【シバ犬🐾簿記論】現金預金

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現金 - 小切手なんかも“現金”です!

社長白柴くん、うちのB/Sにのってる“現金”だけど、こんなに金庫の中にあったっけ?
経理社長、それはたぶん“小切手”も入ってるからなんですよ。簿記上の「現金」は、すぐにお金として使えるものをまとめたグループなので、他人振出小切手も「現金」として扱うんです。
社長え、小切手も現金!? あれって銀行に行かないと使えないのに?
経理そうなんですけど、「すぐに換金できる=現金同等物」なんです。だから、他人が振り出した小切手を受け取ったときはこう仕訳します。👉(借)現金××/(貸)売掛金など××
投資家逆に自分で振り出した小切手(自己振出小切手)を受け取った場合は“当座預金”だな。
経理そのとおりです!振り出した時に当座預金で処理していますので、それを回復させるイメージですね。
社長ふむふむ。じゃあ、他人の小切手=現金、自分の小切手=当座預金、って覚えとけばいいんだな🐾
経理ちなみに、「現金」には含まれないものもあります。たとえば、収入印紙・郵便切手・期限のまだ来ていない小切手などは、すぐにお金にならないので「現金」じゃありません。
社長へぇ~、“換金できるかどうか”がポイントなんだな。
投資家ふむ。金庫の中は色んなものがあるが、単純に全部現金化してはいけないということだ。
社長なるほど、会計上の現金は単純じゃないということだな。

金庫の中によく入っているもの一覧

項目現金備 考
外貨前T/Bの金額は取得時レートで換算されているので、期末換算(CR換算)する。
他人振出小切手得意先が振り出した小切手。銀行に預け入れるまでの状態を「未預入小切手」という。
配当金領収証収益勘定は「受取配当金」。  注)その他資本剰余金が原資の場合(有価証券参照)。
期限到来社債利札期限到来を読み間違えないこと。収益勘定は「有価証券利息」。受取利息ではない。
送金為替手形銀行振込の小切手で、送金手段として利用される。
普通為替証書銀行振込の小切手で、送金手段として利用される。
振替口座払出証書ゆうちょの支払い請求書で、送金手段として利用される。
自己振出小切手×当座預金」で処理。他人振出小切手と混同しやすい。
先日付小切手×受取手形」で処理。  注)貸倒引当金の設定対象になる
収入印紙×未使用分は「貯蔵品」で処理。通常、購入時に「租税公課」。
切手・はがき×未使用分は「貯蔵品」で処理。通常、購入時に「通信費」。
借用証書×貸付金」で処理。取引先への金銭貸付けによる証書。
譲渡性預金の預金証書×有価証券」で処理。他人に譲渡できる特別な定期預金証書のこと。

※前T/Bに「貯蔵品」がすでに計上されている場合は、基本は前期末残高分であるため、いったん費用化して、当期の未使用分を貯蔵品に振り替える。三分法の棚卸資産の「しーくりくりしー」と同じ考え。

現金過不足 -“財布の謎”を追え!

社長白柴くん、今日の実際の現金が1,000円少ないんだけど、泥棒でも入ったか!?
経理泥棒は入ってないですが、ちょっとすぐには原因がわからないですね。まずは「現金過不足」勘定で処理しましょう。帳簿と実際が合わないときに一時的に使う科目です。
社長一時的?
経理はい。例えば、帳簿上は10,000円、実際は9,000円なら、👉(借)現金過不足1,000/(貸)現金1,000 とします。
投資家で、後で原因がわかったら、正しい勘定に振り替えるんだよな。例えば、経費の計上漏れなら「旅費交通費」へ振り替える。
社長じゃあ、原因が分からないまま期末になったら?
経理その場合は「雑損失」または「雑収入」で処理します。要は“行方不明の金額の最終処理”ですね。
社長うちの財布、ミステリーだったんだな……。

小口現金 - 定額制の“おつかい財布”

