【シバ犬🐾簿記論】減損会計

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減損の兆候と認識判定 - 関門突破!「割引前CF」で比較!

社長50億円投資したテーマパークの設備、帳簿上は高額な固定資産のままだな!
経理社長、その固定資産には「減損」というルールがあります。将来、元が取れなくなった資産の帳簿価額を切り下げる処理です。
投資家収益性の低下などで、帳簿価額 > 将来の回収見込額になったら、現実の価値に合わせる必要がある。回収できない投資を放置してはいけない。
社長なるほど…「もう元が取れない投資」は、現実を映せってことか🐾
経理減損処理は、①資産のグルーピング → ②兆候の判定 → ③減損認識の判定の3ステップです。
投資家まず資産は、一体としてキャッシュ・フローを生み出す最小単位グルーピングされる。
経理次に、減損の兆候(赤字の継続など)があるかを判定し、兆候があれば減損認識の判定に進みます。認識判定ルールは、帳簿価額割引前将来キャッシュ・フローを比較します。
社長なぜ「割引前」なんだ?
投資家不確実な事業用資産を簡単に減損させないための関門だ。相当確実に回収不能な場合だけ、減損を認めるためだ。
経理帳簿価額 > 割引前将来CF なら、「減損損失を認識する」と決定し、次の測定に進みます。

減損損失の測定 - 実態はいくら?「高い方」で回収可能価額を決定

社長減損を認識すると決まったら、次にいくら減らすか、具体的な損失額を計算するんだな?           
経理そのとおりです。ここが減損損失の測定(手順4)です。
投資家減損損失の額は、回収可能価額に基づいて計算する。ここからが金額の世界だ。
経理減損損失 = 帳簿価額-回収可能価額です。
社長回収可能価額って、どうやって決めるんだ?
経理回収可能価額は、以下のうちいずれか高い方を採用します。
1. 正味売却価額(時価から処分費用を引いた金額)
2. 使用価値(将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引いた金額
投資家認識判定は割引前測定は割引後、と区別するんだ。
社長なるほど。「売るか」「使い続けるか」、得な方でその資産の残存価値(回収可能価額)を決めるわけだな。
経理帳簿価額よりも回収可能価額のほうが高ければ、減損損失はゼロとなります。

減損損失の配分 - グループ損失を分ける!各資産への按分計算

社長減損損失の額は決まったけど、建物も機械もまとめて減損したよな?
経理はい。だから次に必要なのが、減損損失の配分(手順5)です。
投資家グループ全体で計算された減損損失を、個々の資産に分け与える作業だ。
社長どうやって分けるんだ?
経理各資産の帳簿価額の割合など、合理的な基準に基づいて配分します。
経理例えば、グループの減損損失が150の場合、建物と機械の帳簿価額の比率(例えば5:3)で150を配分します。
社長なるほど、重たい資産ほど、多く減らされるわけだな。
経理そのとおりです。そして、配分後の帳簿価額が、その後の減価償却の基礎となります。減損は、将来の費用計算にも影響する重い処理なのです。
社長減損って、思った以上にちゃんと段取りが決まってるんだな🐾

20年を超える見積り - 減損判定の罠

社長白柴くん、資産グループ「ニャンニャン」(帳簿価額21,800)は、これから22年間、毎年 1,000 のキャッシュ・フローを生むんだ!特殊な資産だから、売却はできないが、まーまーだろ!?
経理ニャンニャンだから22年?…(ワンワンじゃないんだ…💦)。ただ、社長。減損の兆候があるみたいなので減損認識の判定が必要ですよ。
社長もうやってるよ!1,000×22年=22,000のニャンニャン!帳簿価額21,800より大きい!問題なしだ!😤
投資家ストップ!それは減損判定の落とし穴だ。将来CFの見積りは原則20年まで。20年を超える部分は割引して評価する必要がある。
社長えっ、そうなのか!?💥
経理はい。21年目以降は20年時点の回収可能価額で評価します。それを、20年目までの割引前CFにプラスするんですね。
投資家20年経過時点の回収可能価額は、使用価値と正味売却価額を比較して高い方だが、今回は売れないから正味売却価額は0で、使用価値がそのまま回収可能価額になるな。
経理割引率は年8%。では、21年目と22年目の20年経過時点の使用価値を計算してみましょう。

