第1話 固定資産
固定資産の取得形態 ~マシン導入だワン!~
| 社長 | 白柴くん、うちの工場に最新マシンを入れようと思うんだ!買う? もらう? それとも作る? |
| 経理 | 社長、固定資産の取得方法はいろいろあります。まず、“購入”の場合は、購入代金に運搬費や据付費などの「付随費用」を加えて取得原価とします。 |
| 社長 | なるほど、運ぶお金とか設置代も含めて“取得原価”なんだな! |
| 経理 | そうです。ただし、重要性が乏しい付随費用は加えなくてもいいです。これは重要性の原則でやりましたね。 |
| 社長 | じゃあ、“現物出資”でマシンをもらう場合は? |
| 経理 | その場合は、受け取ったマシンの「公正な評価額」を取得原価にします。 |
| 社長 | ふむふむ。じゃあ、もし“自分たちで作る”なら? |
| 経理 | “自家建設”ですね。その場合は、「製造原価」に基づいて取得原価を決定します。 |
| 社長 | 借金して建設した場合の利子は? |
| 経理 | そこが論点です!“原価算入説”では、稼働前の利子は取得原価に含めると考えます。費用収益対応の原則によるんですね。 |
| 投資家 | ただ、“原価不算入説”もあるんだな。利子はあくまで財務費用で、資産の価値を増やすわけじゃないって立場だ。」 |
| 社長 | どっちにしても、お金の使い方ひとつで“資産の金額”が変わるって奥が深い!」 |
交換と贈与 ~交換と贈与のヒミツ~
| 社長 | 黒柴さん、ちょっといい? うちの会社のこの土地と、隣にある黒柴さんの土地交換してくれない? |
| 投資家 | おお交換か。同じ“土地同士の交換”なら投資の継続性があるんだよな。だから、交換による損益は認識しないんだな。 |
| 経理 | そうですね。その場合は、譲渡資産の簿価をもって取得原価としますね。 |
| 社長 | へ~、そうなんだ。じゃあ、“会社の株と土地を交換”したら? |
| 経理 | それは“異種資産の交換”なので、投資をいったん清算したことになります。譲渡資産の株の時価を取得原価にして、交換損益を認識します。 |
| 投資家 | 時価が基準になるってことは、結構シビアだよな。 |
| 社長 | ところで、タダでマシンをもらったら? |
| 経理 | それが“贈与による取得”です。2つの考え方があります。①取得原価ゼロ説と②公正評価額説です。 |
| 投資家 | ゼロ説だと、貸借対照表に載らなくなるし、減価償却もできなくなる。だから、実務では公正評価額説の方が合理的だ。 |
| 社長 | ただし、公正評価額で計上すると“受贈益”という利益が出ちゃうんだよね? |
| 経理 | そうです。貨幣性資産の裏付けがない“未実現利益”になる点が問題です。 |
減価償却 ~費用配分と4つの方法~
| 社長 | マシンを買ったけど、何年も使うんだから、費用は一度に出さなくていいんだよね? |
| 経理 | そのとおりです。固定資産は“費用性資産”。減価償却によって取得原価を耐用期間にわたって配分します。 |
| 社長 | つまり、“ちょっとずつ費用にする”感じ? |
| 経理 | そうです。これで費用収益対応の原則を実現します。 |
| 投資家 | ちなみに減価償却には4つの方法がある。定額法・定率法・級数法・生産高比例法だ。 |
| 社長 | おお、4つも! |
| 経理 | 定額法は毎期同じ額。定率法は初期に多く、後で少なく。保守的な会社は定率法を好む傾向があります。 |
| 投資家 | 生産高比例法は、生産量に応じて費用を配分する方法。合理的だけど、使える資産は限られてる。 |
| 社長 | へぇ~、減価償却って、単なる“費用化”じゃなくて“お金の管理術”なんだね! |
| 経理 | そうです。自己金融効果もありますから、資金繰りにも役立ちます! |
資産の貸借対照表価額
五 貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の
取得原価
を基礎として計上しなければならない。
資産の取得原価は、資産の種類に応じた
