目次
約束手形 - 小切手とどう違うの?
| 社長 | 白柴くん、最近、久しぶりに売上代金を手形で払ってらったんだが、小切手とは何が違うんだっけ? |
| 経理 | 手形は「将来の支払を約束する証書」です。一方、小切手は「今すぐ支払するための証書」です。ここはしっかり押さえたいポイントですね。 |
| 投資家 | 手形は信用取引の道具だな。小切手と違って、すぐに現金化できない。そこを勘違いすると危ない。 |
| 社長 | へぇ〜奥深いんだな…。で、種類もあるって聞いたぞ? |
| 経理 | はい。法律上は「約束手形」と「為替手形」に分類できます。まずは、売った人と買った人の2者だけでやり取りをする約束手形からいきましょう。 |
| 社長 | よし、頼む! |
| 経理 | 約束手形は、買った側(振出人)が、「この日に、あなたにお金を払います」と約束して発行する手形です。支払期日になると、振出人が銀行を通じて、受取人に代金を支払います。 |
| 投資家 | 期日に銀行へ持っていっても、すぐ入金されないのもポイントだな。取立依頼しても、その場でお金は入らない。 |
| 社長 | えっ、すぐ入らんのか😢 じゃあ仕訳はどうなる? |
| 経理 | 取立依頼の時点ではまだ仕訳しません。入金が実際に行われた瞬間に初めて仕訳します。これは小切手と大きく違うところですね。 |
| 社長 | なるほどな〜、待たなきゃいけないわけか。勉強になるぞ! |
為替手形 - “他人に払わせる”ってどういうこと?
| 社長 | 約束手形はわかった。じゃあ、次は為替手形だな。こっちはどういう仕組みなんだ? |
| 経理 | 為替手形は、振出人が「自分ではなく引受人に支払わせる」タイプの手形です。3者出てくるのが特徴ですね。 |
| 投資家 | そう。振出人A社・引受人B社・受取人C社の3者構造だ。ここを押さえないと混乱するぞ。 |
| 社長 | 3者も出てくるのか💦 どう動くんだ? |
| 経理 | 例えばA社がC社に払うべき買掛金があるとします。でもA社はB社に対する売掛金も持っている。そこでA社は為替手形を振り出して、B社に引受を頼むんです。 |
| 社長 | え、B社に?なんでだ? |
| 投資家 | A社はB社に債権がある。だから「お前がオレの代わりにC社へ払ってよ。その代わりオレに払うはずの金は帳消しでいいだろ?」って構造だ。 |
| 経理 | つまり、引受をしたB社は、A社に対する買掛金がなくなり、その代わり**支払手形(新しい債務)**が発生します。 |
| 社長 | おお…なんかトリッキーだな😳 |
| 経理 | そしてその引受済みの手形をA社がC社に渡すことで、C社に対する買掛金を決済したことになります。 |
| 投資家 | ただし、C社はB社の支払能力を信用して手形を受け取るわけじゃない。B社が払えなかったら、振出人A社が支払う義務があるからだ。 |
| 社長 | なるほど!最後はA社が責任を持つから、C社も安心して受け取るわけか🐾 |
| 経理 | はい。仕訳も、A社は売掛金と買掛金の両方を消して、C社は売掛金を消して受取手形を計上し、B社は買掛金を消して支払手形を計上します。 |
| 社長 | いや〜、為替手形ってこうやって見ると奥が深いなあ! |
特殊な為替手形 - 自分で自分に振り出すの⁉
| 社長 | なあ、白柴くん。さっきの話で3人出てくるって言ってたけど、2人だけのパターンもあるって聞いたぞ? |
| 経理 | はい、それが「自己宛為替手形」と「自己指図為替手形」です。ちょっと変わった使い方なんですけど、実務でもたまに見かけます。 |
| 投資家 | 自己宛? 自己指図? なんかややこしそうだな。 |
| 経理 | まず「自己宛為替手形」は、振出人と名宛人(引受人)が同一人物、つまり自分で自分に支払を命じる手形です。 |
| 社長 | えっ、自分で自分に払うの?それ意味あるのか? |
| 経理 | たとえば、A社がA社自身を名宛人にして手形を振り出し、それをB社に渡すんです。B社はその手形を受け取って、A社に対して請求できるようになる。 |
| 投資家 | つまり、A社が「自分で支払うよ」って宣言した手形を、B社に渡してるってことか。 |
| 経理 | そうです。信用力のある会社がこういう形で手形を発行すると、受取人にとっては「確実に支払われる」って安心感があるんです。 |
| 社長 | なるほどな〜。で、もう一つの「自己指図」ってのは? |
| 経理 | 「自己指図為替手形」は、振出人と受取人が同じです。A社がA社自身を受取人にして、B社に引受を依頼する。 |
| 投資家 | つまり「B社、オレに払ってくれ」って手形を自分で作って、自分で受け取るってことか。 |
| 社長 | なんか一人芝居みたいだな…! |
| 経理 | まあ、そう見えますけど、これも資金調達や信用補完のために使われることがあるんですよ。特に大企業が個人や小規模事業者に対して使うこともあります。 |
| 社長 | うーん、為替手形って奥が深いどころか、迷路みたいだな…! |
自己振出手形の受取り - 自分で振り出した手形が戻ってきた!?