◆ 20年時点で割り引いた使用価値(21〜22年分の計算)

21年目使用によるキャッシュ・フロー:1,0001,000 ÷ 1.08926
22年目使用による1,000 + 売却0 = 1,0001,000 ÷ 1.08²857
合計(21〜22年分)926 + 8571,783

◆ 減損損失の認識の判定に使う金額

1〜20年の割引前キャッシュ・フロー合計1,000 × 2020,000
20年時点の回収可能価額(使用価値)(上の計算)1,783
合計(減損損失の認識の判定に使う金額)20,000 + 1,78321,783
投資家認識判定に使う金額は 21,783 だ。これが帳簿価額 21,800 を下回っている。
社長えっ、最初の単純合計(22,000)では問題ないと思ったのに…。割り引くと回収可能価額が下がっている!これは減損を認識しなきゃいけない…。
経理そうです。20年を超える場合は、割引計算を行うことで、C/Fが多額になりすぎないようにしてるんですね。
社長罠にハマった…割引の力、恐るべし。

共用資産の減損(原則) - 単独じゃ動けない“チームプレイ”!

社長白柴くん!最近、カフェ☕の客席が減って、空いてるスペースが目立ってきたんだよな。この店舗ビル、減損の対象になったりするのか?
経理ありますね、社長。本社ビルの建物みたいに、複数の店舗や部門で使ってるものは「共用資産」と呼ばれます。これも減損の検討が必要なんですよ。
社長共用ってことは、うちの焙煎室とか、全店舗で使ってる焙煎機とかか? でもあれって、それ単体で売上を生むわけじゃないよな。
経理そのとおりです。焙煎機やカフェビルのような共用資産は、単独ではキャッシュを生まないんです。だから普通の店舗資産と同じようには減損を判定できません。
投資家つまり、「キャッシュを生む単位」を見極めるのが大事ってことだね。まずは店舗ごとなどの資産グループで減損の兆候をチェックするんだ。
経理はい。そして、そのあとに共用資産を含めた「より大きなグループ」で回収可能価額を計算します。
社長なるほど。まずは各店舗で様子を見て、次に“全店舗+焙煎室”って感じで全体を評価するわけだな🐾
経理そうです。そして、もし全体で減損損失が出た場合には、資産グループごとに出た減損との差額を、まず共用資産に配分します。
投資家ただし注意点もある。共用資産の帳簿価額が「正味売却価額」を下回らないように配分しなきゃいけないんだ。
社長ふむ…配分って、なんだかカフェのブレンドレシピみたいにバランスが大事だな😅
経理いい例えですね。流れを整理すると「①個別 → ②全体 → ③順に配分」という3ステップです。
社長なるほど、まさに“チームプレイ”ってことか!☕✨ 全員で力を合わせて、減損を防ぐぞ!

共用資産の減損(容認) - 配分してから“個別勝負”!

社長白柴くん、この前の「共用資産の減損」って、別のやり方もあるんだって?
経理はい。「容認処理」というのがあります。前回は、全体の減損額を出してから配分するという方法でしたが、今度は順番が逆なんです。
社長逆? どういうことだ?
経理今回は、全体の減損額そのものを出せないケースです。だから、先に共用資産の帳簿価額を合理的な基準――たとえば店舗の売上高や焙煎時間――で各店舗に配分しておきます。
投資家そして、配分後の店舗ごとに減損テストを行う。つまり「配分してから評価」なんだな。
社長なるほど。前は全体でまとめてから配分してたけど、今度は先に割り振っておくわけか。
経理そのとおりです。だから、今回は「全体 → 配分」ではなく「配分 → 個別評価」という流れになります。似ているようで、やる順が真逆なんです。
社長たとえば、焙煎機の価値を店舗の売上比で分けるような感じか。A店が4割売上なら、焙煎機の4割分をA店に。
経理その通りです。そしてA店単位で減損を判定するんです。
投資家共用資産を“仲間に分けて”評価するイメージだな。まさにコーヒー豆を店舗ごとに分けて焙煎するようなもんだ。☕
社長ふむ…どっちの方法でも、全体で好調なら減損はないけど、一部の店舗が赤字だと、その分も影響受けるわけだな。
経理そうです。共用資産は「単独ではなく、使う仲間との関係」で判断する――ここが最大のポイントです🐾
社長よし、カフェ全体でお客さんを増やして、減損なんて出させないぞ!みんなで“黒字ブレンド”だ!💪☕

