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預り金と法定福利費 - 源泉所得税と社会保険料は“会社のお金じゃない”!?
| 社長 | 白柴くん、給与の仕訳ってよくよく見ると、なんかややこしいんだなぁ💦 |
| 経理 | それは、給与の仕訳には「会社の費用」と「従業員から預かっているだけのお金」が混在しているからですよ。 |
| 社長 | 預かるお金⁉ 単純に給与の支払額を「給与手当」に計上してるんじゃないの? |
| 経理 | 違いますよ!ちゃんと、従業員から天引きした税金や保険料は「預り金」を立てているんですよ。これらは、“国へ渡すために一時的に預かっているだけのお金”なんですね。 |
| 投資家 | そのとおりだ。源泉所得税や従業員負担分の社会保険料は、従業員がもらった給料から払っているという構図だから、会社のお金は1円も減っていない。 |
| 社長 | え、じゃあ源泉所得税や社会保険料は、うちの費用じゃないってこと? |
| 経理 | はい。ただし、社会保険料については「会社と従業員が折半(半分ずつ負担)」というルールがあります。従業員負担分は「預り金」ですが、会社が負担する残り半分は「法定福利費」として会社の費用になります。 |
| 投資家 | ややこしいのはここからだ。源泉所得税は当月分を「当月徴収」して翌月納付するだけだが、社会保険料は「当月徴収」と「翌月徴収」がある。これが混乱の元凶だ。 |
| 社長 | 翌月徴収…? なんだそれ? |
| 経理 | 簡単に言いますと、「3月の給料から引いている社会保険料は、実は2月分の保険料」だということです。 |
| 投資家 | 保険料の通知が来るのが遅いから、実務では「前月分の保険料を、当月の給与から天引きする」のが一般的だからな。 |
| 社長 | うわぁ…時期までズレてるのか! そりゃ混乱するわけだ😢 |
| 経理 | 数字を入れて整理しましょうか。例えば、額面30万円の給与を3月25日に払うとします。ここから所得税5,000円(3月分)と、社会保険料30,000円(2月分)を引くとしますね。 |
| 社長 | 手取りは…26万5,000円か。仕訳はどうなるの? |
| 経理 | まず、給与支払日(3/25)の仕訳です。会社としての費用(給料)は30万円ですが、現金は手取り分しか減りません。【3/25 給与支払時の仕訳】 (借) 給料手当 300,000 (貸) 現金 265,000(手取り) (貸) 預り金 35,000(税金+保険料) |
| 投資家 | ここで大事なのは、この時点では「会社負担分の社会保険料」はまだ登場しないってことだ。それは月末の納付日に出てくる。 |
| 社長 | 納付書が送られてきてから、納めるやつだな! |
| 経理 | そうです。3月末に、2月分の社会保険料を国に納めます。この時、従業員から預かっていた3万円と、会社が負担する3万円を合わせて払うんです。 【3/31 社会保険料 納付時の仕訳】 (借) 預り金 30,000 (従業員から天引きしていた分) (借) 法定福利費 30,000 (会社の経費になる分!) (貸) 現金 60,000 (合わせて納付) |
| 社長 | なるほど!給料日には「預り金」をプールしておいて、月末の支払日に「会社の費用(法定福利費)」を上乗せして払うって仕組みか! |
| 投資家 | その通りだ。「いつの分を払っているか」と「誰の負担分か」を整理すれば、仕訳なんてパズルみたいなもんだ。 |
| 経理 | そうです。まずは「給与天引き=預り金」「会社負担=法定福利費」と覚えておくだけでも、だいぶスッキリしますよ。 |
| 社長 | よし!次からは“他人のお金(預り金)”と“うちの費用(法定福利費)”をちゃんと分けて考えるぞ!🐾 |
賞与引当金 - 働いた期間で費用が決まる!
