【シバ犬🐾簿記論】一般商品売買❶(記帳方法・原価率)
目次
三分法 - 実務の王道!3つに分ける一般方式
| 社長 | よし、売買取引を記帳していくぞ!白柴くん、まずは一番よく使われる方法から教えてくれ🐾 |
| 経理 | はい、それが 三分法 です。これは、「繰越商品」「仕入」「売上」の3つの勘定を使うことから名付けられています。スーパーや家電量販店のように、商品の原価を販売時に把握するのが難しい業態で実務的に最も使われています。 |
| 社長 | 3つの勘定か。これは期中ではどう記録するんだ? |
| 投資家 | 三分法はシンプルだ。期中はとにかく「仕入れた」という事実と「売れた」という事実だけを記録する。「仕入」勘定は当期に仕入れた総額を、「売上」勘定は販売額を表す。 |
| 経理 | そのとおりです。期中は商品の在庫状況や利益は把握できません。ただし、商品有高帳などで在庫数量や金額を別途管理している場合は、実務上は把握可能です |
| 社長 | なるほど!じゃあ、利益はいつわかるんだ? |
| 投資家 | それが三分法のデメリットだ。期末に棚卸しをして、決算整理で初めて売上原価(期首+当期仕入-期末)を計算し、利益が確定する。 |
| 経理 | 決算整理が必要です。この処理によって、決算後、「仕入」勘定が売上原価を、「繰越商品」勘定が期末在庫を表すようになります。 |
分記法 - 原価と利益を分ける!明瞭方式
| 社長 | 三分法は決算まで利益がわからないのか。もっと早く利益を知りたいときは? |
| 経理 | 次に、分記法です。三分法と違い、仕入時は商品勘定を使い、売上時には売上と原価を分けて記録します。具体的には、売上時に原価分を商品勘定から減らし、残りの利益分を商品売買益として計上します。 |
| 社長 | 売れた瞬間に原価と利益を分けて記録するってことか! |
| 投資家 | そうだ。この方法なら、帳簿を見ただけで、商品勘定が現在の在庫金額を、商品売買益勘定が現在の利益を表す。在庫金額が常にわかるのがメリットだ。 |
| 経理 | 分記法は、古美術商など、商品ごとの原価が個別に管理できる業態に向いています。 |
| 社長 | じゃあ、この方式も決算整理が必要なんだろう? |
| 投資家 | いや、三分法とは逆だ。分記法は期中から原価と利益を認識しているため、決算整理の仕訳は不要だ。 |
総記法 - 全部「商品」!シンプル方式
| 社長 | 分記法も決算整理が不要なんだな。もっとシンプルで、商品の原価管理が難しい店主にも使える方式はないの? |
| 経理 | あります!それが 総記法 です。これは、「商品」勘定のみを使い、仕入れたときも、売れたときも、全て商品勘定で処理する特殊な方式です。 |
| 社長 | すべて商品勘定で?売れたときはどう記録するんだ? |
| 投資家 | 総記法では、売れたときに売価の全額を商品勘定から直接減らすんだ。 |
| 経理 | はい。この処理の結果、期中の「商品勘定」の残高は、期末在庫の概算を示しますが、利益は含まれておらず、正確な利益は決算時に計算する必要があります。 |
| 社長 | それは分かりづらいな…何がしたい方式なんだ? |
| 投資家 | 総記法のメリットは、仕訳の記帳が簡単であることだ。ただし、帳簿を見ただけでは在庫金額、売上総額、利益のすべてが分からず、決算時に特別な計算(商品勘定の残高=期末在庫-利益)をしないと利益が確定しない。 |
| 経理 | 総記法は、簿記の学習初期や、簡易な記帳をしたい個人商店などで使われることもあります。実務では少ないけど、仕訳の基本を学ぶにはちょうどいい方式なんです。 |
売上原価対立法 - がっつり記録のリアルタイム方式
| 社長 | なるほど、総記法は特殊なんだな。じゃあ、在庫も原価もリアルタイムで分かって、かつ「売上」と「売上原価」の勘定も使える優秀な方法はないのか! |
