目次
研究開発費 - 実験は費用、完成は資産
| 社長 | 新製品だ!どんどん投資して利益倍増だぞ🐾 |
| 経理 | いいですね社長。ただ研究開発費は発生時にすべて費用処理が原則です💦 |
| 社長 | えー資産にできないの?将来の利益に直結するのに… |
| 経理 | 将来の収益が確実でないため原則費用処理です。ただし製造現場で直接行う活動は当期製造費用に算入可です。 |
| 投資家 | そのとおり。費目は人件費・材料費・減価償却・間接費の集合体だ。 |
| 社長 | じゃあソフト開発のライセンスも全部費用?😢 |
| 経理 | 自社利用で将来収益が確実なら資産計上の余地がありますが、転用できない資産は取得時に費用化します。 |
| 投資家 | 注記と区分をきちんとやれ。財務諸表は数字で語る。 |
会計処理の例
| 項目 | 金額(千円) |
|---|---|
| 研究開発費総額(年間) | 1,000,000 |
| 内、転用不能資産 | 300,000 |
| 内、直接材料費 | 200,000 |
- 発生時に全額費用処理:研究開発費 1,000,000千円 を当期の費用として計上。
- 転用不能資産の扱い:特定の研究開発目的のためのみに使用され、他の目的には使用できないものは、資産計上ではなく研究開発費として費用処理します。
- 当該資産取得については、税務上は資産計上が原則なので税効果会計の対象となります(問題文に指示がある場合のみ考慮)
- 製造現場で直接行った分の振替例:そのうち製造直接分200,000円は当期製造費用(製造原価)に算入可能。
- 研究開発費の総額は、損益計算書の注記事項です。
損益計算書に関する注記
一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の総額 1,000,000千円
自社利用目的のソフトウェア - 設定・変換・研修、どこまで資産?
| 社長 | 白柴くん、新しい会計システムを導入したんだけど、設定費用とか、データコンバート費用とか、トレーニング費用とか…いろいろかかったぞ!ぜんぶ資産でいいよな? |
| 経理 | ストップです社長😫 自社利用目的で取得したソフトウェアは、中身によって科目が違ってきます。後、その導入で将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合に、資産計上できるんですよ。 |
| 投資家 | うむ、そうだな。今回の場合は、まず、パソコンとサーバー代は「備品」、ソフト購入代金が「ソフトウェア」の勘定科目で資産計上だな。 |
| 社長 | そうか、パソコンやサーバーは備品か。そうだよな、ソフトを入れ替えるかもしれないから本体は分けておかないとな。 |
| 投資家 | そうだ。だからそれぞれ耐用年数も違っている。また、ソフトウェアは本体価格だけでなく、会社へ導入するための仕様変更や設定作業の費用も「ソフトウェア」で処理するぞ。 |
| 社長 | ふむふむ。そうしないと使えないからな、納得。じゃあ、データコンバート費用もソフトウェアだね? 旧システムのデータを新しい形式に変換するやつだ。これをしないとインストールできないぞ。 |
| 経理 | それは、データを利用するための費用であって、ソフトウェア自体の価値を高めるわけではないんです。なので、データコンバート費用は、発生時の「費用」処理になります。 |
| 社長 | なるほど、ソフトを強化してるんじゃなくて、使えるように整えてるだけってことか!じゃあ、社員のソフト操作の研修費用は? さすがにこれは費用か? |
| 経理 | はい。社員のトレーニング研修費用は「費用」ですね。人を育てるコストですからね。 |
| 社長 | ふむ、じゃあ、本体と仕様変更や設定の費用だけがソフトウェアってわけだ。 |
| 経理 | そのとおりです。ちなみに、自社でソフトを開発した場合は、完成するまでの製作途中は「ソフトウェア仮勘定」を使って、完成したら「ソフトウェア」に振り替えます。建設仮勘定と同じ考え方ですね。 |
| 社長 | ほうほう。じゃあ、使い始めたら減価償却していくんだな。 |
| 経理 | はい。自社利用目的のソフトウェアは、通常は定額法(残存価額ゼロ)で、利用可能期間(上限5年)にわたって償却していきます。 |
| 社長 | 無形固定資産だから残存がゼロなんだな。 |
| 経理 | はい。後、自社利用の場合は、減価償却費は「販売費及び一般管理費」に計上します。社内システムの維持費みたいなものですからね。 |
| 社長 | なるほど、外に売るわけじゃないから“原価”にはならないんだな🐾 |
自社利用目的のソフトウェアの仕訳
| 項目 | 借方 | 貸方 | 備考 |
|---|---|---|---|
| パソコン・サーバーの購入費用 | 備品 ×× | 現金預金 ×× | ソフトウェアと分ける |
| ソフトウェアの購入費用 | ソフトウェア ×× | 現金預金 ×× | 無形固定資産の取得 |
| 仕様変更・設定作業費用・付随的な修正作業費用 | ソフトウェア ×× | 現金預金 ×× | 本体自体を直接いじる費用 |
| データコンバート費用 | 販管費 ×× | 現金預金 ×× | ソフト自体ではなくデータ移行のための費用 例)CSV変換費用 |
| 導入トレーニング費用 | 販管費 ×× | 現金預金 ×× | 人的教育コストで資産性なし |
| 制作中の制作費用 | ソフトウェア仮勘定 ×× | 現金預金 ×× | 完成時にソフトウェアへ振替え |
| 決算時の減価償却 | ソフトウェア償却 ×× | ソフトウェア ×× | 期中取得の月割計算を忘れないこと |
| ソフトウェアの廃棄 | ソフトウェア除却損 ×× | ソフトウェア ×× | 除却時までの減価償却を忘れないこと |
白柴経理「修正作業費用」は、「修正」という用語から修繕費と処理しがちですが、ソフトウェアとして処理します。