社長ところで、うちの経理部で「小口現金」って財布があるけど、あれ何に使ってるんだ?
経理日常的な少額支払のための現金です。切手代とか交通費とか、毎回振込するのは面倒ですからね。
社長それってちゃんと管理できてるの?
経理定額資金前渡法(インプレスト・システム)」という方法で管理してます。あらかじめ一定額を前渡して、使った分だけ補充するんです。
社長なるほど、ガソリンの“満タン法”みたいなもんか!
経理まさに!小口現金を補給する時は「小口現金××/当座預金××」、経費精算時に使った分を記録して、再び満タンにします。
投資家つまり、常に決まった額をキープしておく“社内財布”。効率的で透明性も高くなるな。
社長よし、俺もおやつ代の小口現金制度を導入しようかな!

当座預金 - ズレの正体はタイミング!

当座照合表

社長白柴くん、うちの帳簿では当座預金が1,200,000円なんだけど、銀行の通帳だと1,250,000円なんだ。どっちが正しいんだ?
経理実は、どちらも基本的には“正しい”んです。会社の帳簿と通帳では、記録のタイミングが違うんですよ。
投資家つまり、銀行と会社で“同じ取引”でも処理される日がズレるってことか。
経理そのとおりです。そのズレを整理して、両者を一致させるための表を「銀行勘定調整表」といいます。

銀行側の修正

社長なるほど。じゃあ、具体的にどんなズレがあるんだ?
経理 まず、代表的なズレは次の3つです。① 未取立小切手(受取小切手を銀行に預けたが、まだ取立てられていない) ② 未取付小切手(振出した小切手が、まだ銀行で処理されていない) ③ 時間外預入(銀行の営業時間外に預けた現金が、翌日処理になる)です。
投資家どれも“銀行側の処理が遅れてる”パターンだな。
経理そうです。こういう場合は、仕訳はいりません。あくまで銀行側がまだ動いていないだけなので、銀行勘定調整表では銀行側だけを修正すればOKです。
社長なるほど、帳簿に手を加えるんじゃなくて“調整表で合わせる”んだな。

会社側の修正

社長でも、全部が“仕訳不要”ってわけじゃないんだろ?
経理はい。さきほど、基本的には正しいといいましたが、会社側の誤処理や未記帳の場合もあります。また、銀行側から連絡がきていない場合もあったりします。こうした場合は、仕訳が必要です。代表例はこのとおりです👇
内容原因例処理修正仕訳例
会社の誤記帳10,000円を100,000円と記帳会社側修正誤差分を修正仕訳
連絡未通知銀行側で引落済だが、会社側ではその通知を受けていない会社側修正未通知分を修正
未渡小切手小切手を振り出したが相手に渡していない会社側修正借:当座預金 ×× /貸:買掛金 ××
経理つまり、“銀行側は正しく処理されいるのに、うちの帳簿がまだ反映されていない”ケースは、会社側の修正が必要なんです。
社長ふむふむ、これで会社側のズレも整理できるな。

銀行間調整表でスッキリ!