共用資産:原則と容認の違い

処理の流れ原則容認
手順個別で判定 → 全体で算定 → 差額を配分帳簿価額を先に配分 → 個別で評価
判断単位全体グループ各資産グループ
評価の考え方チームでまとめて判断チームを分けて個別判断
イメージ「チームで勝ち負け決めて配分」「個人ごとにスコア判定」

のれんの減損 - “期待の証”は、厳しくチェック!

社長白柴くん!「のれんの減損」っていう言葉を聞いたけど、うちの入口にぶら下がってる“暖簾”がボロくなったってことじゃないよな?😅
経理ちがいますよ社長(笑)。会計でいう「のれん」は、企業を買収したときに支払った金額のうち、その会社の純資産の時価を上回る部分のことです。つまり、ブランド力や顧客の信頼といった“目に見えない価値”を表します。
投資家たとえば社長が他のカフェを買収したら、その店のファンや評判などの“期待値”が「のれん」として計上されるわけだな。
社長なるほど。うちが別のカフェを買ったとき、「人気」も一緒に買うような感じか🐾
経理そのとおりです。ただし、日本基準では「のれん」は普通の資産と違い、毎期償却しながら、価値が下がった兆候があれば減損も行います。
社長償却もしつつ減損も? なんか二重に減らされる感じだな💦
投資家国際会計基準(IFRS)では、のれんは償却せず、毎年または兆候があったときだけ減損テストをする。つまり、日本基準のほうが慎重に“価値の減少”を見ているわけだ。
経理はい。日本基準は「時間とともに価値が減っていく」と考え、定額法20年以内に償却します。それに加えて、業績悪化などの兆候があれば減損を検討します。
社長減損テストって、のれん単体でやるの?
経理いえ、のれん単独ではキャッシュを生みません。だから、のれんを含めた「事業単位」で回収可能価額を計算します。
投資家 たとえば、社長が買収した「Aカフェ」事業全体――土地、建物、設備、在庫を含めて評価するんだ。
社長なるほど。もしAカフェ全体の価値が下がってたら?
経理帳簿価額のほうが大きければ減損です。その場合、まずは「のれん」に優先的に減損を配分します。のれんがゼロになってもまだ差額があれば、他の資産に配分します。
社長のれんがいちばん最初に削られるのか😢
投資家のれんは将来の利益への“期待”を表すからな。期待が下がれば、真っ先に評価を見直すのが筋だ。
経理そうなんです。のれんは金額も大きくなりやすいので、償却と減損の両面から慎重にチェックする必要があります。
社長なるほど…見えない価値ほど、厳しく見られるってことか。会計の世界はなかなか手ごわいな💦

のれん:減損の会計処理

処理項目内容
発生時取得原価のうち、純資産時価を超える部分を「のれん」として資産計上
償却定額法で20年以内に償却(費用処理)
減損兆候があれば「のれんを含む事業単位」で回収可能価額を算定し、超過分をまずのれんに配分
優先順位①のれん → ②その他の資産

「減損会計」の本試験ポイント

  • 減損後の固定資産の帳簿価額の後T/B金額は、間接法の場合は注意が必要です。取得原価から減損損失を控除した金額となり、直接法の表示と混同しやすいため注意しましょう。
  • 共用資産に配分しきれない減損損失の増加額の再配分は、残りの資産グループの帳簿価額の比率、②帳簿価額と回収可能価額の差額の比率、のどちらを基準とするのかを、読み間違えないようにしましょう。
  • 共用資産を含むより大きな単位で減損損失が認識された場合、個々の資産グループ自体に減損の兆候がなかったとしても、共用資産に配分しきれない分の減損損失は、各資産グループに配分され、減損損失が認識されます
  • 各事業の減損を認識する前に、個別の減価償却が未了の場合があるので、減価償却の有無のチェックを必ずしましょう。
  • のれんが複数事業に関わる場合は、特定の事業の減損を算定する問題が多いです。そのため、まずはのれんの帳簿価額を各事業に配分する作業が必要です。
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