【シバ犬🐾簿記論】一般商品売買❷(期末商品の評価)

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商品の評価方法 -「いくら」で仕入れたことにする?

社長決算が近いぞ!倉庫にある在庫商品、あれ全部「売値」で評価して、利益ドカンと出しちゃおうぜ!茶柴商店、大勝利の予感!😤
経理社長、それは絶対にダメです💦 在庫(棚卸資産)は、販売されるまではあくまで「取得原価」で評価して資産計上するのが原則です。利益が出るのは売れた時だけですよ。
投資家そのとおりだ。売れてもいないのに利益計上したら、それは架空利益だぞ。資金の裏付けがない利益なんて認めん。
社長チェッ、世知辛いなぁ…。じゃあ「買った時の値段」で計算するとして、毎回仕入単価が違うときはどうすんだ?最初は100円、次は120円で仕入れたりしてるぞ。
経理そこで「棚卸資産の評価方法」を決めないといけません。先に仕入れた古いものから売れていったとみなす「先入先出法」や、平均単価を出す「移動平均法」などが一般的ですね。
投資家ちなみに「後入先出法」は今の会計基準では認められていないが、古い在庫が残る計算になるから、インフレ時には節税効果があるなどの理由で、かつては石油業界などで使われていたな。
社長へえ~!じゃあ、ウチは生鮮食品扱ってるし、古いほうから先に売るから「先入先出法」がイメージに合うな!
経理そうですね。実際の物の流れと計算が一致しやすいですからね。あ、それと仕入にかかった運賃などの「引取費用」も、ちゃんと原価に含めてくださいね。
社長送料も原価に入れるのか!細かいなぁ…でもそれがルールなら仕方ない、計算頼んだぞ白柴くん!

売価還元法 -全部値札で計算しちゃえ!-

社長決算めんどくさーい!ウチのスーパー、お菓子だけで何千種類もあるんだぞ!いちいち「ポテチうす塩味の原価は…」とかやってられるか!😫
経理そういう小売業のためにあるのが「売価還元法」です。個々の原価を追うのではなく、グループごとに「原価率(原価÷売価)」を出して、期末の売価合計に掛けて原価を逆算する方法です。
社長おお!それなら「期末の在庫についてる値札の合計」さえわかれば計算できるじゃん!天才か!
投資家手間が省ける簡便法だが、計算ルールがあるぞ。特に「値下げ」の扱いが重要だ。
経理はい。通常の「売価還元原価法」なら、原価率計算の分母に「値下額」を含めます(マイナスします)が、より保守的に評価する「売価還元低価法」の場合、分母から「値下額」を除外します。
社長んん?分母から除外?どういうことだ?
経理分母(売価合計)が大きくなれば、割り算の結果である原価率は小さくなりますよね?原価率が低くなれば、計算される期末商品の資産価額も低くなります。
投資家つまり、「値下げした=価値が下がった」とみなして、その分を原価率を低くすることで擬似的に評価損を計上させているんだ。
経理理屈がややこしいので、「低価法なら分母に値下を入れない(分母を大きく保つ)」と覚えておくといいですよ。
社長なるほど!細かい理屈はともかく、値札ベースで管理できて、しかも計算式ひとつで保守的な評価もできる便利なテクニックってことだな!これならスーパー経営も安心だぜ!✨

棚卸減耗損 -消えた在庫のミステリー

社長うわっ!帳簿上は100個あるはずの高級クッキーが、倉庫で数えたら90個しかない!誰だつまみ食いしたのは!😱
経理社長、落ち着いてください。それが「棚卸減耗」です。紛失や盗難、乾燥による目減りなどで、実地棚卸数量が帳簿より少なくなることはよくあります。
投資家帳簿と実地の差である10個分は、資産としての価値がない。だから「棚卸減耗損」として費用化し、資産を減額するんだ。
社長くっ、10個分の損か…。これってやっぱり「特別損失」とかで処理するのか?
経理いえ、毎期発生するような通常の範囲内であれば、原価性があるとみなして「売上原価」や「販管費」に含めるのが一般的です。
投資家コストをかけて厳密に管理するか、多少の減耗は許容するか、経営判断の問題でもあるな。ただし、あまりに巨額なら特別損失もあり得るが、通常は売上原価の内訳科目として加算することが多い。
社長なるほど、万引き防止に100万円かけるより、1,000円の減耗を受け入れたほうがマシってこともあるわけか。
経理そのとおりです。減耗分も「売るためにかかった犠牲(コスト)」と考えるわけですね。