費用配分の原則
によって、各事業年度に配分しなければならない。有形固定資産は、当該資産の
耐用期間
にわたり、定額法、定率法等の一定の
減価償却の方法
によって、その
取得原価
を各事業年度に配分し、無形固定資産は、当該資産の
有効期間
にわたり、一定の
減価償却の方法
によって、その取得原価を各事業年度に配分しなければならない。繰延資産についても、これに準じて、各事業年度に
均等額以上
を配分しなければならない。
無形固定資産 ~「目に見えない資産!?」~~
| 社長 | うちの“商標登録”も資産になるの? |
| 経理 | もちろんです。“無形固定資産”といいます。形はないけど、将来の収益に貢献するものです。 |
| 投資家 | 無形資産も“費用性資産”だから、減価償却をする。通常は定額法だな。 |
| 社長 | 減価償却累計額って出すの? |
| 経理 | いえ、無形資産は直接控除法です。権利が消滅したら再取得が難しいので、取得原価を示す間接控除法の意味が薄いんです。 |
第2話 繰延資産
繰延資産の意義 ~未来に効く費用とルールの変化~
| 社長 | 白柴くん、創立費や開業費ってもう払ってるのに、なんで資産になるんだ?💸 |
| 経理 | はい、それらは「繰延資産」です。本来は費用ですが、効果が将来にも及ぶと期待されるため、いったん資産として計上し、期間配分していくんです。 |
| 社長 | へぇ、もうサービスは受け終わってるのに資産になるのか。不思議だな。 |
| 経理 | そうなんです。支出と役務提供は終わっていても、その効果が将来の収益に貢献するため、「未来に効く費用」として扱うイメージです。 |
| 社長 | なるほど。じゃあ何でも繰延資産にすれば利益増えるじゃん?😎 |
| 経理 | それはダメです!繰延資産にできるのは、①支出済み②役務提供済み③効果が将来に及ぶ、という3条件を満たす場合だけです。 |
| 社長 | ちゃんと条件があるんだな。ところで、昔からこんなルールだったのか? |
| 経理 | もともとは旧商法で、繰延資産にできる項目が細かく限定されていました。創立費や開業費など、決められたものだけです。 |
| 社長 | 今は違うのか? |
| 経理 | はい。平成18年の会社計算規則で「適当と認められるもの」と柔軟な表現に変わりました。 |
| 投資家 | ただし実務では混乱を避けるため、当面は「株式交付費・社債発行費等・創立費・開業費・開発費」の5つに整理されています。 |
| 社長 | なるほど、昔のルールをベースにしつつ、今風に整理した感じか。 |
| 経理 | その通りです。繰延資産は「すでに使ったけど将来にも効く費用」を適切に配分する仕組みであり、時代に合わせて運用されている会計項目なんです。 |
条文穴埋問題
将来の期間に影響する特定の費用とは
D 将来の期間に影響する特定の費用 は、次期以後の期間に 配分 して処理するため、 経過的 に貸借対照表の資産の部に記載することができる。(注15)
〔注15〕 将来の期間に影響する特定の費用について
「将来の期間に影響する特定の費用」とは、 既に代価の支払が完了 し又は 支払義務が確定 し、これに対応する 役務の提供を受けた にもかかわらず、その 効果が将来にわたって発現するものと期待される費用 をいう。
これらの費用は、その効果が及ぶ数期間に合理的に 配分 するため、 経過的 に貸借対照表上 繰延資産 として計上することができる。
繰延資産の会計処理の見直しに関する考え方
当委員会では、これまで行われてきた繰延資産の会計処理を踏まえ、以下の考え方に基づき、必要な範囲内で見直しを行うこととした。
(1) 繰延資産の考え方については、企業会計原則注解(注15)に示されている考え方(
すでに代価の支払が完了
し又は
支払義務が確定
し、これに対応する
役務の提供を受けた
にもかかわらず、その
効果が将来にわたって発現
するものと期待される費用 )を踏襲する。
(2) 検討対象とする繰延資産の項目は、原則として、旧商法施行規則で限定列挙されていた項目(ただし、会社法において廃止された建設利息を除く。)とする。これは、「繰延資産の部に計上した額」が剰余金の
