目次
第1話 繰延資産ってそもそも何?~昔からのしきたりと新ルール~
| 社長 | 白柴くん、前にも少しきいたけど、「繰延資産」ってのは、昔から認められてたの? |
| 経理 | もともとは旧商法の時代からある考え方なんですよ。昔は「こういう費用は繰延資産にしていいよ」って、法律で細かく決められてたんです。 |
| 投資家 | つまり、会社が自由に決められなかったってこと? |
| 経理 | そうです。創立費とか開業費とか、項目が限定されてたんです。で、平成18年に「会社計算規則」ができて、ルールがだいぶ変わったんですよ。 |
| 社長 | ほう。どう変わったんだ? |
| 経理 | 「繰延資産として計上できるのは、適当と認められるもの」って、すごくフワッとした表現になったんです。だから会計の世界では「じゃあ、どれが適当なの?」ってなったわけです。 |
| 投資家 | そう。だから企業会計基準委員会が『繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い』という実務対応報告を出して、「これまで通り、当面はこの5つでいこう」と整理したんだな。 |
| 経理 | そうです。その5つが「株式交付費」「社債発行費等」「創立費」「開業費」「開発費」です。建設利息とかはもう削除されたんです。 |
| 社長 | つまり、「古い時代のしきたり」を現代に合わせて整理しなおした感じか。 |
| 経理 | その通りです。「繰延資産」は、ただのテクニックじゃなくて、時代の変化を反映した“進化する会計項目”なんですよ。 |
第2話 株式交付費のナゾ~資金調達の裏にも“費用”あり?~
| 社長 | 白柴くん、新株を発行して資金を集めようと思うんだが、これって費用ってかかるの?💰 |
| 経理 | はい、かかります。新株発行や自己株式の処分に伴う株式交付費です。広告費、証券会社の手数料、登記の登録免許税などですね。 |
| 社長 | なるほど。それって経費扱い? |
| 経理 | 原則は支出時に費用処理(営業外費用)です。ただし、企業の拡大など資金調達目的の財務活動なら、繰延資産にして3年以内に定額法で償却できます。 |
| 社長 | おお、また出たな“未来に効く費用”! |
| 経理 | そうなんです。ただし、株式分割や無償割当てのようにお金を集めないものは繰延資産にできません。支出時に販管費として処理します。 |
| 投資家 | ふむ。ところで国際会計基準(IFRS)だと、株式交付費はどう扱うんだ? |
| 経理 | IFRSでは、株式交付費は資本取引に付随する費用として、資本から直接控除します。でも日本では、これまで通り**費用処理(または繰延資産計上)**を採用しています。 |
| 投資家 | なんで違うんだ?資本取引なら資本から引けばいい気もするけど。 |
| 経理 | いい質問です。株主に払うわけではなく、資金調達のための財務費用だからです。損益計算書で費用として示すほうが、会社の業績をより正しく伝えられるんです。 |
| 社長 | なるほどな。お金を集めるのにも、“見えないコスト”があるわけだな。 |
| 投資家 | そうか、会社の規模拡大ってのは華やかに見えて、裏ではちゃんと費用も動いてるってことだな。 |
| 経理 | まさにそうです。ちなみに今は自己株式の処分費用も、株式交付費として繰延資産にできます。新株発行と同じ「募集株式の発行等」扱いになったからですね。 |
| 社長 | へぇ~、未来の資金を集めるためにも“繰延資産の力”が働いてるんだな。 |
第3話 社債発行費のゆくえ~借金にもコストがある?~
| 社長 | 経理くん、うちも社債を発行して資金を集めようと思ってるんだ!でも、広告費や手数料が結構かかるなぁ…。あれって、どう処理すればいいんだ? |
| 経理 | それが「社債発行費」です。原則は支出時に“営業外費用”として処理します。ただし、繰延資産に計上して、社債の償還までの期間にわたって償却することもできるんですよ。 |
| 社長 | ふむ、じゃあ“未来に効く費用”として分けて処理できるってことか。償却の仕方は? |
| 経理 | 基本は利息法です。ただし、継続して同じ方法を使う前提で、定額法も選べます。 |
| 投資家 | なるほど。社債発行費って、資金調達のためのコストなんだな。広告費とか、証券会社への手数料とか、印刷費とか…いろいろあるもんね。 |
| 経理 | そうですね。それらはすべて“社債発行のために直接支出した費用”です。ちなみに、新株予約権を発行する場合も、資金調達に関係するなら社債発行費と同じように繰延資産として扱えます。 |
| 社長 | 新株予約権って、あの“将来株を買える権利”のやつだよな?あれも償却するのか? |
| 経理 | はい。新株予約権の発行費は、発行時から3年以内に定額法で償却します。ただし、社債にセットでついてる場合は、まとめて社債発行費として処理します。 |
| 投資家 | つまり、昔みたいに“3年で消す”というルールじゃなくて、今は社債の償還期間全体で割り振るってことだね。 |
| 経理 | そうです。資金調達コスト全体を利息と合わせて考えることで、実質的な負担をより正確に期間配分できるんです。国際会計基準(IFRS)でも同じ考え方ですね。 |
| 社長 | 借金にもコストがある…まさに“お金を借りるためのお金”ってわけか。 |
| 投資家 | そうだね。投資家目線でも、こういうコストをどう処理してるかで企業の財務の透明性が見えてくるんだよ。 |
| 経理 | はい。だから社債発行費も、単なる“支出”じゃなく、“資金調達の構造の一部”として理解するのがポイントです。 |
| 社長 | よし、うちも“未来に効く借金”をちゃんと計画的に使っていくぞ! |
第4話 会社設立の出費はどう処理?~創立費のヒミツ~