経理では、具体的に照合してみましょう。会社帳簿:1,200,000円、銀行残高:1,250,000円。
社長お、50,000円ズレてるな。
経理 まず銀行側の調整を考えます。銀行残高に対して、銀行でまだ処理されていない入出金を整理します。今回の銀行側の未処理は次の通りです。
未取立小切手 20,000円:受取小切手を預けたが銀行でまだ取立てられていない → 銀行残高に加算
未取付小切手 10,000円:当社が振り出した小切手でまだ相手が銀行に呈示していない → 銀行残高から減算
時間外入金 72,000円:銀行の営業時間外に入金したが銀行で未処理 → 銀行残高に加算
経理よって調整後の銀行残高= 1,250,000 + 20,000 − 10,000 + 72,000 = 1,332,000円
投資家なるほど。次に会社側の修正をするんだな。
経理はい。会社側(帳簿)には未記帳や誤記がありました:
銀行手数料 2,000円:銀行が自動的に差引済だが会社未記帳 → 帳簿で当座預金を減額(仕訳が必要)。
誤記訂正 10,000円:帳簿で当座預金を過大に記載していたので訂正 → 当座預金を減額(仕訳が必要)。
経理よって修正後の帳簿残高=1,200,000 − 2,000 − 10,000 = 1,188,000円
社長まだ合わないな……差があるぞ。
経理そうなんです。この時点ではまだ一致しません。もしここで一致しない場合、まだ別のズレが隠れていることになります。では、残りの差額 144,000円(1,332,000 − 1,188,000)を埋めるための項目が会社側にあると仮定します。未通知の利息入金 144,000円:銀行側で利息が入金されていたが、会社に通知が来ていないため未記帳 → 帳簿で当座預金を増額(仕訳が必要)。
経理調整後の帳簿残高= 1,188,000 + 144,000 = 1,332,000円
投資家これで調整後の両者残高は 1,332,000円 に一致!照合完了だ。

両者区分調整表

会社側金額(円)銀行側金額(円)
残高(帳簿)1,200,000残高(銀行帳)1,250,000
加算:未通知の利息入金(会社未記帳)+144,000加算:未取立小切手(銀行未入金)+20,000
減算:未記帳手数料(会社未記帳)△2,000加算:時間外預入(銀行未反映)+72,000
減算:誤記訂正(当座預金過大記載)△10,000減算:未取付小切手(発行済で銀行未引落)△10,000
調整後残高(帳簿)1,332,000調整後残高(銀行)1,332,000

当座借越 - 相殺はダメ、表示は短期借入金へ

赤字の小切手

社長よっしゃ!仕入れの支払いは当座預金でガンガンいくぞ!残高が足りなければ銀行が立て替えてくれるんだよな?ワイルドに使ってOKだ!😎
経理ちょっと待ってください社長。それは当座借越の話です。当座借越は銀行と契約しておき、残高不足時に銀行が一時的に立て替えて支払ってくれる仕組みです💦。
社長便利だな!入金があったら自由に使っていいの?
経理入金があった場合は、まず優先的に当座借越の返済に充当されます。預金に入ったお金は借越の穴埋めに回るんです。そのとおり
投資家そこを見落とすと財務表示が狂う。当座借越は短期借入金としてB/Sに表示するのが原則だ。相殺は許されない。
社長相殺ってどういうこと?😅
経理例えば、甲銀行に預金があり、乙銀行で借越がある場合、異なる銀行の預金と借越を帳簿上で相殺してはいけません。帳簿上で相殺されているときは、それぞれを当座預金短期借入金(当座借越)に分けて表示します。
投資家監査や投資家はそこを必ず見る。表示を誤ると信用に関わるぞ。

決算での表示と具体例

社長じゃあ決算ではどう見せればいいんだ?見栄えよくしたいんだけど🐶
経理決算では当座借越を「短期借入金」に組み替えて表示します。これはB/Sの表示科目に合わせるためです。帳簿上の相殺がある場合は、それぞれを元に戻して表示します。
社長組み替え仕訳ってやつ?面倒だなあ。
経理表示のための組み替え仕訳は説明上よく示されますが、実務では表示を合わせることが目的で、帳簿上の仕訳が必須というわけではありません。
投資家数字で示すとどんな感じだ?