分配可能額
から控除される(計算規則第158条第1号)ことなどを考慮したものである。
この結果、本実務対応報告では、以下の項目を繰延資産として取り扱っている。
①
株式交付費
②
社債発行費
等(
新株予約券
の発行に係る費用を含む。)
③
創立費
④
開業費
⑤
開発費
なお、これまで繰延資産とされていた社債発行差金に相当する額については、平成18年8月11日に公表された企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)において会計処理(社債金額から直接控除する方法)を定めており、本実務対応報告では、経過措置に関する事項を除き、取り扱わない。
(3) (略)
株式交付費 ~資金調達の裏にも“費用”あり?~
| 社長 | 白柴くん、新株を発行して資金を集めようと思うんだが、これって費用ってかかるの?💰 |
| 経理 | はい、かかります。新株発行や自己株式の処分に伴う株式交付費です。広告費、証券会社の手数料、登記の登録免許税などですね。 |
| 社長 | なるほど。それって経費扱い? |
| 経理 | 原則は支出時に費用処理(営業外費用)です。ただし、企業の拡大など資金調達目的の財務活動なら、繰延資産にして3年以内に定額法で償却できます。 |
| 社長 | おお、また出たな“未来に効く費用”! |
| 経理 | そうなんです。ただし、株式分割や無償割当てのようにお金を集めないものは繰延資産にできません。支出時に販管費として処理します。 |
| 投資家 | ふむ。ところで国際会計基準(IFRS)だと、株式交付費はどう扱うんだ? |
| 経理 | IFRSでは、株式交付費は資本取引に付随する費用として、資本から直接控除します。でも日本では、これまで通り費用処理(または繰延資産計上)を採用しています。 |
| 投資家 | なんで違うんだ? 資本取引なら資本から引けばいい気もするけど。 |
| 経理 | いい質問です。株主に払うわけではなく、資金調達のための財務費用だからです。損益計算書で費用として示すほうが、会社の業績をより正しく伝えられるんです。 |
| 社長 | なるほどな。お金を集めるのにも、“見えないコスト”があるわけだな。 |
| 投資家 | そうか、会社の規模拡大ってのは華やかに見えて、裏ではちゃんと費用も動いてるってことだな。 |
| 経理 | まさにそうです。ちなみに今は自己株式の処分費用も、株式交付費として繰延資産にできます。新株発行と同じ「募集株式の発行等」扱いになったからですね。 |
| 社長 | へぇ~、未来の資金を集めるためにも“繰延資産の力”が働いてるんだな。 |
条文穴埋問題
株式交付費の会計処理
株式交付費(
新株の発行
又は
自己株式の処分
に係る費用)は、原則として、
支出時に費用
(
営業外費用
)として処理する。ただし、
企業規模の拡大
のためにする
資金調達
などの
財務活動
(組織再編の対価として株式を交付する場合を含む。)に係る株式交付費については、
繰延資産
に計上することができる。この場合には、
株式交付
のときから
3年以内
のその効果の及ぶ期間にわたって、
定額法
により償却をしなければならない。
株式交付費とは、株式募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・株券等の印刷費、変更登記の登録免許税、その他株式の交付等のために直接支出した費用をいう。
なお、繰延資産に該当する株式交付費は、繰延資産の性格から、
企業規模の拡大
のためにする
資金調達
などの
財務活動
に係る費用を前提としているため、
株式の分割
や
株式無償割当て
などに係る費用は、繰延資産には該当せず、
支出時に費用
として処理することになる。また、この場合には、これらの費用を
販売費及び一般管理費
に計上することができる。
理論記述問題
Q.新株の発行に係る費用と自己株式の処分に係る費用を整合的に取り扱うのはなぜか?