| 社長 | なあ、経理くん。さっきの話で思ったんだけど、もし前に自分が振り出した手形が、ぐるっと回ってまた自分のところに戻ってきたらどうなるんだ? |
| 経理 | それが「自己振出手形」です。実は、そういうこともたまにあるんですよ。 |
| 投資家 | たとえば、A社がB社に手形を振り出して、それがC社、D社と回って、最終的にまたA社に戻ってくる…って感じか。 |
| 経理 | はい。そのとき、約束手形なら「支払手形勘定」を消去します。だって、自分が支払うはずだった手形が自分の手元に戻ってきたら、もう支払う相手がいないですからね。 |
| 社長 | なるほど!自分に請求しても意味ないもんな! |
| 経理 | 一方で、為替手形の場合はちょっと違います。たとえ自分が振り出した手形でも、他人宛てであれば、それを受け取った時点で「受取手形」として処理します。 |
| 投資家 | つまり、「誰が振り出したか」じゃなくて、「誰に支払われるか」がポイントってことか。 |
| 経理 | その通りです! |
| 社長 | うわ〜、手形ってほんとに生き物みたいだな…。回って戻って、また別の意味を持つなんて! |
| 投資家 | でも、こういう特殊ケースを知ってると、実務でも試験でも強いぞ。 |
| 経理 | はい。仕訳のポイントを押さえておけば、混乱せずに対応できますよ! |
手形の割引及び裏書譲渡 - 早く現金化?それとも回す?
| 社長 | 白柴くん、この手形、満期まで待てないんだよ💦 どうにかならんかね? |
| 経理 | そういうときは割引か裏書です。手形の割引は、銀行で手形を現金化することですが、割引料が差し引かれます。急ぎの場合の資金繰り用の手段ですね。 |
| 投資家 | ただし、割引をすると万一不渡りが出た場合に銀行へ支払う遡及義務(保証債務)が発生するから、その見積額を負債として計上しないといけないな。 |
| 社長 | なんか面倒くさそうやな。もう1つの「裏書」ってのは? |
| 経理 | 裏書は手形を他社への支払いに回す方法です。ただし裏書しても最終的な支払責任(遡及義務)は残るため、同様に保証債務を計上します。 |
| 社長 | 回せば終わりじゃないんだな😳 |
★手形の割引の仕訳
| 割引時 | 現金預金 ×× 手形売却損 ×× 保証債務費用 ×× | 受取手形 ×× 保証債務 ×× | 新たに手形の遡及義務である保証債務が発生する。金融負債のため時価評価。 |
| 決済時 | 保証債務 ×× | 保証債務取崩益 ×× | 逆仕訳ではない。 |
白柴経理保証債務の発生に伴う保証債務費用は、「手形売却損」に含める場合もあります。問題文の指示に従いましょう。
★手形の裏書の仕訳
| 裏書時 | 買掛金 ×× 保証債務費用 ×× | 受取手形 ×× 保証債務 ×× | 新たに手形の遡及義務である保証債務が発生する。金融負債のため時価評価。 |
| 決済時 | 保証債務 ×× | 保証債務取崩益 ×× | 逆仕訳ではない。 |
不渡手形 - 支払われない手形の末路
| 社長 | 取引先の手形が不渡になったって聞いたんだが…これマズい? |
| 経理 | はい。支払期日に銀行が支払を拒否した状態です。最悪の場合、相手先は銀行取引停止になります。 |
| 投資家 | 不渡が出た手形はもう現金化できない紙だ。 |
| 社長 | そんな…😢 |
| 経理 | なので受取手形を取り消して、貸倒関連の処理をします。 |
| 投資家 | 手形は信用で成り立ってる。信用が切れたらアウトってことだ。 |
営業外手形 - 手形にも本業・非本業がある!
