【シバ犬🐾簿記論】新株予約権
目次
新株予約権の発行者側 -「義務」だけど「純資産」?
| 社長 | おーい白柴くん! うちも「新株予約権」を発行するぞ! 権利を売ってガッポリ資金調達だ🐾 |
| 経理 | 社長、落ち着いてください。新株予約権は、会社にとっては「株式を交付する義務」ですよ💦 |
| 社長 | え、義務? ってことは「負債」が増えるのか? バランスシートが悪くなるのは嫌だなぁ😢 |
| 投資家 | 勘違いするな。将来返すのは金じゃなくて「株」だ。だから負債じゃなくて「純資産」になるんだ。 |
| 経理 | そのとおりです。将来株主になるための「元手」の前受けみたいなものですからね。 |
| 社長 | おお、純資産なら安心だ!で、権利を持ってる人が「株をくれ」って言ってきたら? |
| 経理 | 権利者がお金を払い込みます(権利行使)。会社は「最初にもらった代金」と「今の払込金」を合算して、資本金にします。 |
| 投資家 | ここがミソだ。株の対価は、今もらった金だけじゃない。過去にもらった金も足して計算するんだ。 |
| 社長 | なるほど! 「予約金+残金」って感じか! じゃあ、株価が下がって権利が使われなかったら? |
| 経理 | それは「失効」ですね。株を渡す必要がなくなり、最初のお金は全額「新株予約権戻入益」として利益になります✨ |
| 社長 | ええっ!? 何もしないでタダでもらえるのか! それ最高じゃん! どんどん失効してくれ~🐾 |
| 投資家 | バカを言うな。失効ってことは「お前の会社の株価が上がらなかった」ってことだ。信用ガタ落ちだぞ。 |
| 社長 | うっ…それは困る💦 やっぱりみんなに行使してもらえるよう、経営頑張ります…! |
≪新株予約権の発行者側の仕訳一覧≫
| 発行時 | 現金預金 ×× | 新株予約権 ×× | 純資産の部の項目 |
権利行使時 (新株発行) | 現金預金 ×× 新株予約権 ×× | 資本金 ×× 資本準備金 ×× | 権利行使による払込価額と行使分の新株予約権の簿価 |
権利行使時 (自己株式交付) | 現金預金 ×× 新株予約権 ×× | 自己株式 ×× その他資本剰余金 ×× | 差額が基本出るのでその他資本剰余金で処理する |
| 権利行使期間満了時 | 新株予約権 ×× | 新株予約権戻入益 ×× | 未行使の場合は特別利益 |
新株予約権の取得者側 - 株でも債券でもないアイツ!
取得時
| 社長 | 白柴くん!この前500千円で「新株予約権」ってやつを買ってみたぞ!投資も攻めていくぞ🔥 |
| 経理 | 良いですね社長。でも、新株予約権は株式でも債券でもない独立した有価証券ですからね。分類ミスはダメですよ💦 |
| 社長 | え、じゃあ株の仲間じゃないのか…。 |
| 経理 | はい。行使すると株式を取得できる権利です。その代わり、行使時には例えば1,200千円とか、行使価額を払わないといけません。 |
| 投資家 | 権利だけど、ちゃんと評価対象。行使すりゃ株だが、持ってる間は株じゃない。 |
| 社長 | 買ったときの仕訳は? |
| 経理 | 取得目的によって変わります。・売買目的 → 有価証券 500千円・その他有価証券 → 投資有価証券 500千円 |
| 社長 | ほぉ、株や債券と同じ感じで仕訳するんだな。 |
| 投資家 | ただし関係会社株式にも満期保有債券にも“ならない”。新株予約権は新株予約権だ。 |
| 社長 | ところで期末評価は? |
| 経理 | 株式と同じく時価評価です。期末に時価が上がっていたら、売買目的は評価益、その他有価証券は純資産直入で、その他有価証券評価差額金(貸方)になります。 |
| 社長 | へぇ〜、有価証券としては別物だけど、扱いは株式寄りなんだな🐾 |
≪新株予約権の取得時の仕訳≫
| 売買目的有価証券 | 有価証券 500 | 現金預金 500 | 新株予約権は取得原価をもって、その保有目的区分の科目で計上する |
| その他有価証券 | 投資有価証券 500 | 現金預金 500 |
権利行使時
| 経理 | ナイス判断です社長!ただしですね、権利行使時の処理は保有目的で全然違うので、そこは要注意です。 |
| 社長 | うわっ、また目的で変わるパターンか💦 |
| 投資家 | まあ聞け。売買目的か、その他有価証券かで、株式の取得原価が変わる。ここは重要だ。 |
| 社長 | そんなに違うのか? 同じ権利行使なのに? |
| 経理 | まずは売買目的有価証券から説明しますね。行使時点で新株予約権の時価が仮に550千円だとします。 |
| 社長 | あれ? 帳簿価額は500千円だったよな? |
| 投資家 | そう。でも売買目的はいつでも売る前提の資産だ。だから、行使時点でいったん時価評価して損益を確定させるんだ。 |
| 経理 | つまり、株式には「時価550千円+払込金額1,200千円」が合算された1,750千円が取得原価になります。 |
| 社長 | おおっ、利益を一回リセットしてから株に化ける感じか!🐾それが調達コストということだな。 |
| 経理 | そのイメージでOKです。 |
| 社長 | じゃあ、その他有価証券の場合はどうなるんだ? |
| 経理 | その他有価証券は、評価差額はまだ未実現扱いなので、行使時点では帳簿価額500千円のまま株式に振り替えます。 |
| 投資家 | 売買目的と違って、時価で損益を確定させないのがポイントだな。 |
| 経理 | そのため、「帳簿価額500千円+払込金額1,200千円」の1,700千円が株式の取得原価になります。 |
| 社長 | なるほどなぁ。同じ権利行使でも、目的でこんなに処理が変わるのか。 |
| 投資家 | だからこそ、新株予約権は「取得した後」も要注意なんだ。 |