A.会社法においては、新株の発行と自己株式の処分の募集手続は募集株式の発行等として同一の手続によることとされ、また、株式の交付を伴う資金調達などの財務活動に要する費用としての性格は同じであることから。
Q.株式交付費は損益取引に係る費用として処理するのはなぜか?(対価の支払いの観点)
A.株式交付費は株主との資本取引に伴って発生するものであるが、その対価は株主に支払われるものではないから。
社債発行費 ~借金にもコストがある?~
| 社長 | 経理くん、うちも社債を発行して資金を集めようと思ってるんだ!でも、広告費や手数料が結構かかるなぁ…。あれって、どう処理すればいいんだ? |
| 経理 | それが「社債発行費」です。原則は支出時に“営業外費用”として処理します。ただし、繰延資産に計上して、社債の償還までの期間にわたって償却することもできるんですよ。 |
| 社長 | ふむ、じゃあ“未来に効く費用”として分けて処理できるってことか。償却の仕方は? |
| 経理 | 基本は利息法です。ただし、継続して同じ方法を使う前提で、定額法も選べます。 |
| 投資家 | なるほど。社債発行費って、資金調達のためのコストなんだな。広告費とか、証券会社への手数料とか、印刷費とか…いろいろあるもんね。 |
| 経理 | そうですね。それらはすべて“社債発行のために直接支出した費用”です。ちなみに、新株予約権を発行する場合も、資金調達に関係するなら社債発行費と同じように繰延資産として扱えます。 |
| 社長 | 新株予約権って、あの“将来株を買える権利”のやつだよな?あれも償却するのか? |
| 経理 | はい。新株予約権の発行費は、発行時から3年以内に定額法で償却します。ただし、社債にセットでついてる場合は、まとめて社債発行費として処理します。 |
| 投資家 | つまり、昔みたいに“3年で消す”というルールじゃなくて、今は社債の償還期間全体で割り振るってことだね。 |
| 経理 | そうです。資金調達コスト全体を利息と合わせて考えることで、実質的な負担をより正確に期間配分できるんです。国際会計基準(IFRS)でも同じ考え方ですね。 |
| 社長 | 借金にもコストがある…まさに“お金を借りるためのお金”ってわけか。 |
| 投資家 | そうだね。投資家目線でも、こういうコストをどう処理してるかで企業の財務の透明性が見えてくるんだよ。 |
| 経理 | はい。だから社債発行費も、単なる“支出”じゃなく、“資金調達の構造の一部”として理解するのがポイントです。 |
| 社長 | よし、うちも“未来に効く借金”をちゃんと計画的に使っていくぞ! |
条文穴埋問題
社債発行費等の会計処理
社債発行費は、原則として、
支出時に費用
(
営業外費用
)として処理する。ただし、社債発行費を
繰延資産
に計上することができる。この場合には、
社債の償還までの期間
にわたり
利息法
により償却をしなければならない。なお、償却方法については、継続適用を条件として、
定額法
を採用することができる。
社債発行費とは、社債募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・社債券等の印刷費、社債の登記の登録免許税その他社債発行のため直接支出した費用をいう。
また、
新株予約権
の発行に係る費用についても、
資金調達
などの
財務活動
(組織再編の対価として新株予約権を交付する場合を含む。)に係るものについては、社債発行費と同様に
繰延資産
として会計処理することができる。この場合には、
新株予約権の発行
のときから、
3年以内
のその効果の及ぶ期間にわたって、
定額法
により償却をしなければならない。ただし、新株予約権が社債に付されている場合で、当該新株予約権付社債を一括法により処理するときは、当該新株予約権付社債の発行に係る費用は、
社債発行費
として処理する。
創立費 ~会社設立の出費はどう処理する?~
| 社長 | ふぅ~、やっと会社ができたな!設立までにけっこうお金がかかったよ。定款の作成費とか、登記費用とか、広告代とか…。 |
| 経理 | ですね。これらの費用は「創立費」と呼ばれます。会社の設立に直接かかった支出です。 |