全体イメージ

  • 現金:5,000
  • 甲銀行 当座預金:20,000(預金あり)
  • 乙銀行 当座借越:3,000(借越)

B/S表示(入金前)

  • 現金及び預金 = 現金 5,000 + 当座預金(甲)20,000 = ¥25,000
  • 短期借入金 = 当座借越(乙)3,000

もし乙銀行に¥4,000入金したら

  1. 入金はまず当座借越の返済(3,000)に充当される。
  2. 残り1,000が当座預金に反映される。
    → 結果:当座借越は0、当座預金(甲+乙合計)は21,000(甲20,000+乙口座1,000)+現金5,000で現金及び預金合計は26,000になる。
経理ポイントは3つです。①当座借越は銀行との一時的借入、②入金は優先的に借越返済に充当、③B/Sでは当座借越を「短期借入金」として表示します。
社長なるほど、入金があってもまず借金返済か…勉強になった🐾😅
投資家表示を誤ると外部評価に直結する。数字と表示は正確に管理しろ。
白柴経理

当座借越は、銀行側から見ると、残高証明書残高が「当座貸越残高」となっています。

定期預金・積立預金 -1年ルールの長期性預金

社長白柴くん、今年もけっこう定期預金作ったな! あれって全部「現金及び預金」でいいよな?
経理社長、定期預金はワンイヤールールで判定します。満期まで1年を超えるようなものは、投資その他の資産の「長期性預金」に入れるんですよ!
社長えっ? 同じ定期預金なのに場所が違うの?
投資家会計では、「1年以内にお金に戻るか」が、流動か固定かの分かれ目なんだぞ。
経理そのとおりです。決算日の翌日から満期までが1年以内なら流動資産で「現金及び預金」、1年超なら固定資産(投資その他の資産)で「長期性預金というルールで区分します。
社長なるほど、同じ預金でも「いつ戻ってくるか」で扱いが変わるんだな!じゃあ、毎月積み立てている積立預金も同じ考え方でいいのか?
経理はい、基本は同じです。積立預金の場合は、まず、全部で何回積み立てる契約かを確認します。
社長今回は、毎月3,000円を全20回だったな。
経理では、次に、当期末までに何回の積立が終わっているかを計算します。積立残高は27,000円なので、27,000 ÷ 3,000 = 9回です。
社長ということは、もう9回分は積み立て終わっているわけか。
経理そのとおりです。残りの積立回数は、20回 − 9回 = 11回、つまり11か月です。
社長11か月なら、1年以内に満期が来るな。
経理はい。1年以内に満期が到来するため、この積立預金は流動資産の「現金及び預金」として表示します。もし、1年を超えていたら固定資産(投資その他の資産)で「長期性預金ということになります。
社長なるほどな~。定期預金も積立預金も、「いつ満期が来るか」で区分が決まるんだな。

預金の一覧表

項目基準表示区分表示科目
定期預金1年以内流動資産現金及び預金
1年超投資その他の資産長期性預金
積立預金1年以内流動資産現金及び預金
1年超投資その他の資産長期性預金

「現金預金」の本試験ポイント

現金

  • 後T/B残高は、「期末実際有高」です。これはすぐに書き込むことができます。
  • 外貨がある場合は「CR換算」するのを忘れないようにします。

現金過不足

  • 前T/Bにすでに現金過不足が計上されている場合は、期中で現金の実際残高への調整は終わっているため、現金勘定は動きません。決算整理では単純に、現金過不足を消す方向へもっていき、判明事項の修正仕訳をして、差額を雑損益にします。

当座預金

  • 後T/Bは、「両者区分調整法の調整後残高」。上じゃなくて、下にある方です。
  • 「まだ取り立てられていない」の文字だけで、安易に「未取立小切手」と判断しない。
    • 「当社が仕入先へ振り出した小切手が、まだ取り立てられていない。」…未取付小切手。銀行側をマイナス。
    • 「当社は得意先から受け取った小切手を銀行へ預け入れたが、まだ取り立てられていない。」…未取立小切手。銀行側をプラス。

当座借越

  • 銀行が2行以上ある場合、前T/Bの当座預金は、A銀行の当座預金(+)とB銀行の当座借越(△)が相殺されているパターンが多いです。銀行残高調整表をそれぞれ作成して、「当座預金」と「当座借越(短期借入金)」をそれぞれ把握します。
  • 当座借越となっている銀行口座から振り出した小切手が未渡しである場合、当座預金の増加ではなく、短期借入金の減少として処理します。
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