| 社長 | 白柴くん!そろそろ夏のボーナスの話をまとめたいんだけど、今年も張り切っていくぞ~💪✨ |
| 経理 | いいですね社長。でも、賞与は支給対象期間が重要です。働いた期間に対応して費用を計上しないといけません。 |
| 社長 | えっ? 支給日が決まってればいいんじゃないの?😅 |
| 経理 | いえ、賞与は「いつ払うか」ではなく「どの期間に対するものか」で費用計上します。例えば、夏の賞与の対象期間が12月~5月なら、12~3月の4か月は当期分、4~5月の2か月は翌期分です。 |
| 投資家 | つまり、当期に帰属する労務費だけを当期費用にするって話だな。会計の基本だ。 |
| 社長 | おお~なるほど!たしかに“働いた分”をちゃんと当期に入れないと、おかしくなるよな🐾 |
| 経理 | そのとおりです。だから期末では、翌期の賞与のうち当期分だけを賞与引当金として計上します。 |
| 社長 | じゃあ冬の賞与は? 6月~11月が対象期間なんだよね? |
| 経理 | その場合、当期末(3月末)では対象期間がすべて翌期なので、賞与引当金は不要です。 |
| 投資家 | つまり冬の賞与は「来期の費用に全部入る」ってことだ。誤って当期に入れると費用がブレるから要注意だぞ。 |
白柴経理賞与引当金繰入には、社会保険料の会社負担分(%の指示が問題にあり)を併せて計上する場合も多いです。(法定福利費××/未払費用)
賞与対象期間
(例:会計期間 4/1~翌3/31)
夏の賞与(支給6月) 対象期間:12月~5月
┗ 当期:12・1・2・3 → 当期の賞与引当金
┗ 翌期:4・5 → 翌期の費用
冬の賞与(支給12月) 対象期間:6月~11月
┗ 全期間が翌期 → 当期は引当金なし
引当金? 未払? 未払金? - 賞与は「確定」と「基準」で科目が変わる!
| 社長 | 白柴くん、でもさ…賞与って“払う額が決まってない”こともあるよね? そのときはどうするんだ?🤔 |
| 経理 | そこがポイントです。賞与の処理は、確定しているかどうかと 何を基準に算定しているかで科目が変わるんです。 |
| 社長 | えっ、そんな複雑なの!?💦 |
| 投資家 | そうだ。賞与の世界は3つに分かれるんだ。賞与引当金・未払費用・未払金だ。 |
| 経理 | まず、支給額がまだ確定していない場合。これは支給見込み額のうち当期分を賞与引当金にします。 |
| 社長 | ふむふむ…じゃあ金額が確定したら? |
| 経理 | その場合、対象期間で計算されていたら未払費用になります。 |
| 投資家 | 逆に、成功報酬みたいに対象期間と無関係なら、科目は未払金だ。費用の性質が違うからな。 |
| 社長 | なるほど…同じ“賞与”でも中身で全然扱いが違うのか🐾よ~し、賞与の会計もレベルアップできたぞ! |
★賞与未払関係の比較
| 区分 | 内容 | 負債計上科目 |
|---|---|---|
| 支給額が確定 | 支給対象期間に対応して計算 | 未払費用 |
| 支給対象期間以外の基準 | 未払金 | |
| 支給金が未確定 | 支給対象期間に対応して見積計算 | 賞与引当金 |
役員賞与 -「お手盛り」防止のためのルール!
| 社長 | 白柴くん、今年は会社の業績がいいから、役員賞与も増やしたいんだよな~😆 |
| 経理 | 社長、役員賞与は従業員と全く違いますよ。支給基準を会社で定めるか、株主総会で決議するかのどちらかが必須です。 |
| 社長 | えっ、なんでそんなに厳しいの?💦 |
| 投資家 | “お手盛り”になる危険があるからだ。自分の取り分を勝手に決めるなんて許されないだろ? |
| 経理 | そのとおりです。だから役員賞与は質的重要性が高く、未払金とは別に独立した科目を使います。 |
| 社長 | なるほど…じゃあ、支払額が決まった場合はどうなるんだ? |
| 経理 | 株主総会で額が確定していれば確定債務なので、「未払役員賞与」として計上します。 |
| 投資家 | まだ確定していないけど、当期分の役務提供に対応する賞与が見込まれる場合は、「役員賞与引当金」だな。 |
| 社長 | 従業員賞与と似てるけど、やっぱり扱いが別格なんだな🐾 |
| 経理 | そうなんです。役員は権限が強いからこそ、会計ではより厳格なルールが求められます。 |
役員賞与の科目判定
従業員の賞与とは別科目で表示(質的重要性が高い)
・株主総会で支給額が確定 ⇒ 未払役員賞与(確定債務)
・支給額未確定、当期の役務提供に対応 ⇒ 役員賞与引当金
役員退職慰労金 - 長期在任ほど重要になる負債!
