小規模企業等における簡便法 - 中小企業の退職金計算はシンプルに!
| 社長 | 白柴くん、ウチの会社の決算だけど、退職金に関する計算がいつも複雑で大変なんだよな!もっと簡単にできないのか?🐶💦 |
| 経理 | 社長、ご安心ください!中小企業などでは、原則法という難しい数理計算をする方法以外に、「簡便法」の適用が認められています。 |
| 社長 | ほほう、簡便法!まさにウチにピッタリじゃないか! |
| 経理 | そのとおりです。特に、退職給付債務の計算がシンプルになります。退職給付費用も、見込みではなく事後的に算出するんです。 |
| 投資家 | そうだな。期首の見込みいらずで、計算コストが抑えられるのが最大のメリットだ。 |
| 社長 | それはありがたい!それで、具体的にどうシンプルになるんだい? |
| 経理 | はい。退職一時金制度の場合、退職給付債務の代わりに、「期末自己都合要支給額」というのを使います。これは、期末に従業員が仮に退職した場合に要支給額のことです。 |
| 投資家 | 例えば、今年の期末自己都合要支給額が1,200だとしたら、退職給付引当金もその1,200で計上だな。 |
| 社長 | 1,200をそのまま引当金にするのか!それは分かりやすい! |
| 経理 | 企業年金制度なら、年金基金が計算している「年金財政計算上の数理債務」というのを使います。これは現時点で積み立ておくべき財産の額をあらわします。もし数理債務が1,500なら、引当金も1,500です。 |
| 投資家 | 数理債務は「責任準備金」とも言ったりするな。期末自己都合要支給額も数理債務も複雑な予測計算をせず、すでに算出されている値を流用する。だから簡便なんだ。 |
| 社長 | なるほど!それで、肝心の退職給付費用はどう計算するんだ? |
| 経理 | それはT字BOXの貸借差額で計算します!例えば、期首の引当金が1,000で、期中に退職金の支払が50あったとします。 |
| 社長 | ふむふむ。 |
| 経理 | 期末が1,200だった場合、差額で退職給付費用 250がすぐに出ます! |
| 社長 | 確かに!これは本当に簡単だ!これでいこう🎉 |
退職給付引当金のT字BOX
| 期中支払額 50 | 期首残高 1,000 |
| 期末残高 1,200 | 退職給付費用 250 (貸借差額) |
黒柴投資家簡便法の問題では、「会計基準変更時差異(通常は不利差異)」が絡んでくるパターンも時々あるぞ。TACの「個別問題の解き方」で扱われているので、持っている人は確認しておこう。
数理計算上の差異及び過去勤務費用のワークシート
退職給付会計の問題では、数理計算上の差異や過去勤務費用が絡んでくると、急に難易度が跳ね上がります。特に「当期発生分の差異」の計算が出てくるとややしこしくなってきます。
各勘定の明細科目を使って苦戦している方、そんなときにおすすめなのが、ワークシート形式での整理です。
期首残高、当期の勤務費用・利息費用・支給額、そして差異の発生や償却額を表形式で並べていくことで、数字の流れが視覚的に把握しやすくなります。特に、退職給付債務と退職給付引当金の違いや、差異の償却がどこに影響するのかを明確にするのに効果的です。
問題を解く際だけでなく、制度の構造を理解するうえでも非常に有効な手法ですので、ぜひ一度試してみてください。複雑な論点ほど、図や表で「見える化」することが、理解の近道になります。
| 項目 | 前期末実績 | 当期費用(勤務+利息) | 支払額 | 当期末見込 | 数理差異 | 当期末実績 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 退職給付債務(①) | 30,000,000 | 2,700,000 | 500,000 | 32,200,000 | 1,300,000 | 33,500,000 |
| 年金資産(②) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 未積立債務(①−②) | 30,000,000 | 2,700,000 | 500,000 | 32,200,000 | 1,300,000 | 33,500,000 |
| 未認識過去勤務費用(③) | 1,600,000 | −400,000(償却) | 0 | 1,200,000 | 0 | 1,200,000 |
| 未認識数理差異(④) | 2,000,000 | −500,000(償却) | 0 | 1,500,000 | +1,300,000 | 2,800,000 |
| 退職給付引当金(⑤) = ①−②−③−④ | 26,400,000 | +3,100,000(純増) | 0 | 29,500,000 | 0 | 29,500,000 |
「退職給付」の本試験ポイント
・企業年金制度のみを採用している会社で、問題文に「退職給付〇〇円」が与えられている場合
⇒ 企業年金制度のみの場合、退職給付の支給は年金から支給されるため、企業側での仕訳は発生しません。退職一時金の支払いと誤認して、退職給付引当金の減額処理を行わないようにしましょう。
・問題文に「長期期待運用収益率」と併せて「長期実際運用収益率」が示されている場合
⇒ 期待運用収益の計算に用いるのは「長期期待運用収益率」です。「長期実際運用収益率」は比較用のダミー資料であり、計算には使用しません。
・退職給付規程の上昇改定により、過去勤務費用が当期首に発生した場合
⇒ 期首の退職給付債務が増加するので、利息費用の計算上これを考慮する必要があります。一方、期中の退職給付規定の改定等による過去勤務費用の発生は、期首の利息費用の計算に含めることができないので考慮は不要です。



