【シバ犬🐾簿記論】分配可能額

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STEP1 スタート地点の謎 ― 会社法上の「剰余金」とは?

社長白柴くん!今期も絶好調だ!利益剰余金がいっぱいあるから、ドカーンと配当出しちゃおうぜ!株主サービスだ!
経理ストップです社長!その前に、分配可能額を計算しなきゃダメです!純資産の金額まるごと配当できるわけじゃないんです!
投資家分配可能額は、債権者保護のための上限ラインだな。たしか計算のスタート地点って、B/Sの「剰余金の合計額」だったよな?
経理はい!剰余金については、具体的には会社法第446条1号で定められたものですが、簡単にいうと「その他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額」がスタートです。
社長ええっ!? 資本準備金とか利益準備金は? 立派な純資産だろう!
経理それらは「準備金」という名前のとおり、会社法が債権者保護のため配当から除外して積み立てを強制している、かたいお金だからです。ここから配当を出すのはご法度です!
社長なるほど。「その他」の剰余金だけが、株主への分配に使っていい柔軟なお金、ってことか。よしっ、この決算日時点の剰余金の額がスタートだな。
経理はい。まずこの金額をきっちり確定させることが、最初の重要なステップです。

STEP2 ゴールまでの道のり ― 期末日後の増減を追え!

社長よし、スタート地点の「その他の剰余金たち」は分かった。ここからどうするんだ?
経理スタートは前期末のB/S(決算日)ですが、配当を出すのはそのです。決算日と分配日との間で剰余金に増減があれば、当然、上限も変動します!
社長面倒くさいな~、具体的にはどんな変動を追うんだ?
経理例えば、決算日後に自己株式を処分して得た利益(差益)は剰余金を増やします。逆に、自己株式を消却したら、その帳簿価額分は剰余金を減らします。
社長ふむ…自己株式が関わるとややこしいな。要は、分配時点での純粋な剰余金がいくらあるかを見直すってことか!
投資家そのとおりだ。あとは、決算日後に既に剰余金の配当をしていたら、その分も上限を減らさないといけない。二重に配当できることになってしまうからな。
社長なるほど。この段階は、期末日以降のキャッシュアウトや純資産の増減を地道に調整する作業なんだな。
経理はい。この調整を経て計算されるのが、分配時点の「剰余金の額」です。

STEP3 債権者保護の最終調整① ― 自己株式と評価差額金の調整

社長分配時点の剰余金まで計算できたぞ!もうこれで大丈夫だろ!
経理いえ、もう少し調整が必要です!まず、分配時点の自己株式の帳簿価額控除します。自己株式は資産ではなく純資産の控除項目ですから。
投資家当然だな。自己株式はすでに株主への払戻した分だ。つまり、すでに社外に出ていったお金だから、配当財源には使えない。
経理それに加えて、前期末のその他有価証券評価差額金(マイナス)も控除します。これは含み損ですから、配当財源にするのは危ないからです。
社長いろいろ引くんだな。てか、テキストを見ると、自己株式の処分対価(市場価格)も引くってなってるぞ! 帳簿価額も引いて、対価も引くって……二重に引いてないか?
経理そんな感じがしますよね!でも 実は――引いている対象が違うんです。
社長自己株式を売ったら現金が入るよな? だったら配当してもいいじゃないか?
経理そこが落とし穴です。自己株式はすでに「帳簿価額」を差し引いて計算していました。ところが、期末後にそれを売ると― 現金が入る、 差額はその他資本剰余金に加算される、結果、剰余金が増えて見えるのです!
投資家ただそれは、「もともと配当できない扱いにしていた自己株式」が「形を変えて剰余金に戻っただけ」だ。だから、実質的に分配可能額が増えたわけではないから、その増えた分(処分対価)は控除するわけだ。
社長なるほど……・帳簿価額を引くのは「まだ持っている自己株式」・処分対価を引くのは「売ったことで見かけ上増えた剰余金を打ち消すため」ということか!
経理そのとおりです!自己株式関連は、「見かけの剰余金増加にダマされないためのブレーキ」と覚えておくと分かりやすいです。

✔ 「自己株式の帳簿価額=ストック調整」

✔ 「自己株式の処分対価=フロー調整」

STEP4 債権者保護の最終調整② ― のれん等調整額と資本の壁

社長よし、もうこれで準備万端だな!? 分配するぞー!!
経理ちょっと待ってください!!最後に、「のれん等調整額」のチェックが必要です!
社長なぬっ!まだあるのか!? おのれ、のれんめ~!!のれんを全部引くのか!?
経理いえ、全部とは限りません。まず、会社法では「のれんの半分」と「繰延資産の全額」を、換金できない資産(=のれん等調整額)とみなします。
投資家うむ。「のれん」は実体がないし、「繰延資産」も換金できない費用だからな。それが多額にあると、配当の原資となる現金が実は足りない恐れがあるわけだな。
経理その通りです!そこで、この「換金できない額」が、「資本金や準備金(資本等金額)」という”配当できない資本の壁”を越えていないかチェックするんです。
社長資本の壁…? じゃあ、もし換金できない資産が多すぎて、資本金の額よりデカかったらどうなるんだ?
経理その時が問題です!資本等の金額でカバーしきれず、「剰余金」のエリアまで換金不能部分が食い込んでいることになります。
投資家その「はみ出して食い込んだ分」だけは、配当ストップがかかり、分配可能額から控除しなければいけないな。
社長なるほど!「資本金たちで受け止めきれないくらい換金性の低い資産があるなら、その分は剰余金があっても配当に回すな」っていうルールか!「食い込んだら引く」、シンプルだな!
経理すごい!完璧な理解です。逆に言えば、資本等金額が十分にあれば引く必要はありません。この調整を全て行って、ようやく真の「分配可能額」が算出されます。この金額を絶対に超えてはなりません!
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