| 投資家 | それって資産? それとも費用? |
| 経理 | 原則は「支出時に営業外費用」として処理します。でも、効果が将来に及ぶときは「繰延資産」に計上して、5年以内で定額法により償却できます。 |
| 社長 | じゃあ、繰延資産にすれば節税できるってこと? |
| 経理 | 節税というより、「効果が続く期間に費用を配分する」という考え方です。たとえば、創立事務所の賃料や登記の登録免許税も対象になります。 |
| 投資家 | なるほど。ちなみに、資本金から引いてもいいんじゃないの? |
| 経理 | 昔は会社法で可能でしたが、今は会計上、株主との資本取引ではないと考えられているので、原則は支出時に費用処理するんです。 |
| 社長 | つまり、会社設立のために使ったお金は「資本金」ではなく「創立費」として、費用または繰延資産で処理するってことか。 |
| 経理 | そのとおりです。会社が動き出すまでの“スタートアップ費用”ですね。 |
条文穴埋問題
創立費の会計処理
創立費は、原則として、
支出時に費用
(
営業外費用
)として処理する。ただし、創立費を
繰延資産
に計上することができる。この場合には、
会社の成立
のときから
5年以内
のその効果の及ぶ期間にわたって、
定額法
により償却をしなければならない。
創立費とは、会社の負担に帰すべき設立費用、例えば、定款及び諸規則作成のための費用、株式募集その他のための広告費、目論見書・株券等の印刷費、創立事務所の賃借料、設立事務に使用する使用人の給料、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、創立総会に関する費用その他会社設立事務に関する必要な費用、発起人が受ける報酬で定款に記載して創立総会の承認を受けた金額並びに設立登記の登録免許税等をいう。
開業費 ~お店OPENまでのドタバタ費用~
| 社長 | 会社を設立して、ようやく店がOPENするぞ!開業準備でいろいろお金使ったなぁ。オフィスの家賃、広告代、電話の契約、スタッフの給料まで…。 |
| 経理 | それらは「開業費」といいます。会社設立後、営業を始めるまでにかかった費用ですね。 |
| 投資家 | 創立費と似てるね。どう違うの? |
| 経理 | 創立費は“会社を作るまで”の費用。開業費は“営業を始めるまで”の準備費用です。扱いは似ていて、原則は支出時に営業外費用として処理します。 |
| 社長 | でも、繰延資産にできるんだよね? |
| 経理 | はい。その場合は、開業から5年以内で定額法により償却します。ちなみに、「開業のとき」には一部営業を始めた時点も含まれます。 |
| 投資家 | なるほど。販売費及び一般管理費として処理できるって聞いたけど? |
| 経理 | そうです。開業準備が営業活動と密接に関係しているため、実務上は「販管費」として処理してもOKです。 |
| 社長 | じゃあ、開業準備に使ったお金はぜんぶ開業費? |
| 経理 | そこは注意です。直接、開業準備に関係する支出に限られます。将来の効果があいまいな支出は含めません。 |
| 投資家 | なるほど、創立費と兄弟みたいな存在なんだな。 |
| 経理 | その通り。創立費が“会社を生む費用”、開業費は“会社を動かす準備費用”です。 |
条文穴埋問題
開業費の会計処理
開業費は、原則として、
支出時に費用
(
営業外費用
)として処理する。ただし、開業費を
繰延資産
に計上することができる。この場合には、
開業
のときから
5年以内
のその効果の及ぶ期間にわたって、
定額法
により償却をしなければならない。なお、「開業のとき」には、その営業の一部を開業したときも含むものとする。また、開業費を
販売費及び一般管理費
として処理することができる。
開業費とは、土地、建物等の賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、支払利子、使用人の給料、保険料、電気・ガス・水道料等で、会社成立後営業開始時までに支出した開業準備のための費用をいう。
開発費 ~夢の技術、開発の光と影~