| 経理 | それが 売上原価対立法 です。これは期中で売上勘定と売上原価勘定の両方を使い、三分法や分記法の良いところを合わせた方式です。 |
| 社長 | いいとこどり!どういう仕組みなんだ? |
| 投資家 | 仕入れたときは商品勘定を使う。売れたときがポイントだ。販売額を売上として記録する仕訳と、原価を売上原価として計上し、商品勘定を減らす仕訳の二つを同時に行うんだ。 |
| 経理 | 結果として、「商品」勘定はリアルタイムの在庫を、「売上原価」勘定はリアルタイムの売上原価を、それぞれ表します。 |
| 社長 | 固定資産を売った時とおんなじ感じだな!これめちゃくちゃ分かりやすいじゃん!決算整理はどうなる? |
| 投資家 | 分記法と同じく、期中で原価計上まで完了しているため、決算整理の仕訳はいらない。 |
| 経理 | はい。期中で全て処理しているので、決算整理前試算表の数字を見るだけで、売上、売上原価、在庫が全て把握できる最も優れた会計処理方法の一つです。 |
| 社長 | うひょー!これで決まりだな。今後は売上原価対立法の時代だ! |
| 経理 | 社長、これは期中もリアルタイムでずっと原価管理しなきゃいけないんですよ。やってくれますか? |
| 社長 | うーむ。やっぱり、どれも欠点はあるんだな。おとなしく三分法に戻るか・・・ |
記帳方法のまとめ
| 方式 | 主な使用勘定 | 期中記録の内容 | 決算整理 | 期中での在庫/原価把握 |
| 三分法 | 繰越商品、仕入、売上 | 仕入総額と売上総額のみ | 必要 | 不可 (期末に原価確定) |
| 分記法 | 商品、商品売買益 | 原価と利益を分けて記録 | 不要 | 可能 (商品=在庫、販売益=利益) |
| 総記法 | 商品のみ | 売上時に売価を商品から直接減額 | 必要 | 不可 (決算時に特別な計算が必要) |
| 売上原価対立法 | 商品、売上原価、売上 | 売上と売上原価を分けて記録 | 不要 | 可能 (商品=在庫、原価=売上原価) |
原価率 - 値引で利益が減っても“原価率”は変わらない!?
| 社長 | 白柴くん、今期の利益が減ってるんだよなあ。売上はそんなに変わってないのに…。 |
| 経理 | うーん、もしかして「原価率」が上がってるかもしれませんね。 |
| 社長 | 原価率って、原価の売上に占める割合でいいんだっけ? |
| 経理 | はい。「原価率 = 売上原価 ÷ 売上高」です。つまり「仕入でどれだけ使って、売上でどれだけ稼いだか」を見る指標ですね。 |
| 社長 | うんうん。じゃあうちの数字で頼む! |
| 経理 | はい。期首商品が40,000円、仕入が200,000円、期末商品が30,000円。だから売上原価は「40,000+200,000-30,000=210,000円」です。 |
| 社長 | 売上は300,000円だから、「210,000÷300,000=70%」だな。わかりやすい! |
| 投資家 | 70%なら、まずまず健全なラインだな。投資候補としておこう。 |
| 経理 | ところが……この売上には値引15,000円が含まれてるんです。 |
| 社長 | じゃあ実際の売上は285,000円じゃないか!だったら原価率は「210,000÷285,000=約74%」で、上がってるじゃん! |
| 経理 | いえ、それは違うんです。通常、原価率を計算するとき、売上値引や割戻は控除しません。 |
| 投資家 | なんで? 値引で売上が減ってるのに、比率を変えないのか? |
| 経理 | 値引や割戻は「営業上の戦略」で、仕入や在庫の使い方とは関係ないからです。原価率は「どれだけ効率よく仕入を使ったか」を見るもの。だから“定価ベース”で比較するんです。 |
| 社長 | なるほど、仕入の効率を見るのに“まけた分”は関係ないってことか。 |
| 投資家 | ってことは、原価率70%のままでOK。でも利益は確かに減ってるわけだな? |
