとおりです。だから回収時は 新たな収益 にします。 |
| 経理 | (仕訳)現金預金 ×× / 償却債権取立益 ×× |
| 社長 | おぉ、まさかの臨時収入ってことか! |
| 投資家 | 次は、当期に貸倒処理した債権を、同じ期中にソッコーで回収できた場合だ。 |
| 経理 | これは さっきの貸倒処理を取り消す仕訳 をします。(貸倒引当金で損失処理した場合)現金預金 ×× / 貸倒引当金 ××、(貸倒損失で損失処理した場合)現金預金 ×× / 貸倒損失 ×× |
| 社長 | なるほど! 当期中なら「なかったこと」に戻せるわけだな。 |
| 投資家 | まとめると、前期以前は「利益」になり、当期なら「取り消し処理」だ。 |
★貸倒処理
| 前期以前に発生の債権 | 貸倒引当金 ×× | 売掛金 ×× | 貸倒引当金の残高がない場合は貸倒損失 |
| 当期発生の債権 | 貸倒損失 ×× | 売掛金 ×× | 貸倒引当金の残高の有無とは関係なく全額貸倒損失 |
★債権回収
| 前期以前に貸倒処理 した債権 | 現金預金 ×× | 償却債権取立益 ×× | 当期の回収時には債権自体は帳簿上消滅しているため、回収時には新たな収益とする |
| 当期発生の債権 | 現金預金 ×× | 貸倒引当金 ×× | 貸倒時の処理を取り消す |
| 現金預金 ×× | 貸倒損失 ×× |
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貸倒引当金戻入額は債権の種類によって表示区分は異なるが、償却債権取立益は原則、「営業外収益」に分類されるぞ!
「貸倒引当金」の本試験ポイント
共通
- 総合問題では、現金・預金の未処理などの影響により、貸倒引当金の設定対象となる売上債権等の金額が変動している可能性が高いため、貸倒引当金に関する問題は後半に解くようにします。
- 貸倒引当金の設定対象は何かをきちんと把握しましょう。科目が指定されていれば簡単ですが、指定されていない場合は次のようなパターンがあります。
- 売上債権:受取手形、売掛金(完成工事未収入金)、電子記録債権などの営業取引による債権のことです。
- 営業債権:上記の売上債権と同じものをさします。
- 営業外債権:売上債権(営業債権)以外の債権です。営業外受取手形、営業外電子記録債権、貸付金、未収入金、立替金など
- 金銭債権(ただし、売上債権及び貸付金に限る。):こうした科目指定の条件がある場合は、( )内を優先するため営業外受取手形や未収入金などは対象外となります。
- 金銭債権:営業債権も営業外債権も全部含めます。売掛金をはじめ未収入金や立替金なども設定対象となるので対象となる範囲が一番広いです。
- 差額補充法の場合でも、債権区分ごとに計算すると、貸倒引当金戻入額が発生する場合があります(特に一般債権)。その際は、貸倒懸念債権や破産更生債権等で発生した貸倒引当金繰入額と相殺せずに、それぞれのP/L区分で計上します。
- 貸倒引当金繰入額のP/L区分は、営業債権か営業外債権かといった債権の性質によって区分されるものであり、一般債権か貸倒懸念債権かといった区分によって表示を分けるものではありません。
一般債権
一般債権に「短期貸付金」と「長期貸付金」があった場合は、それぞれ別々に貸倒実績率を乗じて計算し、B/Sは流動と固定に分けて科目別に対応する貸倒引当金を表示します。
貸倒懸念債権
破産更生債権等
- 問題文では、「破産更生債権等に振り替える」というような指示がなくても、債務者が経営破綻しているような文言があれば、当然に売掛金等を「破産更生債権等」へ振り替えます。
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