| 社長 | ついにうちも新技術の開発に乗り出すぞ!未来のヒット商品をつくるんだ! |
| 経理 | その費用は「開発費」として扱います。新技術や新しい経営組織の導入、市場開拓などのために支出した費用ですね。 |
| 投資家 | じゃあ、研究に使うお金も開発費になるの? |
| 経理 | さすが社長!鋭いですね!研究段階のものは「研究開発費等に係る会計基準」の対象なので、「研究開発費」として、発生時に費用処理します。開発費とは区別されます。 |
| 社長 | ふむ。じゃあ開発費は、原則どう処理するんだ? |
| 経理 | 原則は支出時に費用処理(売上原価や販売費)ですが、繰延資産に計上して、5年以内の効果期間で定額法などで償却することもできます。 |
| 投資家 | ただし、毎年のように経常的に発生している開発費は、たとえ内容が開発に関するものであっても、繰延資産として計上することはできない。 |
| 社長 | なるほど。「毎年出ているかどうか」が分かれ目なんだな。よし、夢のマシン開発、全力でいくぞ! |
| 経理 | あと社長、ここまでの5つの繰延資産ですが…注意点があります。もし支出の効果が期待できなくなったときは、その未償却残高を一気に償却しなければなりません! |
| 投資家 | つまり、開発費の場合なら「この技術はもう使えない」となったら、残りの金額はすぐ費用にするんだな。 |
| 社長 | 開発の道は夢があるけど、リスクもあるってことか…。 |
| 経理 | ええ。未来への投資は“希望”ですが、会計上は“慎重さ”も大切なんです。 |
| 投資家 | なるほど、繰延資産って、会社の挑戦と現実の両方を映す鏡なんだな。 |
条文穴埋問題
開発費の会計処理
開発費は、原則として、
支出時に費用
(
売上原価
又は
販売費及び一般管理費
)として処理する。ただし、開発費を
繰延資産
に計上することができる。この場合には、
支出
のときから
5年以内
のその効果の及ぶ期間にわたって、
定額法
その他の合理的な方法により規則的に償却しなければならない。
開発費とは、新技術又は新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等のために支出した費用、生産能率の向上又は生産計画の変更等により、設備の大規模な配置替えを行った場合等の費用をいう。ただし、
経常費
の性格をもつものは開発費には含まれない。
なお、「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費については、
発生時に費用
として処理しなければならないことに留意する必要がある。
繰延資産の問題点 ~換金できない資産って大丈夫?~
| 投資家 | ところで白柴くん、繰延資産って“資産”って言うけど、現金に換えられないのに資産でいいの? |
| 経理 | いい質問です!繰延資産は換金価値のない擬制資産なんです。つまり、お金にはならないけれど、将来の収益に貢献する用役潜在力を持っているから資産とされています。 |
| 社長 | つまり、“希望を資産にしたもの”みたいな感じか…。夢の不動産だな😂 |
| 経理 | そんな感じです。ただし、換金価値がないぶん、財務健全性の観点から注意が必要なんです。 |
| 社長 | じゃあ、繰延資産にするかどうかは会社の自由?利益を好きに調整できるじゃん?😏 |
| 経理 | 実はそれが問題なんです!繰延資産は資産計上が任意。でも、乱用すると利益操作につながります。 |
| 投資家 | なるほど。繰延資産を多く計上すれば“儲かってるように”見せられるけど、実際は現金がないわけだ。 |
| 経理 | まさにその通り!だから、過剰な繰延計上は財務の信頼性を損なうんです。 |
| 投資家 | ところで、長期前払費用って似てない? |
| 経理 | 共通点は「費用を未来に配分している」こと。でも違いが3つあります。①長期前払費用はまだ役務を受けていないが、繰延資産はもう受けている。②長期前払費用には換金価値があるが、繰延資産にはない。③長期前払費用は強制計上だけど、繰延資産は任意計上です。 |
| 社長 | 繰延資産のほうが「見えない未来を信じるタイプ」の資産なんだな。信じるのはいいけど、ほどほどにな🐾 |