市場販売目的のソフトウェア
市場販売目的ソフトウェアの制作費 - 3つの段階で考える!研究から販売までの流れ
| 社長 | 白柴くん、うちのAI柴犬、どこまでが「費用」で、どこからが「資産」になるのか、いまいちピンとこないんだよなぁ。 |
| 経理 | 社長、市場販売目的のソフトウェアは3つの段階に分けて考えるのがポイントです。順に見ていきましょう。 |
| 社長 | おっ、3段階方式か。聞かせてくれ。 |
| 経理 | まず「第1段階」は、制作着手から最初の製品マスターが完成するまで。ここではまだ研究開発の要素が強いです。したがって費用処理、つまり「研究開発費」として処理します。 |
| 社長 | なるほど。試行錯誤の段階はまだ“投資の芽”だから、資産にはできないんだな。 |
| 経理 | はい。そのとおりです。次の「第2段階」は、最初の製品マスターができてから、最終的な製品マスターが完成するまで。ここでは、機能の改良・強化や、バグ修正などが行われます。 |
| 社長 | 改良・強化とバグ修正で処理が違ってくるの?どっちもソフトウェアをいじるよね。 |
| 経理 | 通常の改良・強化は「ソフトウェア」として無形固定資産に計上します。バグ取りなど機能維持のための作業は「修繕費」として販売費及び一般管理費に含めます。固定資産の資本的支出と修繕費の判別と同じ考え方です。 |
| 投資家 | ただ、ソフトウェアの著しい改良は、それはまた振出しに戻るようなもんだから「研究開発費」にするんだな。 |
| 社長 | おぉ!改良・強化はプラスでソフトウェア、機能維持は現状維持の費用、著しい改良は戻って研究開発費か! |
| 経理 | まさにそのとおりです!そして、最後の「第3段階」は、製品マスターが完成した後の段階です。ここでは販売のための製品を作る、いわば製造フェーズに入ります。 |
| 社長 | つまり、マスターの中身をコピーして量産する段階だな? |
| 経理 | そのとおりです。ここで発生する複写・包装などの費用は「仕掛品」や「製品」として棚卸資産に計上します。 |
| 社長 | へぇ~、同じ“ソフト制作”でも、研究・改良・製造で勘定科目が全部違うんだな。 |
| 投資家 | 投資家目線でも、この区分がわかると、企業の研究力や商品化力の違いが見えてくるんだよな。 |
市場販売目的のソフトウェアの仕訳
| 項目 | 借方 | 貸方 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 最初に製品化された製品マスター(プロトタイプ)完成までの開発費用 | 研究開発費 ×× | 現金預金 ×× | ソフトウェアと分ける |
| 機能の改良及び強化 | ソフトウェア ×× | 現金預金 ×× | 本体にプラスするイメージ |
| 機能維持 | 販管費 ×× | 現金預金 ×× | 通常の維持管理費用 |
| 機能の著しい改良 | 研究開発費 ×× | 現金預金 ×× | 振り出しに戻るイメージ |
| 製品としての制作原価 | 仕掛品、製品 ×× | 現金預金 ×× | 販売分は売上原価になる |
市場販売目的のソフトウェアの減価償却 - 売れ行き次第で価値も変わる!?
| 社長 | 白柴くん、費用と資産の区分はわかったけど、資産計上した後の減価償却はどうするの? 無形固定資産だから定額法? |
| 経理 | 少し特殊なやり方になります。市場販売目的のソフトウェアは、販売の実態に合わせるため「見込販売数量」または「見込販売収益」に基づく方法で償却していきます。そして、今度は市場で売るためのものなので「売上原価」に償却費を計上します。 |
| 社長 | なるほど、売上原価にして、売れた分だけ費用も増えるイメージだな。でも最低限のルールはあるのか? |
| 経理 | あります!毎期の償却額は「残存有効期間に基づく均等配分額」を下回ってはいけません。つまり、最低でも定額法で償却する必要があります。 |
| 社長 | 見込販売が少なくても、一定の期間で費用化しなきゃいけないってことか。 |
| 経理 | そのとおりです!そしてもうひとつ大事なのが、「収益性の低下」です。 |
| 社長 | 収益性の低下? それってどういうことだ? |
| 経理 | 例えば、当期末の未償却残高よりも、翌期以降の見込販売収益が少なくなった場合です。つまり、投資した分を回収できない状態ですね。 |
| 社長 | あちゃー、それってどうするんだ? |
| 経理 | その差額は一時に損失として処理します。仕訳はこんな感じです。(借)ソフトウェア減損損失 ××/(貸)ソフトウェア ×× |
| 社長 | うわっ、損失ってことは、売れ行きが悪いほどソフトの価値も下がるんだな…。 |
| 経理 | はい。こうした「収益性の低下」は、損益計算書の特別損失として表示します。 |
| 社長 | 会計って、夢よりも現実を見なきゃいけないんだな…。でも、次こそヒットさせるぞ! |
| 経理 | その意気です社長!でもまずは、ちゃんと償却と減損の確認をしてからにしてくださいね💦 |
「各年度の見込販売数量」と「各年度の期首の見込販売数量」は意味が違う!
市場販売目的のソフトウェアの減価償却で、資料に与える問題文の言い回しに注意です。
「各年度の見込販売数量」とは、各期毎、つまり単年度の見込販売数量のことです。
一方、「各年度の期首の見込販売数量」とは、当該年度の期首から最終期までの見込販売合計数量をあらわしています。
たとえば「第2期の期首の見込販売数量」であれば、「第2期~第3期(最終期)の見込販売数量の合計」をさしています。
これは、「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」の設例で用いられている言い回しなので、試験でも使わることがよくあります。「期首」ときた場合は注意しましょう。
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