| 経理 | そうです!原価率は正しくても、値引が増えると利益が減る。それを混同しないのが大事です。 |
数字で見る「原価率は同じでも利益は減る!」
| 区分 | 売上高 | 売上原価 | 原価率 | 利益 |
|---|
| 予定 | 300,000 | 210,000 | 70% | 90,000 |
| 実際 | 285,000 | 210,000 | 74% | 75,000 |
| 経理 | こうやって見ると、数字上は原価率が上がったように見えますが、実際には仕入の効率は変わってない。原因は“営業側の値引”なんです。 |
| 社長 | つまり、「仕入のせい」じゃなくて「売り方の結果」ってことか!だから、原価率を見るときは値引を引かないのか。勉強になるな🐾 |
| 投資家 | 値引・割戻は“営業の都合”。原価率は“仕入の使い方”。だから、売上から値引を引かずに「本来の売上ベース」で比べるんだな。 |
利益率と利益加算率 - “原価から値段をつける”2つの見方
| 社長 | 白柴くん、原価率はわかったけどさ、次は「利益率」ってやつも気になるんだよな。うち、どれくらい儲かってるの? |
| 経理 | 利益率ですね!それは「利益 ÷ 売上高」で求めます。たとえば、売上300,000円・売上原価210,000円なら、利益は90,000円。だから利益率は「90,000÷300,000=30%」です。 |
| 投資家 | つまり、売上のうち30%が利益ってことか。シンプルでいいな。 |
| 社長 | でも、仕入値からどれだけ上乗せしてるかを見たいんだよ。 |
| 経理 | そのとき使うのが「利益加算率(マークアップ率)」です!これは「利益 ÷ 原価」で求めます。さっきの例なら「90,000÷210,000=約43%」。つまり、原価の43%を上乗せして売ってるってことです。 |
| 社長 | なるほど。じゃあ原価が100円の商品なら、43円上乗せして143円で売るイメージだな。 |
| 投資家 | でも、さっきの利益率は30%だったろ?どっちが正しいんだ? |
| 経理 | どちらも正しいです!違うのは「どこを基準にしているか」。利益率は売上高基準(販売側の視点)、利益加算率は原価基準(仕入側の視点)なんです。 |
| 社長 | なるほど、売るときは「原価にいくら上乗せするか」で考えるし、決算では「売上のうちどれだけ残ったか」で見る、ってことだな。 |
| 投資家 | つまり、利益率=結果を見る指標、利益加算率=値決めのための指標だな。 |
| 経理 | そうです!たとえば、利益加算率43%で設定すると、逆算して販売価格を出せます。 |
| 社長 | どういうこと? |
| 経理 | 原価210,000円 ×(1+0.43)= 300,300円。ほぼピッタリ売上300,000円ですね。だから販売価格を決めるときは「利益加算率」で考える方が便利なんです。 |
| 投資家 | なるほど、同じ商売でも仕入の立場か、販売の立場かで使う率が違うのか。 |
| 社長 | よし、うちの価格戦略は“原価に利益を加算するスタイル”でいこう!でも決算書では“利益率30%”って言うと見栄えがいいな🐾 |
| 経理 | 社長、そこを混同すると、数字の説明がややこしくなりますよ(笑)! |
数字で見る!利益率と利益加算率の違い
| 区分 | 売上高 | 売上原価 | 利益 | 利益率(利益÷売上高) | 利益加算率(利益÷原価) |
|---|
| 実績 | 300,000円 | 210,000円 | 90,000円 | 30% | 43% |
| 社長 | まとめると、・利益率=売上を基準に「儲けの割合」を見る(結果分析)・利益加算率=原価を基準に「いくら上乗せするか」を決める(値決め)ってことです。 |
| 投資家 | なるほど!“利益率”はゴールの話、“利益加算率”はスタートの話なんだな。 | |
| 経理 | 言い得て妙だな。よし、今日の議事録のタイトルは「利益はどこから見るか問題🐾」で決まりだ。 |