商品評価損 -売れ残りはつらいよ

社長去年の夏物のTシャツが大量に残ってるんだが…。これ、仕入値が1枚1,000円だけど、流行遅れでもう500円にしないと売れないらしい😢
経理それは「収益性の低下」ですね。仕入原価よりも、今の「正味売却価額(時価から見積販売直接経費を引いた額)」が下がっている場合、その差額を「商品評価損」として計上しなければなりません。
社長ええっ!まだ売ってないのに損を出すの!? まだワンチャン定価で売れるかもしれないじゃん!
投資家だめだ。それだと損失の繰延べになってしまう。損失の可能性が高いなら、早めに計上して財務諸表の健全性を保つべきだ。逆に、値上がりしていても評価益は計上しない
社長ぐぬぬ…。じゃあ、このTシャツの評価額は500円まで下げて、差額の500円×枚数分は費用になるのか。
投資家そのとおりだ。そしてその商品評価損も、通常は「売上原価の内訳項目」として処理する。
社長つまり、「安くしか売れなくなった在庫」を持っていること自体が、もうコストってことか。早めの処分セール、大事だな…💦

洗替法と切放法 -評価損の「戻す・戻さない」で何が変わる?

社長よっしゃ!期末の在庫が値下がりしたって? でも売上は伸ばすぞ〜、評価損って面倒くさくないか?
経理社長、評価損は正味売却価額が取得原価を下回ったときに計上します。翌期の処理は洗替法切放法のどちらかを選びます。
社長へえ、戻すか戻さないかでそんなに違いが出るのか?簡単に教えてくれ!
経理切放法は前期の評価損を翌期に戻入れしない方法で、当期の帳簿価額は評価損控除後のままです。洗替法は前期の評価損を翌期に戻入れて、期首の帳簿価額を取得原価に戻します。
投資家要は、期首の見かけ上の簿価が違うだけだ。売れた時点でトータルの損益は一致する。
社長つまり、売れちゃえばどっちでも同じってこと?😅
経理そのとおりです。ただし、売上済みになるまでの期間は損益の見え方が変わります。たとえば当期に在庫が残っていて価格が回復した場合、切放法と洗替法で当期の損益が異なることがあります。
投資家回復が一時的か恒久的かを見極めるのが肝だ。品質劣化のように回復しない原因なら、切放法を適用すべきだ。
社長なるほど、一時的な需給変動なら洗替法、物理的劣化なら切放法って覚えればいいのか?
経理そうです。ただし会計基準では、棚卸資産の種類ごとにどちらかを選択適用できるとされています。重要なのは方針を明確にしておくことです。
投資家表示面も忘れるな。前期の戻入額は売上原価のマイナス項目として、当期の評価損と相殺して差額だけを損益計算書に出す。投資家はそこを厳しく見る。
社長表示の仕方で見た目の利益が変わるんだな💦黒柴さん、厳しいな〜(笑)

補足(簡易)

  • 洗替法:期首で評価損を戻入れ → 帳簿価額=取得原価
  • 切放法:評価損を戻入れしない → 帳簿価額=評価損控除後の金額

ポイント:売上が確定するまでの「見え方」が違うだけで、最終的な累計損益は一致する。ただし、回復可能性の有無で適用方法を分けるのが理論上は適切。

「一般商品売買➋」の本試験ポイント

棚卸減耗損

  • 売上が誤処理」の場合、「売上/売掛金」の仕訳をして、期末帳簿棚卸高に取消分(原価)を加算します。
  • 売上返品が未処理(当社未着)」の場合、「売上/売掛金」の仕訳をして、期末帳簿棚卸高と期末実地棚卸高に返品分(原価)を加算します。
  • 仕入商品が未検収(検収基準)」の場合、仕入は計上しませんが、実地棚卸に未検収分が含まれていることが多いです。そのため、期末実地棚卸高から未検収分(原価)を減算します。
  • 見本品が未処理」の場合、「見本品費/仕入」の仕訳をして、期末商品帳簿棚卸高から見本品分(原価)を減算します。
  • 先入先出法」の場合、在庫の棚卸減耗損についても、先に仕入れた分から減耗が生じたものとして計算します(単価が異なってきます)。

商品評価損

  • 商品評価損で洗替法の場合、期首の「繰越商品/商品評価損」の振戻仕訳が未処理の場合が多いです。
  • 災害等による品質劣化がある場合、良品分と劣化分の2つの正味売却価額が出てくるので下の図のように考えます。
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