| 社長 | 会計って、やっぱり奥が深いわ…😅 |
≪権利行使時(取得者側)の仕訳≫
| 売買目的有価証券 | 有価証券 1,750
| 現金預金 1,200 有価証券 500 有価証券評価損益 50 | 権利行使時の払込金額と新株予約権の時価の合計額で株式に振り替える |
| その他有価証券 | 投資有価証券 1,700 | 現金預金 1,200 投資有価証券 500 | 権利行使時の 払込金額と新株予約権の帳簿価額で株式に振り替える |
権利行使期間満了時
| 社長 | ところでさ、もし新株予約権を行使しないまま期間が終わったら、どうなるんだ? |
| 経理 | その場合はですね、新株予約権は「紙くず」になって失効します。 |
| 社長 | えっ…ゼロになるのか!?😨 |
| 投資家 | そうだ。だからこそ、帳簿に残っている分は損失処理が必要になる。 |
| 経理 | はい。保有していた新株予約権の帳簿価額を「新株予約権未行使損」として、そのまま損失処理します。 |
| 社長 | 売れもしないし、使えもしない…完全に損ってことか…、新株予約権もリスクある商品ってことだね。 |
≪権利行使期間満了時(取得者側)の仕訳≫
| 売買目的有価証券 | 新株予約権未行使損 ×× | 有価証券 ×× | 当該新株予約権が失効したときは、当該新株予約権の帳簿価額を当期の損失として処理する |
| その他有価証券 | 新株予約権未行使損 ×× | 投資有価証券 ×× |
自己新株予約権 - 自己株式とは何が違う?
自己新株予約権の取得
| 社長 | おーい、発行した新株予約権を10個、1個1,000で発行して合計10,000を受け取ったぞ!このうち1個を試しに1,100で買い戻してみたんだ。でも、会社が自分で自分の権利を買っていいのか?🤔 |
| 経理 | いい質問です社長。はい、会社が自社で発行した新株予約権を取得(買い戻し)することは可能です。会社法上、特に禁止されていない(規制が特段ない)んです。 |
| 社長 | へぇ、自己株式みたいなものか? |
| 経理 | 似て非なる点が多いです。自己株式は株主との資本取引で、自己株の取得は資本の部に直接影響します。一方、自己新株予約権の取得は「新株予約権者(権利者)との取引」なので、会社側では資産として計上します。つまり会計上は“買戻し→資産”なんです。 |
| 投資家 | そのとおり。見た目は似てても会計的実態が違う。自己株は資本取引、自己新株予約権は資産性あり。区別は重要だ。 |
| 社長 | つまり、自己株は株主とのやりとり、自己新株予約権は権利持ってる人とのやりとりってことか。わかりやすい🐾 |
| 経理 | はい。あと補足すると、自己新株予約権はB/S上で新株予約権から控除表示するのが原則です(直接控除が原則)。これは実態に即しているためです。 |
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|
| 自己新株予約権 | 1,100 | 現金預金 | 1,100 |
(注)取得にかかる手数料等の付随費用があれば、取得価額に加算して資産計上します。
自己新株予約権の処分と消却
| 社長 | 買い戻した1個(取得価額1,100)を1,200で売ったら利益出るかな?😆 |
| 経理 | 出ます。自己新株予約権の処分(売却)は損益取引です。売却益は損益計算書で処理します。 |
| 投資家 | そのとおり。自己新株予約権の取得は資産計上だが、処分や消却は株主との資本取引ではなく損益取引だ。ここを自己株式と混同するなよ。 |
| 社長 | じゃあ消却(会社がその権利を消す)したら?発行価額は1,000で、うちが買い戻した価額は1,100だ。 |
| 経理 | 消却すると、元の新株予約権が減少して、差額は消却損として損益に計上します。たとえば今回だと消却損100ですね。 |
| 投資家 | 表示区分(営業外か特別か)は指示に従うこと。会計基準に明示がないから、問題や会社方針で決める。 |
| 社長 | よし、これでスッキリした。自己株と自己新株予約権は似て非なるもの、と🐾😅 |
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|
| 現金預金 | 1,200 | 自己新株予約権 | 1,100 |
| | 自己新株予約権処分益 | 100 |
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|
| 新株予約権 | 1,000 | 自己新株予約権 | 1,100 |
| 自己新株予約権消却損 | 100 | | |
「新株予約権」の本試験ポイント
新株予約権の発行者側
- 「新株予約権戻入益」は営業外収益ではなく、特別損益に表示します。
- 株主資本等変動計算書の記載において、新株予約権は原則、一括の純額表示であす。容認表示で当期変動額の内訳項目に記載できます。問題の指示がなければ、原則どおり一括純額表示で記載します。 ※「その他有価証券評価差額金」も同様
- 新株予約権の発行のために要した付随費用は、「新株予約権発行費」として処理します。新株予約権発行費は原則営業外費用ですが、繰延資産として処理することもできます。
新株予約権の取得者側
- 新株予約権(売買目的保有)の権利行使に際して、株式の時価が問題文に与えられることがありますが、これはダミー資料です。振替は新株予約権の時価で行います。
- 新株予約権の権利行使時の払込金額は、基本的に「1株当たり☓☓円」の株数ベースで与えられることが多いですが、「1個当たり☓☓円」の新株予約権の個数ベースで与えられることもあるので、読み間違えないようにしましょう。