| 社長 | ふぅ~、やっと会社ができたな!設立までにけっこうお金がかかったよ。定款の作成費とか、登記費用とか、広告代とか…。 |
| 経理 | ですね。これらの費用は「創立費」と呼ばれます。会社の設立に直接かかった支出です。 |
| 投資家 | それって資産?それとも費用? |
| 経理 | 原則は「支出時に営業外費用」として処理します。でも、効果が将来に及ぶときは「繰延資産」に計上して、5年以内で定額法により償却できます。 |
| 社長 | じゃあ、繰延資産にすれば節税できるってこと? |
| 経理 | 節税というより、「効果が続く期間に費用を配分する」という考え方です。たとえば、創立事務所の賃料や登記の登録免許税も対象になります。 |
| 投資家 | なるほど。ちなみに、資本金から引いてもいいんじゃないの? |
| 経理 | 昔は会社法で可能でしたが、今は会計上、株主との資本取引ではないと考えられているので、原則は支出時に費用処理するんです。 |
| 社長 | つまり、会社設立のために使ったお金は「資本金」ではなく「創立費」として、費用または繰延資産で処理するってことか。 |
| 経理 | そのとおりです。会社が動き出すまでの“スタートアップ費用”ですね。 |
第5話 開業のドタバタ費用~開業費の正体~
| 社長 | ようやく会社が動き出すぞ!開業準備でいろいろお金使ったなぁ。オフィスの家賃、広告代、電話の契約、スタッフの給料まで…。 |
| 経理 | それらは「開業費」といいます。会社設立後、営業を始めるまでにかかった費用ですね。 |
| 投資家 | 創立費と似てるね。どう違うの? |
| 経理 | 創立費は“会社を作るまで”の費用。開業費は“営業を始めるまで”の準備費用です。扱いは似ていて、原則は支出時に営業外費用として処理します。 |
| 社長 | でも、繰延資産にできるんだよね? |
| 経理 | はい。その場合は、開業から5年以内で定額法により償却します。ちなみに、「開業のとき」には一部営業を始めた時点も含まれます。 |
| 投資家 | なるほど。販売費及び一般管理費として処理できるって聞いたけど? |
| 経理 | そうです。開業準備が営業活動と密接に関係しているため、実務上は「販管費」として処理してもOKです。 |
| 社長 | じゃあ、開業準備に使ったお金はぜんぶ開業費? |
| 経理 | そこは注意です。直接、開業準備に関係する支出に限られます。将来の効果があいまいな支出は含めません。 |
| 投資家 | なるほど、創立費と兄弟みたいな存在なんだな。 |
| 経理 | その通り。創立費が“会社を生む費用”、開業費は“会社を動かす準備費用”です。 |
第6話 夢の技術、開発の光と影~開発費と「期待されなくなった日」~
| 社長 | ついにうちも新技術の開発に乗り出すぞ!未来のヒット商品をつくるんだ! |
| 経理 | その費用は「開発費」として扱います。新技術や新しい経営組織の導入、市場開拓などのために支出した費用ですね。 |
| 投資家 | じゃあ、研究に使うお金も開発費になるの? |
| 経理 | いい質問です。研究段階のものは「研究開発費等に係る会計基準」の対象なので、発生時に費用処理です。開発費とは区別されます。 |
| 社長 | ふむ。じゃあ開発費は、原則どう処理するんだ? |
| 経理 | 原則は支出時に費用処理(売上原価や販売費)です。ただし、繰延資産に計上して、5年以内の効果期間で定額法などで償却することもできます。 |
| 投資家 | つまり、技術の効果が続く間は“資産”として扱えるんだな。 |
| 経理 | そうです。新技術の利用可能期間が限られている場合は、その期間内で計画的に償却します。 |
| 社長 | よし、夢のマシン開発、全力でいくぞ! |
| 経理 | はい!!社長、ここまでの5つの繰延資産ですが…注意点があります。もし支出の効果が期待できなくなったときは、その未償却残高を一気に償却しなければなりません! |
| 投資家 | つまり、開発費の場合なら「この技術はもう使えない」となったら、残りの金額はすぐ費用にするんだな。 |
| 社長 | 開発の道は夢があるけど、リスクもあるってことか…。 |
| 経理 | ええ。未来への投資は“希望”ですが、会計上は“慎重さ”も大切なんです。 |
| 投資家 | なるほど、繰延資産って、会社の挑戦と現実の両方を映す鏡なんだな。 |
繰延資産の表示区分と注記
繰延資産の表示区分
繰延資産として計上する場合もB/Sは「~費」として表示します。
また、P/Lの表示区分は原則「営業外費用」ですが、開業費償却と開発費償却は一部異なるので気をつけましょう。
| B/S | P/L | ||
|---|---|---|---|
| 表示区分 | 表示科目 | 表示区分 | 表示科目 |
| 繰延資産 | 創立費 | 営業外費用 | 創立費償却 |
| 開業費 | 原則:営業外費用 販売費及び一般管理費 | 開業費償却 | |
| 株式交付費 | 営業外費用 | 株式交付費償却 | |
| 社債発行費 | 営業外費用 | 社債発行費償却 | |
| 新株予約権発行費 | 営業外費用 | 新株予約権発行費償却 | |
| 開発費 | 販売費及び一般管理費 または売上原価 | 開発費償却 | |
繰延資産の注記
繰延資産に係る支出を一括して費用計上するか繰延資産に計上するかは、会社の会計方針でるため、これが重要な場合には注記が必要です。
重要な会計方針等に係る事項に関する注記
⑸ その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項
① 繰延資産の処理方法
- 株式交付費は、株式交付のときから3年間にわたり定額法により償却している。
- 社債発行費は、社債償還期間(5年間)にわたり定額法により償却している。
- 開発費は、支出時に全額費用処理している。