| 社長 | 手形って全部同じじゃないのか? 営業とか営業外とかあるって聞いたが? |
| 経理 | はい。営業外手形は、本業の売買以外の取引で生じる手形のことです。 |
| 投資家 | たとえば土地の取得に際して、手形を振り出したみたいなケースだな。この場合は、「営業外支払手形」だ。 |
| 社長 | 本業じゃないから「営業外」ってことか! |
| 経理 | そうです。仕訳も営業とは区別して処理します。 |
| 社長 | 手形も、どこから出たかで扱いが変わるんだな🐾 |
金融手形 - モノの売買なしで使う“おカネの手形”!-
| 社長 | じゃあ金融手形ってのは、そもそも何に使う手形なんだ? |
| 経理 | はい。実際の商品の売買はなく、純粋におカネの貸し借りに使う手形です。 |
| 投資家 | 借りた側が、借入額と同額の約束手形を振り出して、貸した側に渡す仕組みだな。 |
| 社長 | その手形が、そのまま返済の証拠になるわけか。 |
| 経理 | そうです。手形の期日が、そのまま借入金の返済日になります。 |
| 投資家 | そして期日になったら、貸した側がその手形を取り立てて返済を受ける。 |
| 社長 | なるほど。でも、帳簿ではどう処理するんだ? |
| 経理 | 仕訳では「手形借入金」「手形貸付金」を使います。 |
| 投資家 | 決算書での表示は、「短期借入金」「長期借入金」「短期貸付金」「長期貸付金に振り替えるのが基本だな。 |
| 社長 | なるほど。ところで、利息はどうなるんだ? |
| 経理 | はい。手形貸し付けの場合は、利息込みで手形額面に含めることが多いです。そのため「受取利息」として収益処理し、決算で未到来の分は前受に振り替えます。 |
| 投資家 | 借りた側は当然、支払利息として費用処理することになる。 |
| 社長 | 利息込みの額面が手形貸付金になって、利息は受取利息にするんだな。金融手形って、危ない手形じゃなくて、おカネの貸し借り専用の手形だったんだな。 |
電子記録債権・電子記録債務 - 紙の手形からデジタルへ!
| 社長 | さっきの金融手形の話を聞いてたらさ…もっと安全で便利なやつ、ないのか?紙じゃなくてさ。 |
| 経理 | ありますよ!そこで登場するのが電子記録債権です。手形をデジタル化したような債権で、記録機関にオンライン登録されます。 |
| 社長 | デジタル手形みたいな感じか!時代はITだな~🐾 |
| 投資家 | それだけじゃない。電子記録債権は分割して譲渡できるし、取立手続が不要。紙よりも圧倒的に使いやすい。 |
| 社長 | えっ、分割できるの!?なんか強そう…! |
| 経理 | 強いかどうかは別として💦、割引もできますし、期日前の現金化が可能なのは手形と同じです。 |
| 投資家 | 電子記録債権があるってことは、当然支払側の電子記録債務もある。受取手形と支払手形の関係と同じと思えばいい。 |
| 社長 | なるほど、デジタル版の「受取」「支払」ってわけか! |
| 社長 | ところで、電子記録債権に切り替わったら、仕訳はどうなるんだ? |
| 経理 | 例えば、売掛金で発生したものが電子記録債権に変わったら、売掛金 → 電子記録債権へ振替えます。 |
| 投資家 | 仕入の未払金なら、電子記録債務に振り替えだ。 |
| 経理 | ただし、貸付金・借入金は振り替えない特例があります。実務対応報告のルールです。 |
| 社長 | 例外があると混乱するんだよなぁ😢 |
| 投資家 | 社長の混乱に合わせて基準は動かない。あきらめろ。 |
| 社長 | き、厳しい!でもわかったよ…デジタル化って結構奥が深いんだな! |