繰延資産の表示と注記 ~夢の置き場所と意味~
| 社長 | 白柴くん、開発費を繰延資産にした場合って、貸借対照表ではどう表示されるんだ? |
| 経理 | はい。繰延資産として計上する場合でも、B/Sでは「開発費」というように「~費」の名称で表示します。 |
| 社長 | 資産なのに「費」って付くのは、ちょっと不思議だな。 |
| 経理 | 繰延資産は少し特殊で、資産区分ですが名称は費用の形を取るんです。 |
| 社長 | じゃあ、損益計算書ではどこに出てくる? |
| 経理 | 原則は営業外費用ですが、開発費は例外です。開発費償却は、販売費及び一般管理費、または売上原価に表示します。 |
| 投資家 | 他の繰延資産とは扱いが違うんだな。 |
| 経理 | そうです。創立費償却や株式交付費償却、社債発行費償却などは、原則として営業外費用になります。 |
| 社長 | なるほど。開発費は、事業活動そのものに結びついているからなんだな。 |
| 経理 | その理解で問題ありません。 |
| 投資家 | ところで、開発費って、必ず繰延資産にしなきゃいけないのか? |
| 経理 | いいえ。繰延資産にするか、支出時に一括で費用処理するかは、会社の会計方針によります。 |
| 社長 | ということは、その方針はちゃんと説明しないといけないな。 |
| 経理 | はい。重要な場合には、注記が必要です。 |
| 投資家 | 注記には、具体的に何を書くんだ? |
| 経理 | 重要な会計方針等に係る事項として、たとえば「株式交付費は3年間で定額償却」「社債発行費は償還期間5年で定額償却」「開発費は支出時に全額費用処理」といった処理方法を記載します。 |
| 社長 | 数字だけじゃなく、考え方もセットで示すわけだな。 |
| 経理 | そのとおりです。繰延資産は、会社の判断によって結果が変わりやすい分野ですから。 |
| 投資家 | なるほど。注記を見ると、その会社の姿勢が分かるんだな。 |
| 経理 | はい。繰延資産は、B/Sでは「数字の置き場所」を、注記では「処理の約束事」を示すものなんです。 |
| 社長 | よし。挑戦も判断も、きちんと説明できる会社でいこう。 |
繰延資産の表示区分
| B/S | P/L | ||
|---|---|---|---|
| 表示区分 | 表示科目 | 表示区分 | 表示科目 |
| 繰延資産 | 創立費 | 営業外費用 | 創立費償却 |
| 開業費 | 原則:営業外費用 販売費及び一般管理費 | 開業費償却 | |
| 株式交付費 | 営業外費用 | 株式交付費償却 | |
| 社債発行費 | 営業外費用 | 社債発行費償却 | |
| 新株予約権発行費 | 営業外費用 | 新株予約権発行費償却 | |
| 開発費 | 売上原価又は 販売費及び一般管理費 | 開発費償却 | |
白柴経理繰延資産は、原則として「支出時」に費用処理します。
ただし、繰延資産として資産計上し償却する場合には、償却の開始時期は支出時ではないことが多いため、注意が必要です(注記参照)。
繰延資産の注記の記載例
重要な会計方針等に係る事項に関する注記
繰延資産の処理方法
- 創立費は、会社の設立のときから5年間にわたり定額法により償却している。
- 開業費は、開業のときから5年間にわたり定額法により償却している。
- 株式交付費は、株式交付のときから3年間にわたり定額法により償却している。
- 社債発行費は、社債償還期間(5年間)にわたり定額法により償却している。
- 開発費は、支出のときから5年間にわたり定額法により償却している。
- 費用処理の場合)開発費は、支出時に全額費用処理している。
支出の効果が期待されなくなった繰延資産(開発費など)は、その未償却残高を一時に償却します(特別損失)。また、一時償却を行った場合には、会計方針の注記は不要です。
条文穴埋問題
支出の効果が期待されなくなった繰延資産の会計処理
支出の効果が期待されなくなった繰延資産は、その 未償却残高 を 一時 に償却しなければならない。

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