| 社長 | ところで白柴くん、役員が退職するときの“退職金”ってどう処理するんだ?意外と大きい金額になるよな😅 |
| 経理 | それが「役員退職慰労金」です。従業員と同じく退職金の性質ですが、役員の方が長年の貢献が大きいので「慰労金」と呼ばれます。 |
| 社長 | へぇ~なんか特別扱いだな。 |
| 投資家 | その分“自由に決められないように”規定を整えておく必要があるんだ。勝手に大金を支給したら問題だろ? |
| 経理 | そのとおりです。普通は社内規程を事前に定めてそこから見込額を計算します。 |
| 社長 | じゃあ費用はどう計上するんだ? |
| 経理 | 将来の支給に備えて、要支給額を役員退職慰労引当金として計上します。 |
| 投資家 | 在任期間が長くなりがちだから、普通は固定負債で表示するぞ。 |
| 社長 | おお…長期の義務なんだな🐾 |
| 経理 | そして毎期、見込み額の増加分を費用として計上します。たとえば… |
| 投資家 | 1期目の見込み100、2期目の見込み180なら、差額80が繰入額になる、というわけだ。 |
| 社長 | 少しずつ積み上げる感じなんだな! |
注記 - 基準は会計方針、その重要部分は必ず書く!
| 社長 | よ~し、ボーナスの計算も終わったし、ひと段落だな! |
| 経理 | はい。ただ、決算の時は引当金関係の注記を忘れないでくださいね。 |
| 社長 | なぬっ!そんなのがあるのか!? |
| 経理 | はい。まず大前提として、引当金の計上基準は「会計方針」なんです。だから、重要な引当金については注記が必要になります。 |
| 社長 | なるほど、方針だから説明しなきゃいけないってことか! |
| 投資家 | そうだ。特に人件費に関係する引当金は金額も影響が大きい。だから注記の対象になりやすいんだ。 |
| 経理 | そのとおりです。例えば、賞与引当金や役員賞与引当金の計上基準は必ず注記します。「支給対象期間に対応する部分を費用化する」という基準を明示する必要があります。 |
| 社長 | ふむふむ…じゃあ退職金系は? |
| 経理 | それも重要です。退職給付引当金や役員退職慰労引当金の計上基準も、「要支給額を合理的に見積もって費用化する」というように注記します。 |
| 投資家 | 特に役員退職慰労金は金額も大きくなりやすいから、どんな見積基準で計算してるかが投資家としては重要なんだよ。 |
| 社長 | そっか…財務諸表を見る側からしたら、“どう計算してるか”が分からないと困るんだな🐾 |
| 経理 | ええ。だから注記は単なる形式じゃなく、会社の透明性を示すための大切な情報公開なんです。 |
| 社長 | よし!注記もちゃんとわかりやすく書いて、投資家さんに安心してもらおう!😄 |
| 投資家 | その心意気、悪くないな。 |
重要な会計方針等に係る事項に関する注記
引当金の計上基準
⑴ 賞与引当金
従業員に対する賞与支給に備えるため、翌期の支給見込額のうち当期負担額を計上している。
⑵ 役員賞与引当金
役員に対する賞与支給に備えるため、翌期の支給見込額のうち当期負担額を計上している。
⑶ 退職給付引当金
従業員の退職給付に備えるため、当期末における退職給付債務に基づき、当期末において発生していると認められる額を計上している。
⑷ 役員退職慰労引当金
役員の退職慰労金の支給に備えるため、役員退職慰労金規程に基づく期末要支給額相当額を計上している。
「人件費」の本試験ポイント
預り金と法定福利費
- 社会保険料の問題は「翌月徴収」のパターンが多いです。源泉所得税との処理の違いを確認しておきましょう。
賞与引当金
- 翌期(3月決算)の6月賞与の支給対象期間は、「12~5月(6か月中4か月分)」とするケースが多いですが、「11~4月(6か月中5か月分)」とするパターンもあります。12~5月と思い込まないよう注意しましょう。
- 当期(3月決算)の6月分賞与(3月決算)の支給時において、本来は、前期の「賞与引当金」の取り崩しが必要ですが、全額を費用処理していることが多いです。修正仕訳が必要です。
人件費
- 人件費の修正仕訳の処理パターン
- 賞与引当金の前T/B残高を引く
- 退職一時金と掛金拠出額を引く
- 預り金の未計上分を足す
- 賞与引当金の社会保険料の見越分を足す

